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リアクション
★ ★ ★
「どちらかって言うと、脅かす役の方が性にはあっていたんだがなあ」
「そんなこと言わないの。こういうときでもないと、脅かされる側にはならいじゃないですか」
「そうかあ?」
そんなことはないはずだがと、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)くんがフィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)さんに答えました。
「だって、これなんか、見るからにただのゆる族の着古しだろうが」
ソア・ウェンボリスさんのゆる族の抜け殻をパンチで吹っ飛ばして払いのけながら、ジェイコブ・バウアーくんが言いました。
「きゃあ、こわいぃ〜♪」
ここぞとばかりに、フィリシア・レイスリーさんが、ジェイコブ・バウアーくんにだきつきます。
「きゃあ!? 怖い!?」
ついぞ聞いたこともなかった台詞に、ジェイコブ・バウアーくんは大混乱です。もう、ほとんど反射的に、秋月葵さんが木から垂らした顔の描かれたボールをパンチ一発で吹っ飛ばします。
「ああ! だったら、こうだよ!」
反撃とばかりに、秋月葵さんがその身を蝕む妄執を放ちました。
ぴとっ。ぴとぴとぴとっ。
フィリシア・レイスリーさんが何人にもなって、ジェイコブ・バウアーくんに胸とお尻とかを押しつけてきます。
「ちょっと待てえ! この状況はヤバいだろう!」
さすがのジェイコブ・バウアーくんも、大声で叫びながら走りだしました。
「ちょっと、どうしたのですか!?」
本当に胸をむにむにと押しつけていたフィリシア・レイスリーさんが、あわててジェイコブ・バウアーくんを追いかけていきました。
「ち、ちょっと離れてくれ。これ以上は、も、もたない」
海岸まで逃げたジェイコブ・バウアーくんが、少し落ち着いてフィリシア・レイスリーさんに言いました。いったい何がもたないというのでしょうか。普段免疫がない人は、こういうとき困ります。
ちらりと、水着姿のフィリシア・レイスリーさんの胸のあたりを見て、うおおおおと、ジェイコブ・バウアーくんが気合いで煩悩を振り払いました。もう、自然と視線が胸にいってしまいます。
「大丈夫ですか? 肩を貸します?」
フィリシア・レイスリーさんの方は、いいかげん観念してこっちを見てくれればいいのにと、またすり寄っていきました。
「よ、ようし、もう大丈夫だ。先に進むぞ」
このままここにいても状況は悪くなるばかりだと悟って、ジェイコブ・バウアーくんがまた歩き出しました。けれども、いったい、何がどのように悪くなるというのでしょう。そう思うだけで、具体的なイメージがわいてきません。
洞窟の中に入りましたが、なんとも足許がふらふらします。霧島春美さんの仕掛けたスポンジのせいなのですが、今のジェイコブ・バウアーくんは自分がふらついているとしか思えませんでした。当然のように、フィリシア・レイスリーさんがぴたっとくっついて支えようとします。
むにゅ。
ジェイコブ・バウアーくん、絶体絶命です。いや、むしろ、いいかげん負けを認めるべきでしょうか。
ぴとぴとっと、クラウン・フェイスさんの足音が近づいてきました。
「リア充め、爆発しなさい!」
思いっきりさげすんだ目をして、イリス・クェインさんが復活したゴーストたちに命令を発しました。高円寺海くんにやられて、しばらくお休みしての再登場です。
「リア充めえ〜。リア充めえ〜」
リア充を呪うムキムキビキニパンツダンスを踊りながら、ゴーストたちがジェイコブ・バウアーくんとフィリシア・レイスリーさんを取り囲みました。
「きゃあ、怖い、きもい!」
フィリシア・レイスリーさんが、本当に嫌がってジェイコブ・バウアーくんにしがみつきました。
「これだ、これだよ。ありがとう、お前たち。オレは復活したぞ!」
なんだか現実世界に戻ってきたジェイコブ・バウアーくんが叫びました。さっとフィリシア・レイスリーさんをかかえると、元気にゴーストたちを突破していきます。
あっという間に祠に到着です。
「えっ、もう終わりなんですか」
「ああ、終わりだ。さあ、貝殻を収めようぜ」
ほっとしたように、ジェイコブ・バウアーくんがホタテの貝殻を祠に収めました。