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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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「お……お富士チャーン。それに男囚のみなさーん」
 ゼニガタ・ケイジがうろたえている。

「まったく、次々に色んな事をしかけてくるものです」
 透乃とお富士の戦いを見ながら獅子神 ささら(ししがみ・ささら)はため息をついた。
 ささらは自分と同じ境遇の竜胆に友愛を抱いてる両刀遣いで、竜胆の事をとても気にかけていた。それだけに、今度の一件には義憤を覚えていた。
「……えん罪で打ち首にされる友人を助けないなんて事ありえないでしょう?竜胆さんは助けますよ、絶対」
 山本 ミナギ(やまもと・みなぎ)は、そんなささらをじっと見ていたが、しばらくすると突然叫んだ。
「さあ、早く竜胆を助けましょう!」
 その言葉に一斉に一同が注目する。すると、ミナギは、なぜかとてもバツが悪そうに叫んだ。
「……あ、……いや別に竜胆を早く助けてあげたいとかじゃないんだからね! あくまであたしが主人公として目立つ為なのよ!」
 どうやら、照れ隠しのようだ。ミナギはひとしきり言い訳すると、お蝶に向かって突進していった。お蝶から鍵を奪い返そうとしたようだ。
「ふふ〜ん、あたしが一番乗りよ!」
 得意げに叫ぶミナギ。
 ところが、そのミナギに向かって男囚達が武器を手に襲いかかって来る。
「なんじゃい! 姉ちゃん」
「いてまうで」
「いやー!」
 悲鳴を上げながら逃げ回るミナギ。実は銃舞を展開し、舞踏のような動きで男囚人の繰り出す刃を回避していた。

「なんで、あたしばっかこんな目に?」

 泣き叫びながらも、仲間達に目で合図を送るミナギ。

 ……今のうち! 鍵を奪い返して!

「なんともけなげな。ミナギは我らのために生け贄を買って出ていてくれるのであろう」
 藤原 千方(ふじわらの・ちかた)が嘆息をする。
「そのようですね」
 ささらがうなずく。
「では、我々も戦おうとするか」
 千方は隣の獅子神 玲(ししがみ・あきら)を見て言った。
「仕方ありませんね」
 玲が頷く。
「……本当は戦うのは嫌なのですが…我儘言えませんね。一緒にご飯を食べた人は友人です。友人の危機は見過ごせません。……という訳で、とてつもなく嫌ですが組みますよ、千方」
「我としては、ぜひ……あのお蝶という女と戦ってみたい。それにあれと戦って勝てば鍵も手に入る。我々が鍵を手に入れ、さららが竜胆を助ければよいであろう」
「頼めますか?」
 ささらの言葉に、
「いいとも」
 と、千方はうなずいた。
「私は、あの女と戦うのは気が進みませんね」
 玲が言う。
「なんかやりにくそうですね……間合い的にも性格的にも」
「なぜだ? ……謝ってる姿が可愛いではないか。……決めた。あれは我の物にする。いくぞ、金鬼の娘よ」
 有無を言わさず、千方はお蝶にむかって躍りかかっていく。
「……はあ、心技体優れない弱者とは戦いたくないんですが」
 玲はしぶしぶ後を追いかけていった。そして、カクタンキリンジを手にお蝶に斬り掛かる。
「……!」
 お蝶は一瞬驚いたように目を見開いた。すぐに倒せるかと思いきや、バック転で玲の攻撃をかわす。そして、壁にへばりついて手裏剣を投げて来た。
「忍者?」
 玲は驚いて叫んだ。その言葉にお蝶はしまったと言う顔をする。そして、顔を抑えると泣きながら叫んだ。
「ああ、私ったらなんて馬鹿なの? くのいちが簡単に正体をばらしたら駄目じゃない。本当に、私ったらどうして、こんなに駄目なんだろう?」
 泣き叫ぶくのいちに玲は音もなく近づいて行った。その背後には三鬼招来「隠形鬼」で強化した隠形の術で姿を隠した千方がいる。
「はっ……」
 お蝶は気配に気付くと、手で印を結び、何かを唱えはじめた。すると、お蝶の体か無数の蝶が飛び出してくる。蝶の鱗粉が玲と千方を包み込んでいく。辺りの景色が消え、二人は金色の空間に閉じ込められた。
「なんでしょうか? ここは?」
 玲の言葉に千方が答える。
「どこでもない。おそらく、幻術にハマったのであろう」
「幻術ですか……」
 玲はうなずくと、見えない敵に向かって刃をふるった。穂先から稲光が走る。稲妻が空間を切り裂き、みるみるうちに、金色の空間は消えていく。目の前には、ぼう然とした顔のお蝶の姿があった。
 正気になった玲に向かってお蝶が謝る。
「ひどい目にあわせて、ごめんなさい。こんな争いをしなくてはならないのも、私がくの一なんかしてるせいなんです」
 いきなり謝られて調子を狂わす玲。しかし、その背後から千方が木刀で攻撃。気配を察したお蝶は隠形の術で姿を消し、手裏剣を投げかける。その、手裏剣が玲の背に当たった。

