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リアクション
「おお、紫月殿のところの睡蓮殿とリーズ殿ではないか。こんなところで同じ仕事とは奇遇じゃな。謹賀新年、今年もよろしくなのじゃ」
大岡らとともに舞を終えた神奈は授与所へと向かう。そこで待っていたのは友人である紫月 睡蓮(しづき・すいれん)とリーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)。
巫女である神奈は年始は空京神社で奉仕しているのだが、今年はその中に見知った顔がいたことを嬉しく思いながら挨拶をする。
「神奈さん、今日の舞は素晴らしかったですよ。舞はあまり得意ではないので私はできませんでしたが……」
睡蓮がにこりと笑って神奈たちが出ていた神楽舞の感想をまるで自分のことのように嬉しそうに語る。
「そういってもらうと嬉しいのぅ」
睡蓮とリーズが休憩にいくのでその間この授与所にいることになっているのだが、久々に会う友人ともう少し話していたい気もするが、終わったらゆっくり話そうと決めてエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)とともに二人を送り出した。
「どうですか神奈?」
衣装を隠そうとするリーズを押さえて、友人のロリ巫女様は彼女を休憩室から無理やり押し出して神奈にその姿を見せ付ける。
「やめてよ〜!」
恥ずかしそうに裾を抑えるリーズの服は、確かに巫女服なのだが、下の袴部分が通常よりもかなり短い。というかもうミニスカート状態だ。腕を上げれば脇の部分も大胆に開いているのが分かる。
わざわざ休憩中に休憩室に置いてあった短すぎる巫女服に着替えさせられて、リーズは恥ずかしそうに頬を赤らめながらドアの隙間からこっそりと神奈たちにだけ見えるように立つ。
「おや、だいぶ可愛らしい格好になったじゃないか。これなら違うバイトの方も出来そうな感じだなぁ」
エクスが帳簿に書き込みをしながらリーズの服を見てふふっと意地悪そうに笑う。
顔を真っ赤にしてそんなことないと叫ぶリーズは、睡蓮に宥められながら休憩室へと戻っていった。
「もっとしっかりしてくれていればいいのだがなぁ……」
「おぬしもいろいろと大変なのじゃな……」
遠い目をしながら頬杖をつくエクスに、神奈と同様に常日頃から苦労しているのだろうかとしみじみ思った。
「うむ。やはり巫女服はいいな……」
「あれ、ししょーじゃないかー。こんなところでなにやってんのー?」
茂みに隠れるようにしてエクスたちがいる授与所をじっと見つめていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の後ろからデメテールが声をかけた。
「おぉ、デメテールではないですか。元気そうでな――」
「あけおめなのだ、ししょー。さっそくお年玉ちょうだいー」
唯斗が話し終わる前に笑顔で遮ると、両手を可愛く差し出してデメテールは催促した。
忍者としての師匠である唯斗。そんな彼が何かを言い出す前にデメテールは先制してお年玉くれくれ攻撃を連発する。
……これはまずいのにつかまってしまいましたね……。
内心冷や汗をかきながらどうにかこうにか回避する手段はないものかと唯斗は頭を働かせ続ける。
「それでは、去年までの成果、見せてもらうとしましょうか!」
土煙をぼふっとあげて、デメテールと唯斗のお年玉をかけた鬼ごっこは幕を開けた。
のだが。
「ふぅ……いつまでも付き合ってはられないですからね」
お年玉がかかっていることでいつもよりもかなりの執念で追いかけてくるデメテールを何とか巻いて、唯斗は休憩室の中に入った。
「あ」
休憩室にはいたところで、ちょうど更衣室から出てきたリーズと出くわす。もちろん、服はまだ先ほどのミニ丈巫女姿のままだ。
「ちょ、なんでいるのよ!」
恥ずかしがってわあわあと騒いでいたリーズだったが、デメテールに追われていることを説明しているうちに恥ずかしさも気にならなくなっているようだった。
「ねぇ、ところでなんだけど、この服どうかな?」
少しだけ恥ずかしそうな表情でくるりと回り、唯人に巫女服を見せる。回転でめくれてしまいそうなミニ丈がもどかしくて気になってしまう。
「あ、ああ。すっごく似合ってますよ!」
そもそもこのミニ丈巫女服は唯斗がハデスに頼んで作ってもらったもので、そもそもミニでお願いしていたものではなかったのだが、作っている最中で布が足りなくなったので仕方なくミニになったということだった。しかも布の節約のために全体的に裾が短い。
注文していたものとだいぶ違う仕様になってしまったが、せっかくハデスに作ってもらったのでなんとか着てもらいたいと睡蓮に協力してもらって着せてもらうことにしたのだった。
そんな唯斗の言葉にくるりと背中を向けて照れ笑いするリーズ。
そんな彼女の背中の肩口に一本だけ糸がほつれているのを発見した。
「リーズ、糸がほつれて――」
くんっと引っ張るとリーズの巫女服がスパッと床に脱げ落ちた。
え? え? え? えっ?!
