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一日駄菓子屋さんやりませんか?

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一日駄菓子屋さんやりませんか?

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「おいっ、これホントに全部食べても良いのか?」
 ランディ・ガネス(らんでぃ・がねす)は、テーブルに並べられたそば飯大盛り、セイカチョコひと揃い、クレープ全部入りを眺める。
「後から何かしろって言ったって、そんなのダメだぞっ」
「心配しないで、大丈夫よ。それより全部食べられる?」
「おぅ、まかせとけー!」
 ランディが胸をドンと叩く。チョコ・クリス(ちょこ・くりす)を肩に乗せた白波 理沙(しらなみ・りさ)は優しく微笑んだ。
「よーし、順に食べてくぞー! あれ? 理沙は食べないのか? 理沙、少食なんだなぁ……」
 ランディの食べっぷりを頼もしそうに理沙は見ている。時折「はい、どうぞ」と店の一つでもらった、んまい棒の欠片をチョコについばませる。
「そば飯は……どう?」
「美味いなっ!」
「セイカチョコは?」
「うん、これも美味いな!」
「じゃあ、季節の彩りクレープは?」
「こっちも美味いぞっ!」
 ランディの答えを聞いて、クスクス笑いながらもアンケートに書き込んでいく。
 ── おいしいばっかりじゃあ、読んだ人も困るかも ──
 理沙は見た感じや香りの感想などを付け加えた。
「料理の得意な人以外が混じってる可能性もあったから、ちょっと心配だったけど、気の回しすぎだったみたいね。まだ食べられそう?」
「おぅ、もちろんだ!」
 理沙は特盛りを作ってもらうべく、もう一度店に並んだ。

 師王 アスカ(しおう・あすか)は、パートナーのルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)ラルム・リースフラワー(らるむ・りーすふらわー)と共に、クレープの行列に並んでいる。
「ほあ〜……! 人いっぱい……?」
 大事そうにセイカチョコを抱えたラルムは、ルーツの頭に乗せられていた。
「うーん、フルーツ……全部とー、生クリームをいっぱいー」
 アスカが売り子の魏延に注文を伝える。
「鴉ー、フルーツ全部乗っけと生クリーム増量やー」
「ああ」
 クレープを焼く鴉が顔を上げると、ルーツの頭に乗ったラルムと目があった。青い目に涙を溜めて「……いぢめる?」と聞くクリス。
「店長さんも‘鴉’さんなのねぇ」
 戸惑う鴉と魏延を見て、アスカが笑う。
「アスカ、笑ってないで説明すべきだろう」
 ルーツに言われて、アスカが「笑ってしまって、ごめんね〜」と頭を下げた。
「今日は来てないけど、私のパートナーも‘鴉’って名前なの〜。いっつもラルムがいじめられてるものだから」
「そうなんか、鴉って名前は、どいつもこいつも性格悪いんやなぁ。こんな可愛い子をいじめるなんて、アホちゃうか」
 聞いていた鴉は目つきを鋭くするが、何も言わずに黙々とクレープを焼く。魏延がラルムの髪を撫でると、最初こそ恐々としていたラルムも笑顔を取り戻す。
「そうね、否定はできないかぁ。でも一応、私の大切な人なんだ〜」
 顔を赤らめながらアスカが言うと、なぜか魏延も顔を赤くして言葉に詰まる。
「おい、魏延、できたぞ」
 鴉が魏延にささやきつつ、クレープとは別にイチゴを3つ、串に挿したものを渡す。
「はーい、お待たせ、どうもおおきにー」
 クレープをアリスに渡し、イチゴを「こっちの鴉からサービスや」とラルムに握らせる。
「いぢめ…………ない?」
「ああ、いっぱい食って、わてみたいにでっかくならんとあかんで。でっかくなれば、そっちの鴉にもいじめられんやろ」
  
 昼休みが終わる頃になると、露店の行列も途切れ、それぞれの店も後仕舞いにかかる。
「ルカ、かなり売れたな」
「甘いものは外さないみたいね。値段が安かったから、まとめ買いした人も多かったよ」
「少し余ったのはどうする?」
「そうね。お店に並べてもらおうか」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)夏侯 淵(かこう・えん)が話しているところに、マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)がそば飯を、魏延 文長(ぎえん・ぶんちょう)がクレープを持ってくる。
「そっちも終わりか? 余りものなんだが、そば飯どうだっ?」
「よかったらクレープも食べてーな」
 やがてクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)夜月 鴉(やづき・からす)も集まって、即席の裏メニューB−1グルメ交換会が開催される。
「……うまい」
「ふーん、鴉が誉めるなんて珍しいやん。ずっと甘いもんに囲まれとったからな」
「ありがとうございます。このクレープもおいしいですよ」
「隠し味にカレー粉を使っているな」
「カレー粉? そんなはずは……」
 マスク姿は相変わらずのクロセルがマナを見たが、聞いていたのかいないのかマナは口笛を吹きながらそっぽを向いている。
「クレープ、どないや? お嬢ちゃん」 
 魏延に声をかけられた夏侯淵が立ち上がる。
「クレープは美味い。でも俺は‘お嬢ちゃん’じゃないぜ!」
 立ち上がった夏侯淵を、魏延はしゃがんでまじまじと見る。
「なーんや、男の子だったんか。そないにちんまりで可愛いカッコしてるもんやから、ずーっと女の子と思ってたわ」
「ちんまりって言うな! この夏侯淵妙才をバカにすると許さないぜ!」
「よりによって嫌な名前が聞こえたで! おい、ちみっこ! この魏延文長の前に現れたのが運の尽きや!」
「ちみっ子言うな、このデカ女! そんなんじゃ嫁の貰い手がないぞ!」
 魏延が見下ろし、夏侯淵が見上げる。
 あわててクロセルとマナがなんとか間に入ろうとすると、夏侯淵の襟首が大きく引っ張られ、魏延の頭がフライパンで軽く叩かれた。
「ごめんなさい、うちのちみっ子が……」
「いや、こちらこそ、酔っ払いが申し訳ない」
 夏侯淵は「ちみっ子言うなー」と叫びつつ引っ張られて行き、魏延は「デカ女で悪いんかー」とごねながらも鴉になだめられている。
「ルカがこんな格好させた責任もあるんだからな!」
「わかったわかった、そこそこ儲かったから、明日にでも好きなもの食べさせてあげるよ。たくさん食べて大きくなりなよ」
 ルカの言葉に「なんでも良いの?」と早くも機嫌が直りつつあった。
「なぁ、デカ女だと嫁に行けんのか?」
「そんなこと気にしてるのか、『わてみたいにでっかくなれ』とか言ってたクセに。それに可愛い子を見つけて嫁にすれば良いだろ」
「それもそうやな!」
 取り残されたクロセルとマナ。クロセルはチョコとクレープを交互に頬張るマナに尋ねる。
「マナさん、そば飯に何かしませんでしたか?」
「い、いや、つまみ食いはしてないのだっ。絶対になっ」
「つまみ食いはの‘は’が気になるんですが……」 
 マナはいきなり逃げ出した。