「!!」

 玲の体に衝撃が走る。同時に、玲の気分が高揚し、彼女の中の「鬼」が目覚め、抑えられなくなった! 
 玲の体はゆっくりと大きくなり……やがて、金色の髪と一本角を生やした狂戦士に変貌した。
「お……鬼?」
 ゼニガタ・ケイジが悲鳴を上げる。

 凶暴化した玲はカクタンキリンジを手に防御スキル「ブレイドガード」を発動させ、スタンクラッシュでゼニガタや男囚達に襲いかかった。床石が砕け、ゼニガタ達が悲鳴を上げて逃げ出す。砕けた石が飛んで来て、お蝶の体にぶつかる。さらに玲は煉獄斬を繰り出した。柱が砕け建物が傾いてくる。
 牢が傾ぎ、竜胆が悲鳴を上げた。
「竜胆さん!」
 ささらが格子をつかんで叫ぶ。竜胆も格子に手を置き、必死で体勢を整えようとしている。
「大丈夫ですか」
 ささらは尋ねた。
「なんとか……大丈夫です」
 竜胆は真っ青な顔で答えた。
 しかし、玲が暴れるたびに振動がおき、その度に竜胆は倒れそうになる。
「玲さん。暴れないで下さい」
 ささらは玲に駆け寄って叫んだ。
「ほーら、パンですよ。パン」
 その言葉に、玲が振り返る。そして、ささらの手の上のパンを受け取ると、口の中に放り込んだ。その途端、玲の体はするすると小さくなり、やがて元の姿に戻った。
「ふう。おとなしくなりましたか」
 ささらは額の汗を拭う。
 そのころ、お蝶は瓦礫の中に倒れていた。
「どうしてなの? 敵にもあんな鬼の仲間がいるなんてお頭は言っていなかったのに。ああ、でも、こんなおそろしい目にあうのも、私が全部悪いのよ。私がくのいちなんてしてるから……」
 その、お蝶の前に千方が立ちはだかる。敵の気配に顔を上げるお蝶。立ち上がろうとするお蝶に向かって、千方はしびれ粉をまいた。お蝶の体がしびれて動けなくなる。そのお蝶の体を千方は、銀の飾り鎖で縛り、首輪を付け、舌を噛んで自害しない様に我のマフラーを噛ませ捕縛。
 そして、鍵を取り出すついでに胸や尻を触りながら、問いかける。
「……貴様、くのいちなどやめて我の物になれ。……愛でて幸せにしてやるぞ。我の物になったら、全力で護るぞ?」
 お蝶は泣きながら首を振った。
「ごめんなさい……! 許して……!」
 千方の変態ぶりはさておき、鍵を受け取ったささらは、牢の鍵を開けて竜胆の側に駆け寄っていった。
「竜胆さん。大丈夫ですか?」
「ああ、ささらさん。ありがとう。私は大丈夫……っ!」
 竜胆の足から血が出ている。それを見てささらはヒールを掛けた。そして、少しでも体力を戻す為にカロリーフレンドと緑茶を用意する。
「さあ、これを」
 ささらは竜胆に緑茶を手渡して言った。「竜胆さん…辛かったでしょ。だけど、あなたは自分の身も顧みず優先すべき事を優先させた…そんな事男でも中々できる事じゃない。
あなたはもう立派に「漢」ですよ」
 すると、竜胆は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「さぁ、為すべき事を為しに行きましょう。
大丈夫、私達が絶対護りますから…友人として」
「ありがとうございます」
 竜胆は、うなずくとささらに促されて立ち上がった。そして、二人が牢から出た、まさにその時……。

「ファーック!」
 声とともに、マシンガンが二人の鼻先に突きつけられた。