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とりかえばや男の娘 二回

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とりかえばや男の娘 二回

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取り憑く者達 3

 葦原城下の夜道を竜胆達は走っていく。
 目指すは、六角屋敷だ。

「たくさんの人達が走って行くなのー」
 ハムスターのゆる族キャロ・スウェット(きゃろ・すうぇっと)龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)の肩の上から竜胆達を見て言った。
「おや、本当ですな。何を急いでいるんでしょうな?」
 陳宮 公台(ちんきゅう・こうだい)が答える。
「廉お姉ちゃんはどう思うなのー?」
 キャロは肩の上から廉に尋ねてみる。
「……」
 しかし、廉は無言だ。
「お姉ちゃん?」
 キャロは再び声をかけたが、やはり無言だ。
「どうしたのー? お腹でも痛いなのー?」
 尋ねるキャロ。しかし、その時、体のバランスが狂い、地面に落とされてしまう。
「れ……廉お姉ちゃん?」
 驚いて廉を見上げるキャロ。
 その廉の表情の異様さに、びっくりする。
 普段、冷静さを欠く事が殆ど無い廉が、泣いていた。しかも、泣いているのに顔は笑っていた。その眼は、まるで病んでいる様に光がない。
 廉は、妖刀紅桜【雅刀】を抜くと、いきなり陳宮に襲いかかっていった。
「うわ!」
 突然の事に、よけそこねた陳宮の腕に薄く斬り傷ができる。
「う……うわ。廉殿? な……何をするのです?」
 しかし、廉は無言で爆炎波を撃って来た。とっさにエンデュアで防御する陳宮。大鎌を構えて廉の三の太刀を受ける。しかし、力、体力共に普段から廉に劣っていた為か、押され気味。さらに、大切な妹を傷つけまいとする為、スキルを使っての攻撃が出来ない。
「れ…廉殿、お……落ちついて!」
 と言っている陳宮の方が内心かなり焦っている。なにしろ、かなり予想外の出来事なのだ。
 しかし、廉は情け容赦なく襲ってくる。
 ギラギラと鬼眼を発動させ、時たま小さな声で何か呟きながら……。
「轟雷閃」
 刃の先から轟雷を放たれ、陳宮に襲いかかった。再び、エンデュアで防御する陳宮。
「お、お姉ちゃん、ひっく、どうしたのー!」
 泣きながらあたふたしているキャロを連れて、陳宮は逃げ出した。いったん安全な場所に退避して、頭の整理をつけようとしたのだ。
 その二人を、廉が追いかけてくる。刀を地面に当たるほどにだらりと垂らし、歩いて追いかけてくる。その目からは相変わらず涙が……その涙も普通の涙というより血の涙に近い色合いをしている。
 陳宮は路地に入ると物陰に隠れた。
「ねえねえ、陳宮おじちゃん。お姉ちゃん、どうしちゃったなのー?」
 キャロが泣きながら聞いた。
「おそらく……奈落人に憑依されたんでしょうな」
 陳宮が答える。息が整うとともに、だんだん冷静さが戻ってくるようだ。
「間違いない。あれは蓮殿ではなく奈落人なのでしょうな」
「な……奈落人て、今、色んな所で起きてる憑依事件なのー?」
「そう」
「のー」
 キャロは考え込んだ。
「このままにはしておけないなのー」
「そのとおり。あのまま、大通りにでれば、関係のない人を巻き込んでしまう。ここは、私達の力で止めるよりないでしょうな」
「のー」
 キャロは考え込んだ後、うなずいた。
 あれが、奈落人なら手加減は無用だ。なるべく廉の体を傷つけないように戦い気絶させるのが一番だろう。
 二人は、全力で戦う事を決め、廉の後ろに立った。その気配で、廉がこちらを振り向く。
「蓮殿、今度は容赦しませんからな」
 陳宮は廉の鬼眼を見つめながら言った。その後ろではキャロが碧血のカーマインを構えている。
 廉は妖刀紅桜を構え笑いながら襲いかかってくる。
 陳宮は火計を展開した。
 廉の周りに火の海が出現する。
 廉は熱さに苦しみはじめた。