リアクション
* さて、残る砦1は…… 地下から暴れながら乗り込んで来た、我を忘れたトロル達によって、すでに半壊していた。 黒羊軍は全滅したが、しかし、恐ろしいトロルは無論、解放軍にも牙を剥いた。 だが、ここを落とせば……! いよいよ、決戦も大詰めだ。 「あーん」「いやーんにゃ」 ぶちぬこが、トロルに弾かれていく。 「く、おのれ。ここは、我がヴァルキリーの部隊が!!」 ルミナ・ヴァルキリー(るみな・う゛ぁるきりー)の姿は、見えない。が、上階にトロルの姿が見えると、最上階の壁際に潜んでいたヴァルキリー達がバーストダッシュで一斉に飛び出した。ルミナ指揮の高機動戦術だ。 闇雲に暴れるトロル。 「きゃー」 「? 何か飛んでいったな」(砦1の指揮官は、プレシバ(ぷれしば)だ。(色違いで桃色。)さっき何処かへ飛んでいったらしく、もうここにはいない。) 「ル、ルミナ副官! トロルが。皆が、踏み潰されております!」 「ええい! 我が相手だぁ!」 ルミナは剣で激しくトロルと打ち合うが……「はぁ、はぁ。ハルモニア解放は目の前。かようなところで、やられるわけには……! は、うっ」 ルミナの剣が、弾かれ天井に突き立った。ニヤリ。笑うトロル。ルミナに手が伸びる。「はぁ、あっああ。これまでか!」 「メイドナイト、ここに在り」 「!」「!!」「!?」 全トロルが、そちらを向く。 仮面の、メイド……?! その子が、その仮面を少しずらすと、……ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)! 右手にランスを、左手を腰にあて、燃えてゆく砦の最上階に立ち、その髪が風に揺れていた。 「ユ、ユウ!」 振りかぶったランスを投げ、トロルが串刺しになる。 ルミナはすぐさま、天井に飛ぶと、剣を引き抜き、下り立つ。 ユウはルミナの着地点まで飛び、倒れ伏したトロルからランスを取ると、背中合わせになった。 「やっぱり、ルミナには盾が必要みたいですね」「そうみたいだ、我の背中を任せるぞ、騎士殿」 今回、若干影が薄くなっているが、みつルゥコンビ(注:ミニスカメイド姿の柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)&ルゥ・ヴェルニア(るぅ・う゛ぇるにあ))も健在で、ちゃんとユウが現れた場所(何処?)からそんな様子を見ている。(「こ、今回は……」「まぁ、仕方ありません」) 「ユウ、どうして……? それに、その格好は」 「ほほほ。来たわね?」そこへ。細い優雅な髭がくるりと上に曲がって眉の辺りまで伸びている。眉がきゅっと下に下がっていやらしい不敵な笑みを浮かべた。「黒羊の将プレシバよ」 「剣道91段のわたしくに勝てると思って?」 プレシバはエペを抜いた。ひゅひゅひゅひゅ。つ。する。 「さあて? 騎士の決闘といこうじゃなーい?」 「騎士? 違う。私は……」 「な、何?」 ――砦7に囚われたあの時……(前回以降のユウの回想。)砦を預かる、仮面のメイド男。ユウを捕え、メイド教育を教え込んだ仮面のメイド姿の男だ。武装メイド隊を率いていた。ユウは、師匠たる仮面のメイド男に、みっちりとメイド教育を教え込まれてきた。何年も……。つらかった。でもユウは、残してきたルミナのことを、一時も忘れることはなかったのだ。 「あの子は、傷付くことを恐れないから……私が傍にいなきゃ……駄目なんだ!」(ユウ) 「帰るなら……私を倒してゆくがよい」(仮面のメイド男) 「ほ、ほう……それで?」 プレシバは固唾を飲む。 ――ユウと仮面のメイド男の決闘になった。ミニスカメイド服のみつよしとルゥも、見守る他ない。ユウは……メイド男の岩をも斬るモップの責めにボロボロになりながらも、 「! ……よくやった」「師匠……」男は、割れた仮面の片割れを、ユウに渡した。「私はメイドであり騎士だ、"守る"ことに意義がある!」 「だから、私は……私はメイドの騎士……"メイドナイト"だぁっ!」 砦1、制圧。 4-07 ある記憶喪失者の拾遺 "ハルモニアと黒羊郷の宗教戦争の根底は自我の肯定か否定。自我を捨て輪廻を解脱し大いなる存在に帰一するか、自我を肯定しナラカを通じて輪廻転生を目指すか" "いざなぎとイザナミの話か、ヒルコを神と認めるかが十二星華の話だと思ってたけどちと違う様子だ、泡島?" "とべんぱつが言ってたけどあの人自分が言ってた事を忘れて今は、うはうはヴァルキリんのバーストおっぱいでありますぞーとか言ってるわよ" ――この断片的手記を残したある記憶喪失者はその後、地下に潜ってトロルになったとも、ヴァシャの地へ行ったまま帰らぬ人となったとも伝えられている。 ある伝承では、この者が下ったのは地下どころかナラカであったと言い、また、ヴァシャこそが゛黄泉比良にぷら゛の所在地であり、つまり、であるなら結局のところやはりナラカに下ったのだと、言われている。後代のある研究者は、この手記と共にハルモニアで発掘されたおっぱいの化石から、このこの人物を沙 鈴(しゃ・りん)だと特定したが、違う、これこそがこの地で信仰されたジャレイラ神であるとか、いや違う、マリー・ランカスター将軍だとか、議論を呼び起こすことになっている。 |
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