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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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真相究明 2

 脱鬼は拳を振るうと猛然とエメと蒼に襲いかかって来た。
 エメが両手にもったウルクの剣で拳を受け、蒼がナラカの蜘蛛糸を投げ、鬼の首に巻き付け締める。
「効かぬわ!」
 鬼は、ものすごい力で蒼を振り払うと、エメを叩き潰そうとした。
 その時
「危ない!」
 大太刀を持った若武者が現れて、鬼とエメの間に入る。そして、大太刀を構えると、袈裟がけに鬼の体を斬った。

 ズガァ……!

 鬼の体から血が噴き出す。
「ば……馬鹿な!」
 鬼は体から溢れる血を見て信じられないという風に首を振った。
「人間ごときがこの俺を一太刀で傷つけるとは……お前は一体……」
 全てを言わせず、若武者はもう一太刀浴びせる。鬼の首が胴体を離れて飛んで行った。

「斬鬼剣だ」
 若武者は落ちて来た首に向かって答えた。
「邪悪なる存在をうち滅ぼすために、高覧聖人の法力を込めて打たれた特別の剣だ。その威力は、一太刀で鬼をも倒すと言われたが本当であったな」
 そう言って、ゆっくりと振り返ったその顔を見て、蒼は声を上げた。
「竜胆様!」
 そう。その姿はどう見ても竜胆だったのだ。ただ一つ、女の姿をしていない事をのぞいては……。
「竜胆?」
 若武者は驚いたように二人を見た。
「お主らは竜胆を知っているのか?」
「その口ぶりからするに、君は竜胆ではないという事ですか?」
 エメが聞き返す。すると、若武者はうなずき答えた。
「私は日下部藤麻」
「ええ!」
 その名を聞いて蒼が驚く。
「という事は、竜胆様の双子のお兄様ということですか?」
「そうだ。邪鬼を倒すために、長い事屋敷を後にしていたのだが、その間に、私の双子の弟が見つかったと風の便りに聞いた」
「それで、竜胆に会うために戻られたのですか?」
 エメが尋ねる。
「それもあるが、兄、刹那を邪鬼から救い出す方法を見つけ出したゆえ参った。今、兄もこの城下にいると聞いている」
「刹那なら六角屋敷に隠れていると聞きます。しかし、竜胆は無実の罪を着せられて奉行所に捕らえられています」
「その噂も聞いた。だから、竜胆を犯人だと証言したあの女を見張っておったのだが、まさか鬼だったとは……」
「でも、それでは本物のお栄様はどこにいるのでしょう?」
 蒼が首をかしげた時……
「助けて……」
 どこからかか細い声がした。どうやら、目の前にある祠の中からのようだ。
 3人が祠を開けると、中に縛られた女が居た。お栄だ!
「あなたは、お栄様ですか?」
 蒼の言葉に、お栄がうなずく。
「どうして、こんなところに?」
「分かりません。この、小太刀を紫色の髪の男に渡されて、それから気を失って……」
 お栄の胸の所には確かに小太刀が置いてある。
「あれは……」
 蒼はエメを振り返った。エメは頷いて答える。
「間違いない。珠姫の小太刀ですね」
「お栄様は、紫色の髪の男に手渡されたとおっしゃいましたね」
「紫色ですか……少なくとも竜胆ではありませんね」
「それは、おそらく我が兄の刹那だ」
 藤麻が言った。
「刹那がその女を術にかけ、あの鬼と共謀してここに閉じ込めたのだろう」
 その言葉にエメと蒼は顔を見合わせてうなずいた。この人を奉行所に連れて行き、証言を取り消してもらおうと。
 そして藤麻は、兄刹那を救うために、1人六角屋敷へと向かっていった。