二人とも何が起こったのか分からず、瞬間表情も動きもそのままに固まってしまったのだが、タイミングよく買出しから戻ってきた睡蓮の声で二人ともようやく我に返る。
「なななな、何をやっているんですか! 唯斗さん!」
「え、俺?!」
確かにほつれた糸をひっぱったら脱げてしまったわけだし、実際にその引き金を引いたのは唯斗だ。しかもちょうど脱げ落ちるタイミングを見てしまった睡蓮にとっては、可愛いリーズの服を脱がせた悪漢が目の前に呆けたまま立っているといった状態だった。
「あなたって人は――!」
「いや、ちょっ、誤解ですって!」
「問答無用ですっ!」
立てかけてあった流鏑馬用の弓を掴み、速射射撃をお見舞いする。
実はあのミニ巫女服も唯斗から頼まれて作ったハデスが作ったものだったのだが、作っている途中で布が足りなくなったため、仕方なくミニスカートになっていたことまでは知っている。しかし、そんな余計な機能がついていることなど、唯斗は実際にやってみるまで知ることはなかった、
「あっ、ししょー発見!」
騒ぎを聞きつけて現れたデメテールも加わり、唯斗は二人からしばらく追われ続けるのだった。
「リーズ、いつまでも呆けてないで服を着ろ。ウサちゃんパンツが丸見えだぞ」
溜息をつきながら休憩室のリーズに向かってエクスが声をかける。下着の端に可愛くプリントされたウサギを慌てて隠しながら、リーズは更衣室へと駆け込んだ。
「おぬしも大変じゃのう」
参拝客にお札を授与して座りなおし、神奈はエクスとともに休憩室を見て苦笑する。
「きちんと働いてくれていれば問題ないんだが、今日は残りのフォローも面倒そうだ」
二人で顔を見合わせて笑うっているところに、開いたドアからハデスの発明品『全自動巫女服洗濯機』が入ってきた。
「ん? なんじゃおぬしは」
足元に現れたロボットに向かって神奈が声をかけると。
「巫女服ヲ発見シマシタ」
ピーッという機械音がなったかと思うと、アームが伸びて神奈とエクスの巫女服を強制的に脱がせにかかる。
「あ、こら! どこを触っている!」
巫女服を洗濯するために脱がせようとするのだが、二人が抵抗して脱がせられないことが分かると、さらに多くのアームを出現させ、そのまま『手洗い』に移行しようと伸ばしてくる。
和服でも傷めずに洗えるというスグレモノなのだが、いかんせん着てる着ていないに関わらず最終的には強制的に洗おうとするようで、結局アームを伸ばしてくるという欠陥がついていた。
「やめるのじゃ……っく、くすぐったい……ぷっ、あははは!」
あちこちロボットに現れて二人ともくすぐったさで声があがってしまう。
そんな様子にも気付かず、傷心のまま着替えて戻ってきたリーズ。
もちろん、そんなリーズも例外ではなく、二人と同じように脱がされようとしていた。
「お前たち!」
騒ぎを聞きつけて飛んできた馬場だが、先ほど会ったときよりも綺麗になっている巫女服をまとって、笑いながら床に転がっている彼女たちを見つけて驚く。
何が何でももう脱ぎたくないと必死で巫女服を抑えていたリーズ。彼女よりも洗いがいのある巫女服が目の前に現れて、発明品のターゲットは馬場に切り替わっていた。
その直後、授与所から馬場の悲痛な叫びが聞こえたのは言うまでもない。
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