リアクション
(何で喧嘩するんだろう? あっちの人たちとお話しできないのかなー? 仲直りできないかなー……?) ○ ○ ○ 李 梅琳(り・めいりん)大尉が通信機で都築少佐との連絡を終え、状況を把握した後、援護に訪れた教導団員達は素早く作戦を立てていく。 「指揮官のダミーを置くってのはどうだろう」 殺気看破、超感覚、博識の技能で周囲に警戒を払いながら橘 カオル(たちばな・かおる)が提案する。 指揮官を狙った攻撃が行われていると都築少佐から聞いていた。 「オレが敵だったら、相手を撤退に追い込むにゃ頭を取るのは定石だろ。それも確実に打ち取るとしれば、隊を組んで連携して討ち取るだろう」 言って、カオルは梅琳を見詰める。 「そんなことはさせない!」 「うん、あたしが囮になってあげるよ。そのかわりお寿司おごりだからねー」 マリーア・プフィルズィヒ(まりーあ・ぷふぃるずぃひ)が、カオルをにこにこ見る。 「おー、いくらでもおごってやるぜ。回らないヤツをな」 「やったー!」 「ちょっと心配だけど……お願いするわ。勿論、敵が攻撃してきたら指揮官ではないということを明らかにして、防御に務めてね」 梅琳はそうマーリアに言った後、大岡 永谷(おおおか・とと)に目を向ける。 「あなたの案は、補給拠点の襲撃だったわよね」 「そうだ。報告によると、物資が集まっている拠点の近くに敵団長もいるようだ。技能で潜み、ゲリラ的にヒット&ウェイで行うつもりだ」 「了解。私もそちらに向かうわ」 「オレも同行する。メイリン達が無茶しないようにな」 梅琳とカオルがそう言う。 「援軍の本隊の方は、守備隊と交戦中の敵の側面をつき、最大速力による奇襲で指揮系統の混乱を狙います」 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が提案をする。 「私も側面からの攻撃に賛成よ。龍騎士が後方に残っているのは、パラ実生を警戒しているからじゃないかと思う。注意を割いている部隊の側面も狙ってはどうかしら」 天御柱学院のローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)もそう提案する。 ルカルカは頷いて言葉を続ける。 「敵陣を狙う別働隊は、余力があれば後方から援護。指揮官を特定して、可能なら狙撃。数機で組んで、一機を狙うこと、突出は絶対避けること」 ルカルカの提案に梅琳が頷く。 「マーリアを指揮官に見せかけとくとして、実際の指揮はルカルカ・ルーに任せるわ」 同作戦には、ローザマリア・クライツァール、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)、上杉 菊(うえすぎ・きく)、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)。 そして、久多 隆光(くた・たかみつ)、童元 洪忠(どうげん・こうちゅう)。 更にグロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)、レイラ・リンジー(れいら・りんじー)、アンジェリカ・スターク(あんじぇりか・すたーく)、テオドラ・メルヴィル(ておどら・めるう゛ぃる)が加わることになった。 「はい。ルカ達イコン部隊が前に出て、マーリアさんが後方から指揮をとっているように、見せかけ、守るわね。敵の射程の関係上、可能な限り遠距離のうちにイコンから叩きましょう」 ルカルカは自分と共に戦う教導団員に話した後、にこっといつもの明るい笑顔で梅琳を見た。 「自衛も忘れないで下さいね。いつでもカオルさん通じて呼んで下さい♪」 「うん、ありがとう」 梅琳も少しだけ顔を緩ませた後、厳しい表情となる。 「これより、作戦を開始する。――護るわよ」 「第七龍騎士団の新団長が……レスト、彼なら。彼女もこの戦場にいるかもな」 ツヴァイに搭乗した隆光が、戦場を見回す。 多分彼女――ユリアナは、彼側につくだろう。 そんな確信があった。 (俺は軍人だ。軍人だから、任務はしっかりとやるさ) 思いながら、号令に従ってアサルトライフルでヴァラヌスを撃つ。 隆光が軍人として戦っているのは、昔の犯罪の、罪滅ぼしでもある。 だけれど、彼にとってもっと大切なのは、友達だ。 友達を見殺しにするような人間だけにはなりたくない。 そう思っていた。 (任務と重なった場合はどうするかね。両立なんてのは一番難しいもんだしよ。……二兎を追う者一兎をも得ずって言うが俺はどちらか一方だけなんて出来ねぇ) そう考えながら、銃を撃っていく。 「前進するよ!」 ルカルカの声が響いてくる。 もう、考え事をしている余裕はない。 |
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