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夏合宿、ひょっこり

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夏合宿、ひょっこり

リアクション

 


 
 
「意外と綺麗な水が流れていますわね」
 見つけだした川で飲料水を飯ごうに汲みながらリース・バーロット(りーす・ばーろっと)がつぶやいた。
 だが、それも束の間、いきなり濁り水が上流から流れてきた。
「くそ、意外とすばしっこいな!」
 バシャバシャと水を撥ね飛ばしながら、千鶴 秋澪(ちづる・あきれい)が素手で魚を捕まえようとしていた。
 比較的浅い部分で、素足に腕まくりして必死に獲物を追いかけている。
「あれでは、みんな逃げてしまいますでしょうに。水は確保できましたから、小次郎の許に戻りましょう」
 とりあえずの水は確保したので、リース・バーロットは海岸へと足をむけた。
「うーん、いいなあ、水浴び。でも、これじゃあ、もっと上流に行かないと飲み水が確保できないし、魚も獲れないなあ」
 相変わらずバシャバシャと川の中で暴れている千鶴秋澪を見て、川岸から緋桜ケイがつぶやいた。
「うーん、お腹空いたあ」
 魚からカエルに獲物のグレードを落とした千鶴秋澪だったが、さすがに素手で捕まえるには相手がみんなすばしっこすぎる。
「それなら奈落の鉄鎖で……」
 動きを止めて捕まえようとしたのだが、水面を跳びはねたカエルはそのまま水中に落ちて流れて行ってしまった。
「待てー」
 それを追いかけて、千鶴秋澪は川下にむかって走っていった。
 
    ★    ★    ★
 
「これが水源か。普通に池みたいだけど。人工島かとも思ったが、案外、パラミタにあった浮遊島を地上に下ろしてきただけじゃないのか?」
 川を遡って、ほどなく水源らしき池に辿り着いた緋桜ケイが言った。
「それにしても、ここは島のどの辺なんだろう。やっぱり、コンパスを手に入れてからの方がよかったかなあ」
 携帯のGPSが使えれば楽なのだが、この島に入ってからずっと、パートナー同士の通話以外はまったく出来ない状態が続いている。
「ちょっと、水浴びしてもいいかなあ」
 さすがに汗をかいたので、緋桜ケイが物欲しそうに涼しげな水面を見つめてつぶやいた。幸い、他に人はいないようである。
「うん、冷たくて気持ちいいぞ」
 首の下まで水につけて、緋桜ケイが手足をのばしてくつろいだ。こうして顔だけ出していると、少女がすっぽんぽんで水浴びしているようにしか見えない。
「さて、このへんでいいでしょうか。いい魚がいそうです」
 突然頭上から声がしたのに気づいて、緋桜ケイがあわてて水からあがって衣服をかき集めた。
 そんな緋桜ケイにはまったく気づかず、クナイ・アヤシが魚捕りを始める。
「やれやれ。ひとまず、この場所をみんなに知らせに行こうか」
 物陰で無事に服を着終えた緋桜ケイは、今来た道を戻り始めた。
 
 
キャンプ場?

 
 
「木の実とか、いっぱい取ってきたよー」
 なんだかんだあっても、成果はきっちりと上げてきた久世沙幸が、藍玉美海と共に食料をかかえて小屋に戻ってきた。
「お疲れさま。とりあえず氷室を作ったから、そこに溜めてね」
「わかったよー」
 ティアン・メイに言われて、久世沙幸たちが氷で囲まれた穴に、持ってきた果物などを入れた。
「あの人はどこに行っちゃったんだろう」
 ラピス・ラズリが、深い穴をのぞき込んで言った。確か、アリス・テスタインが掘っていたはずなのだが、いつの間にか姿が見えなくなってしまっている。
「どうしたんだろね。お水も溜めたのに」
 アリス・テスタインが風呂用に掘った穴に水を溜めたアニス・パラス(あにす・ぱらす)も、不思議そうに頭をかしげた。もともとは調理用に作った水だが、ちょっとお風呂に入りたいような気もする。
「だめよ、あなたはお肌が弱いんだから、ちゃんと上着を着ていないといけません」
 スノー・クライム(すのー・くらいむ)が、アニス・パラスを注意する。
「暑いのに〜」
 アニス・パラスは不満そうだ。
「私は、薪をおいてきますから、ここにいてくださいよ」
 そう言うと、スノー・クライムは、さっき海岸の端で見つけた洞窟へとむかった。
 
 
洞窟

 
 
「見つけた。洞窟。ハーティオンに連絡しなくちゃ」
 ラブ・リトル(らぶ・りとる)が、山にむかったコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)に頼まれていた洞窟を見つけたのでさっそく連絡する。
「えーっ、どこに繋がっているのか調べろですって……。もう、仕方ないんだから」
 スクール水着のまま、ラブ・リトルがパタパタと低空を飛びながら洞窟の中に入って行く。
「あいたっ。もう、暗くてよく分からないよお。え、あれあれ!?」
 何かに頭をぶつけたらしいラブ・リトルだったが、それきり彼女の声は洞窟の中からは聞こえなくなってしまった。
「本当に、こんな所に洞窟があったなんてねえ」
 クナイ・アヤシに教えてもらった洞窟に辿り着いた清泉北都が、ここを拠点にしようといろいろと仕掛けを作り始めた。
 まずは、雨水を溜めるために、大きな葉を組み合わせて受け皿を作る。
 ラブ・リトルがいなくなったことには、まったく気づいてはいない。
 その近くでは、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が薪の集積場を作って、薪を集めていた。
「さあ、どんどん薪を積みあげるのだ。今夜は、盛大なキャンプファイヤーを催そうぞ」
 悠久ノカナタが、男どもを鼓舞する。
「わらわの水着姿を堪能したければ、おのこども、がんがん働くのだぞ」
 派手なウィスタリア色の水着のパレオをひるがえして太腿をちらつかせながら、悠久ノカナタが言った。
「薪は、ここにおけばいいんだな」
「おいたらすぐに移動する」
 集めてきた薪をその場においた樹月刀真だったが、悠久ノカナタの水着姿にコメント一つする前に、漆髪月夜に追いたてられていった。
「なんだ、つまらぬのう」
 一言褒めていけと、悠久ノカナタが唇の先をとがらせた。