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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「第八試合、神代明日香選手対、ルルール・ルルルルル選手です」
「エリザベートちゃん見てるー、勝ち進んでるよー」
 武舞台の上に進んだ神代明日香が、放送席にむかって手を振った。
「よそ見をしている暇はないわよ」
 第一回戦での不完全燃焼を払拭するかのようにルルール・ルルルルルが叫んだ。
 両手にそれぞれ炎と冷気を纏わせると、クルリとそれを捻るように回して、空中に太極図を作りだした。すぐさまそばに立てておいた杖を手にとると、その太極図を杖でつく。増幅された凍てつく炎が、渦巻きながら神代明日香の左側にぶちあたった。
「だから、私がエリザベートちゃんの方をむいているときに攻撃するのは反則ですぅ!」
 あらためて魔道銃を抜くと、神代明日香がアイスニードルをルルール・ルルルルルの左側に打ち込んだ。バリアに突き刺さったアイスニードルが、パリンと砕け散る。
「戦いの最中によそ見をするのが悪いのよ」
 ルルール・ルルルルルが再び杖で太極図をついた。神代明日香が、今度は火弾で応戦する。ルルール・ルルルルルの頭上で火が弾け、神代明日香の眼前で火冷流が消え去った。
「ノルンちゃんの分まで頑張るんですぅ!」
 神代明日香が、今度は雷弾をぐるりとルルール・ルルルルルの後ろに回り込むように放つが、敵の身体に達する前にバリアで弾け飛んでしまった。そこへ、右から回り込んできた火冷流が神代明日香をあっけなく吹っ飛ばす。
「あーん、エリザベートちゃんが見てるんですぅ〜。きゅぅぅぅぅ〜」(V)
 ポチャンと、神代明日香がスライムの海に落ちてすっぽんぽんでぷか〜っと浮かんだ。
「勝者、ルルール・ルルルルル選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第九試合、『ブラックボックス』 アンノーン(ぶらっくぼっくす・あんのーん)選手対、マリハ・レイスター選手です」
「頑張って! アンノーン!! きっとできるはず! 夢と希望を持って、さぁ立ちあがるのです! 立って、アンノーン!!」
 異様に興奮したオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)が、タオルを握りしめたまま叫んだ。その周囲では、半透明のピーが、ぼーっとした顔で「が」「ん」「ば」「れ」「ー」と書かれた看板をもって突っ立っている。
「もう、恥ずかしいから、そんなに興奮しないで」
 なんだか一気に注目を集めた気がして、『ブラックボックス』アンノーンが準備もそこそこにあわてて不舞台へと走っていった。その後をピーたちが追いかけていき、武舞台の『ブラックボックス』アンノーンを取り囲むようにして体育座りでぼーっとした。
「なんでしょう、何か嫌な予感が……、ああ、ここにある物は……!!」
 言いようのない不安を感じて、さっきまで『ブラックボックス』アンノーンが座っていた椅子を見たオルフェリア・クインレイナーが真っ青になった。
「まったく、何をあんなにタオルを振り回してんだろう。あ、タオルが顔にひっついた」
 オルフェリア・クインレイナーが何に焦っているのか分からずに、『ブラックボックス』アンノーンは試合に集中することにした。
「いくよー」
 すでにコタツに乗って武舞台の上に移動していたマリハ・レイスターが闇の輝石を掲げた。わき出た闇の塊が、まっすぐに『ブラックボックス』アンノーンにむかう。
 『ブラックボックス』アンノーンも、氷術の詠唱に入ろうとしたのだが……。
「タオル、タオル。中止よ、ちゅーし! アンノーン、防御の指輪忘れてますよー!」
「えっ!?」
 必死にオルフェリア・クインレイナーが叫んだがすでに手遅れだった。武舞台の上のピーたちが、えらいこっちゃと怪しい踊りを踊りだす。
「くらあっ☆」
 闇につつまれた『ブラックボックス』アンノーンが、目を回してスライムの海に落ちた。すっぽんぽんになるかと思われたが、なぜか女性用のスクール水着を着ている。
「勝者、マリハ・レイスター選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第十試合、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)選手対、四谷七乃選手です」
「教えてやろう。この世で最も氷を知る者……それが白熊だ!」
 武舞台の上で、雪国ベアが雄叫びをあげた。
「熊なんかに負けませんクマー」
 果敢にも、小柄な四谷七乃が言い返した。
「そうだ、七乃、とろい熊の動きなんて、よく見てれば見切れるぞ!」
 四谷大助がアドバイスを送る。
「それはどうかな。能ある熊は爪を隠す。イルミンスール魔法学校東洋魔術学科所属はだてじゃないんだぜ。おらー! ぶっ飛びやがれ!」(V)
 突然頭上に巨大な氷塊を作りだすと、雪国ベアがそれを四谷七乃にむかって投げつけた。
「そいやー」
 むきだしにした爪でヒュンと空間を薙ぐと、飛んでいった氷塊が軌道を変えて四谷七乃の左側のバリアに激突した。
「千の剣閃を越え疾く駆ける魔狼……の金色の肢体、夜を刻む罅とならん!」
 四谷七乃の雷狼も、空中を蹴って進むと、雪国ベアの右側のバリアに激突した。
「まだまだいくぜえ!」
 雪国ベアの投げた巨大な氷塊が、今度は反対の右側からぶちあたって、盛大に破片を周囲に撒き散らした。四谷七乃の雷狼も、雪国ベアの左側で目映い閃光をあげる。
「なら、下から突きあげだ!」
「上から行ってください!」
「上から押し潰す!」
「後ろから噛み砕いてください!」
 激しい攻防に、両者が肩を上下させて荒い息をつく。
「下からお願いしますー」
 四谷七乃が、下から雪国ベアを狙う。
「しぶといが、これで終わりだあ! いや、終わりにしてー」
 そろそろ疲れてきた雪国ベアが、コントロールを諦めて真正面から氷塊を投げつけた。
「ええっ!?」
 遮るバリアのないまま、巨大な氷塊が正面から四谷七乃を押し潰した。
「七乃!」
 さすがに四谷大助が焦って叫んだ。ぺっちゃんこになった怪獣の着ぐるみが、ぷっかりとスライムの海に浮かんでくる。
「やれやれ、危機一髪だったか」
 四谷七乃が変化した魔鎧のブラックコートを纏った四谷大助が、ほっと安堵の息をついた。距離的に可能かどうかぎりぎりだったが、なんとか魔鎧の装着に成功したようだ。
『しゅん……ごめんなさいですマスター。七乃、負けちゃいました……』
「……まあ、あんまり落ち込むなよ。ほら、世界最強の魔鎧なんだろ?」
 四谷大助が、四谷七乃を慰めた。
「勝者、雪国ベア選手!」