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リアクション
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「第十一試合、朝野未沙選手対、フィリップ・ベレッタ選手です」
「よろしくお願いします、先輩」
礼儀正しく、フィリップ・ベレッタが朝野未沙に一礼する。
「よおしぃ、お姉さんが、胸を貸してあげるよぉ」
先輩風を吹かして、朝野未沙がポンと自分の胸を叩いた。
「熱き印よ!」
フィリップ・ベレッタが、朝野未沙の左側にむかって火球を放ったが弾かれる。
「氷の薄刃よ!」
朝野未沙の両手の間から、無数の氷の刃が打ち出されたが、すべてフィリップ・ベレッタの正面のバリアに撃ち砕かれた。
「冷たき印よ!」
フィリップ・ベレッタが、今度は氷塊を正面から放った。
朝野未沙は、再び氷の刃で左側を狙う。だが、またもや、無数の氷はバリアにあたって砕け散るだけであった。逆に、正面から氷塊が迫る。
「はう!」
ゴツンと鈍い音をたてて、氷塊が朝野未沙のおでこにあたった。
「はにゃんこんにゃらめら〜☆」
真昼の星を見て、朝野未沙が武舞台から落ちた。上質なメイド服が、スライムに揉まれてバラバラに飛び散った。その下から、上品なメイド服が現れたが、これもバラバラになる。空にその下から洒落たメイド服が現れてバラバラになった。いったい、何枚メイド服を重ね着していたのだろうか。最後に現れた瀟洒なメイド服がバラバラになって、やっと朝野未沙がすっぽんぽんになって救護室にぺっされた。
「ふにゃ〜ん!」
不思議な悲鳴が聞こえた後、しーんと静かになった。
「勝者、フィリップ・ベレッタ選手」
★ ★ ★
「第十二試合、日堂真宵選手対、月詠 司(つくよみ・つかさ)選手です」
「ふふふ、すでにカレーは姿を消したわ。後はたっゆんを滅ぼせば、この世はわたくしの物よ。そこのあなた、大いなる野望のため、わたくしが大きくなるための糧になってもらうわよ!」
ビシッと指さされて日堂真宵に言われた月詠司が、じーっと日堂真宵の胸を見た。
「な、何よ、わたくしの存在が大きくなるという意味ですからね。別の意味なんて、これーっぽちもないんだからね!」
「い、いや……」
ふっと目を逸らすと、月詠司がヒロイックアサルトの態勢に入った。
「来たれ、禍々しきもの、魔剣アゾートよ!」
月詠司の眼前で暗い影がたゆたったかと思うと、それは一本の大剣の姿をとっていった。
「きゃー、頑張れー、司さーん!」
観客席で、チアリーダー姿の銭湯摩抱晶女 トコモ(せんとうまほうしょうじょ・ともこ)が、大声を張りあげながら応援を繰り広げた。周囲では、取り巻きのパラミタペンギンたちがホイッスルを鳴らして協力している。
「さ、騒がしい……」
必死に集中力が途切れないように努力しながら、月詠司がつぶやいた。これでは、応援しているのか邪魔しているのか分からないではないか。
もっとも、銭湯摩抱晶女トコモの目的は全然別の所にあった。
「頑張って勝ち抜いて、どんどん女の子をひんむいちゃえー」
実に煩悩の塊である。
「魔なるものよ、有れ!」
呼びかけと共に、月詠司の周囲に魔剣アゾートから漏れ出した魔力の澱みがいくつかの塊となって渦を巻きだした。
「ゆけ、氷鬼!」
月詠司の命令と同時に、塊の一つが上半身だけの角持つ氷魔人の姿となって正面から日堂真宵に襲いかかっていった。
「身も心も凍てつかす地獄の炎と思って食らいなさい! 矛盾しているけど、とりあえずイメージの問題よ、イメージの!」
日堂真宵が、それを受けてたって凍てつく炎を放った。
正面からすれ違ったそれぞれの魔法が、互いの正面バリアに激突して障壁をゆるがす。
「うっ……」
ダメージは負っていないはずだが、わずかに月詠司がよろめいた。
「ふっ、さすがはわたくしの魔法。こんな障壁程度では防げないのよ」
日堂真宵が勝ち誇る。
「さすがに、この状態を維持するのはつらいですね。とはいえ、慣れることも目的の一つですから……」
こみあげてくる吐き気と破壊の衝動に耐えながら、月詠司がつぶやいた。別に、日堂真宵の魔法にやられたのではない。これは、彼のヒロイックアサルト固有の反動だ。
「ゆけ、雷帝!」
月詠司が命じると、澱んだ魔力の塊が雷光を放つ魔人の姿となって日堂真宵の頭上に上り、一気に襲いかかった。だが、激しい閃光とともに、バリアに激突して砕け散る。
時を同じくして、日堂真宵の攻撃も、月詠司の左のバリアに弾かれていた。
だが、その攻撃とは関係なく、月詠司はがっくりと片膝をついていた。
「俺の攻撃を……二度も防いだだと……。ふざけるな……」
身体の深く暗い所からあふれ出てくる怒りに、月詠司がわずかに唇の端をゆがめた。
「だめです……、この程度のことで自我を奪われては……。だが、とりあえず貴様は殺す! 燃え尽くせ、炎帝よ!!」
「何よ、それ!」
月詠司の豹変に少しビビりながら、日堂真宵が頭上から一気にせめるべく火冷流を叩きつけた。月詠司が呼び出した魔剣アゾートに、日堂真宵の攻撃が命中する。魔剣の消滅と共に、反動で月詠司が吹き飛ばされた。
「まだっ、まだっ戦い足りなっ……」
唸りつつ、月詠司がポチャンとスライムに呑まれておとなしくなった。
「やった、勝っ……へっ!?」
勝ったと思ったとたん、後ろに回り込んでいた炎の魔人が日堂真宵をトンと突き飛ばした。
「今さらそれはないでしょうがあ!」
叫びながらスライムの中に落ちた日堂真宵の服が、髑髏と共にぷっかりと浮かびあがってきた。本人の姿がすぐには見えない。
一瞬、本当にスライムに食べられたのかと観客にざわめきが広がったが、すぐにスクール水着姿の日堂真宵がスライムに弄ばれながら運ばれていったのが見えたので、大した騒ぎにはならなかった。同様に水着を穿いていた月詠司と共に、救護室にぺっされる。
「う〜む、水着は反則だと思います!」
すべてを見届けた銭湯摩抱晶女トコモが力説した。
「両者、相討ちです!」