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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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激闘 六角屋敷 1

 その六角形の建物は、闇の中静かに建ち侵入者を迎え入れた。
「んー? この屋敷マジで六角形なのか……」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)がつぶやく。
「ああ。あの形のままに6つの部屋があって、全ての部屋に罠が仕掛けられている。そして、6つの部屋を攻略すると、真ん中の7番目の部屋にたどり着けるという仕組みになっている」
 十兵衛が答えた。
「なるほど。これはちょっと面白い仕掛けが出来そうですね」
 唯斗がうなずくと、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が言った。
「その、七番目の部屋に、刹那とやらが隠れているというわけか?」
「ああ」
 と、十兵衛。
「じゃあ、もしかして、そこには、藤麻とやらも居るんじゃないのか?」
「何?」
「竜胆の受け取った文が、行方不明だという藤麻とやらの筆跡に相違ないなら、既に敵に捕まっているとか?」
「なるほど、その可能性はあるな」
「無論、筆跡を真似る達人がいると考える方が妥当だが、常に最悪の事態は想定しておくべきだ」
「おぬしの言うとおりだ。真相を確かめ、この事件を終わらせるためにも、全ての部屋を攻略せねばならん。入るぞ」
「よし」
 それから十兵衛は、静かに入り口の扉を開けた。扉の向こうの闇はひっそりと静まり返っているが、その奥に蠢く無数の気配がある。
 一同は無言のまま、息を潜めて中に入っていった。
 そして、第一の部屋の前。
「気をつけろ、どんな罠が仕掛けられているか分からん」
 十兵衛は用心深くふすまに手をかけると、静かにそれを開いていった。
 ふすまの向こうは、何の変哲もない和室だ。床の間に掛け軸がかけられ、その横ではろうそくの火が仄かに辺りを照らしている。
 敵の気配は感じられない。
「よし、行くぞ」
 十兵衛の合図とともに、一同は部屋に入っていく。
 そして、部屋の中央にさしかかった時……

 ガラガラガラ……!

 巨大な歯車が回るような音がして、ミシミシと天井が落ちて来た!

「しまった! つり天井だ」
 十兵衛が叫ぶ。

 天井の木目が目の前に迫り、あわや、みな圧し潰されるか? という瞬間。

 ガッ!

 と、音がして、天井が止まった。

 皆が、おそるおそる目を開けると、そこには、天を支えるアトラスのごとく、仁王立ちで天井を支えるエヴァルトの姿があった。

「エヴァルト、助かったぞ」
 十兵衛が言うと、エヴァルトは答えた。
「鋼のサイボーグ相手に、この程度の罠とはな……片腹痛いというものだ。早く進め、俺にはアクセルギアがある!」

 エヴァルトの言葉に従い、一同は部屋の中を駆け抜けて行った。

 そして、最後に紫月唯斗が……。

「おい、唯斗。なぜ妾は護符をこんなに大量に持たねばならんのだ? いい加減説明せんか」
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は大量の五芒星の護符のを手に、ぶつぶつとつぶやいている。
「だから、それは後のお楽しみです」
 唯斗は言いながら護符を受け取り、部屋のあちこちを物色している。そして、床の間の柱に近づくと、のりを取り出し護符の裏にのりを付けはじめた。
「なるほど、結界を張ろうとしているのか。しかし、それにはちとスキルが足りぬようだぞ」
「それでも、気休め程度にはなるでしょう」
 唯斗はは答えながら護符を貼っていく。
 その時、いきなり壁が裏返り、中から忍びが現れた。忍びは身動きの取れないエヴァルトに向かって手裏剣を投げかけた。
「何をするんですか?」
 紫月 睡蓮(しづき・すいれん)がサイコキネシスで手裏剣の動きを止める。
「エヴァルトさんには手出しさせませんよ!」
 睡蓮は叫ぶと、再びサイコキネシスで手裏剣を忍び達に向かって飛ばした。
「何をする! このチビが」
 怒り狂った忍び達が睡蓮めがけて一斉に襲いかかっていく。
「睡蓮に何をするのじゃ!」
 エクス・シュペルティアは光条兵器を構えると、忍者達に向かって投げつけた。光刃が飛び、忍者の首をかっ切っていく。
「うぐ!」
「うが!」
 忍び達は首から血を噴き出して、その場に倒れた。
「はやくしないと、大変な事になってますよ、マスター」
 魔鎧化したプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が唯斗に話しかける。
「もう少しです……」
 唯斗が答えた時。
「ああ! マスター危ない!」
 プラチナムが叫んだ。
 唯斗の背後から忍びが襲いかかって来たのだ。唯斗はとっさに身を翻すと、光条兵器で忍びに応戦。疾風突きで相手の急所に一撃!
「ぐふぅ」
 忍びはうめき声を上げて倒れた。

「よし! できました」
 護符を貼り終えると、唯斗はエヴァルトに礼を言って部屋から出て行った。
「ありがとうございます、エヴァルトさん」
「礼を言うぞ」
 睡蓮やエクス・シュペルティアも頭を下げて去って行く。
「何、礼なんていいぜ」
 エヴァルトは仁王立ちのまま答えた。そして唯斗達が出て行ってしまうのを見届けると、天井を無理しない程度に片手や背で支え、アクセルギア作動。そして脱出する。エヴァルトが立ち去った後、ドーンと言う音とともに天井が床に落ちた。