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リアクション
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「第十六試合、立川 るる(たちかわ・るる)選手対、赤羽美央選手です」
「魔法学校卒業生として後輩たちに格の違いを見せるよ!」
立川るるが、予定を口にして早くも勝利宣言をした。
「それじゃあ、まず舞台を暗くしてと……」
立川るるが、闇術で闘技場全体を薄暗くする。これから使う光術がよく目立つようにという考えからである。
「これは……。世界を暗くするなど、あなたは悪ですね。パラディンとして、悪は許せません」
何か勘違いをしたらしい赤羽美央が、槍を掲げて穂先を輝かせた。
「わあ、綺麗。こっちも負けてられないよね」
立川るるが、右の踵で軽く床を打ち鳴らした。流星のアンクレットが踊り、床から星形の光が生まれて飛びあがる。それを左手でパシッとつかむと、立川るるは高く掲げた。
「星よ、照らして!」(V)
ぐっと身を沈めると、立川るるが右手にもったエコバッグを振りかぶった。それをラケットのように使って、えいやと星を打ち出す。
「コメットシュート!」
「生半可なパラディンでは使えないホーリ!」
ほぼ同時に、赤羽美央も同じ光術を放った。
薄暗い室内を、二つの輝きが飛び交い、交差し、そして星が赤羽美央の正面のバリアにぶつかって弾けた。
「あっちの光はどこ?」
敵の攻撃を見失った立川るるが、キョロキョロと周囲を見回した。そして、顔をあげる。
「あ、お星様が見える……」
そこへ、頭上から光が落ちてきた。みごとに立川るるのおでこに星が命中する。
バタンキューした立川るるがスライムの海へと落ちる。あっけなくイルミンスール制服がバラバラになってスク水姿を晒すと、プカプカと流されていった。
「やはり、パラディンは格が違うのです」
赤羽美央が勝ち名乗りをあげた。
「勝者、赤羽美央選手!」
★ ★ ★
「第十七試合、ルカルカ・ルー選手対、相田 なぶら(あいだ・なぶら)選手です」
「おお、やっと、なぶらの番か。勝てるかな?」
知り合いの出番を今か今かと待ち続けていた椎堂紗月が、相田なぶらの姿を見て声援を送った。
「さあ、始めよう♪」
楽しそうに細い橋をとんぼ返りで進んできたルカルカ・ルーが、相田なぶらにむかって言った。薄い一枚布の白いローブが翻って、ルカルカ・ルーが下に着ているスクール水着が顕わになったが、武舞台の上で直立したとたん、またそのメリハリのある肢体を周囲の目から隠してしまった。
「はしゃぐのはいいけど、転ばないでねー」
さすがに、ニケ・グラウコーピスがちょっと注意した。
「教導団からの道場破りかぁ。ホームのイルミン生としては、負けるわけにはいかないなぁ」
透明な水晶の刀身が美しいシュトラールを担いだ相田なぶらが、はしゃぐルカルカ・ルーを見て言った。
「光輝よ、集まれ!」
相田なぶらがシュトラールを掲げると、その先端に光が集まった。
「射ち……貫け!」
剣を振り下ろすと同時に、光球を打ち出す。
「またいくよ。ホーミングレーザー!」
双方の光術が、ルカルカ・ルーの右側と相田なぶらの背後で輝きを発して消滅した。
「アイスミサーイル!」
「貫け!」
右側から突き刺さるようなアイスミサイルと、ぐるりと背後に回り込んだ光球がバリアに防がれる。
「また、いろいろ見られそうですね」
ニケ・グラウコーピスが、ちょっとわくわくしながら戦いを見守った。
その間にも、下からのびた電撃と、正面からの光球が無に帰していた。
「頑張るよねー。それなら、シャイニング!」
一巡したので、ルカルカ・ルーが再び光術を放った。
相田なぶらの左側にあたった光球が、バリアに阻まれて淡く彼の姿を照らす。だが、下から立ち上ってきた相田なぶらの光球は、確実にルカルカ・ルーの身体を捉えていた。
「まぶしっ……」
下からの突きあげるような力に、ルカルカ・ルーの身体が武舞台の外に押し出されていた。
「おろっ!」
とっさに空飛ぶ魔法↑↑を唱えて、ルカルカ・ルーが落下を防ごうとした。だが、加速が止まった瞬間、スライムの偽足がぺとっと彼女の足首に絡みついた。そのままスライムの群れの中へと引きずり込まれていく。
気を失ってぷっかりとスライムの海に浮かんだルカルカ・ルーをとりまくようにペットのスカイフィッシュが集まってきたが、スライムに阻まれて近づくこともできずにいた。
「まあ、嫁入り前なのに、なんという姿を……」
ニケ・グラウコーピスが、身を挺して魔鎧に変化してルカルカ・ルーの身体を被って隠した。本来なら砂鯱を連れてきて、それで華麗に救出したかったところなのだが、さすがにそんなペットを観客の間に持ち込むことは許可されなかったし、どのみち砂の中を泳ぐ砂鯱ではスライムの海を泳ぐことしかできないので瞬殺だったであろう。
「勝者、相田なぶら選手!」