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リアクション
「うおっと、やばくなってきたなぁ。けど、ここは護らなければいけへん!」
ラズィーヤや契約者の要人と共に避難する泰輔の前にも、従龍騎士が現れた。
「無粋な招かれざるお客様は、速やかに御引き取りを!」
演奏を担当していたフランツが、毅然と立ちはだかる。
会場の外で警備をしているレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)の報告によると、機械獣はほぼ屋上と入口から侵入。龍騎士は屋上と入口付近に留まっているようだ。
従龍騎士は、屋上、入口からの侵入の他、窓や薄い壁を破って侵入してくる。
尚、レイチェルの仕掛けた『宝物あり。ドラゴンさん危険立ち入り禁止』と張り紙をしたトラばさみのトラップに近づく龍騎士はいないとのことだった。
「大人しく、我等が求める物の元に、案内してくれるのなら矛を収めよう」
槍を向けながら、従龍騎士はそう言った。
「な、なんなのだ!? いったい何なのだ!?」
訳が分からず、セレスティアーナはただただ慌てている。
「白百合団の誘導に従い、早くシェルターへ」
イーオンが、落ち着かせようとセレスティアーナの肩に手を置く。
「逃げろ。俺を信じて、冷静に逃げ延びてくれ」
「え……」
不安気な彼女を白百合団の方へぽんと押して、任せると、イーオンは従龍騎士、そして入口から侵入していくる機械獣の前へと出る。
「建物の中では大技を使えないのは互いに一緒です」
セルウィーも、盾を構えてイーオンのサポートに前へと出る。
「アレを傷つけたくないのは、帝国側だって一緒のはずやしな! 建物を壊そうなんてしないはず。任せた!」
言い、泰輔は白百合団員が導く中、要人達と共にシェルターの方へと急ぐ。
「客の動きを見ていましたが、怪しい動きをする人は特にいませんでした」
共にシェルターへと向かいながら、フランツは泰輔にそう報告をする。
だけれど、何かひっかかるものはあった。
ドン!
もう一人、窓からワイバーンに騎乗した従龍騎士が侵入してくる。
「地下への守りを固めろ!」
途端、イーオンが大声を上げる。興奮を装いながら。
「そうか、あれは地下に……俺は地下に行くぜ!」
「私も加勢するわ」
契約者の何人かは、シェルターに向かわず地下に続く通路の方へと走っていく。
「地下を守り抜くぞ!」
レイスで機械獣を牽制しながら、イーオンはブリザードを放つ。
それでも向かってくる敵は、セルウィーが盾で抑えた。
「地下、か……」
従龍騎士の一人が、報告の為か窓から外へ出ていく。
もう一人は、ワイバーンから降り、機械獣を前後を護らせ通路へと飛び出した。
「副団長、招待客が地下に向かおうとしています。お通しすべきでしょうか」
スクリーンに映されたイコンがここにあるのなら、イコンの格納庫として使われていると噂の地下にあるはずだと多くの契約者は考えた。
そして、代王であるセレスティアーナの護衛をしていたイーオンの言葉を受けて、直接地下に向かって守ろう……もしくは、起動させて、帝国兵を追い払おうと思う者達が地下への通路に集まっていた。
小夜子が通信機で連絡をしている間にも、侵入した機械獣がこちらへと迫る。
武器を所持していないもの達を背に庇わないわけにもいかず、指示を待たずして小夜子は契約者達を通さざるを得なかった。
『地上階が破壊されても地下にいれば安全だ。ただ、床が破壊されるようなことがあれば、皆生き埋めになってしまう。戦闘時は注意してくれ』
通信機から優子の声が響いてくる。
「了解しました」
小夜子は短くそう答えた。
「敵兵が2名、来ます!」
警戒をしていた魔鎧のエンデ・フォルモント(えんで・ふぉるもんと)が帝国の騎士の姿に気づく。
即座に、マシンピストルで向かってくる機械獣を攻撃。バラバラに破壊していく。
「従龍騎士のようですね、通しません」
小夜子は、攻撃を終えたエンデを纏い、エノンと並んで通路を塞ぐ。
「道を開けてもらおうか」
「通してもらうぜ!」
現れた敵兵は、従龍騎士と思われる青年騎士が一人と、少女――魄喰 迫(はくはみの・はく)だった。
従龍騎士は槍を小夜子に向かって――投げた。
後ろには無防備な人々がいる。エノンがラスターエスクードで槍を止めようとするが、盾が一部破壊されてしまう。
小夜子は受太刀で身を護った。
続いて、従龍騎士の光の魔法攻撃。
迫はプロミネンストリック、神速を用い素早く小夜子に接近。閻魔の掌を繰り出す。
「……っ」
エンデを纏い、防御に努めていた小夜子には辛うじて耐えられるレベルだった。
後ろに続いていた機械獣が2人に襲い掛かる。
「エノンさん、ガードお願いします。エンデさん……行きますわよ」
小夜子はエノンの盾の後ろから出て、従龍騎士に真空波。エネルギーは機械獣の体をすり抜け、従龍騎士の生身の体を打った。
「ええ、お任せください!」
エノンは龍殺しの槍で、ランスバレスト。
攻撃は飛び回っていた迫の体を掠め、後方の機械獣を一撃で滅した。
「お帰り願います!」
真空波を受け、よろめいた従龍騎士に、小夜子は乱撃ソニックブレード。
左右の機械獣も含め、傷を負わせていく。
「通してもらえないようだな。よし、違う道から行こう!」
迫はくるりと走り去る。
「くっ……無駄な抵抗をすると、多くの血が流れるぞ」
従龍騎士は退かず、魔法で氷を生み出して小夜子達へ放つ。
「多少の怪我など覚悟の上です。皆の助けもありますから、そう簡単にやられはしませんわ!」
攻撃を受けても怯まず、小夜子は修行で身に着けた力で、従龍騎士に刀を振り下ろす。
従龍騎士の纏っていた鎧が割れ、体に深い傷がつく。
更に小夜子は真空波を放って、従龍騎士を弾き飛ばした。
「ぐ……、簡単には通れぬということか」
深手を負った従龍騎士は、這うように近くの部屋へと入り込む。
「追ってる余裕はなさそうですね」
エンデがそう言う。機械獣が続々と姿を現す。
「狭い通路です。一度に相手にできるのはお互い2人のみ。問題ありませんわ」
小夜子は刀を振るい、次々に機械獣を倒していく。
「神楽崎先輩、シェルターに到着しました。セレスティアーナ様は勿論、桜谷団長も、金団長も、ラズィーヤ様もご無事です。この部屋にある武器を持って、何人かの契約者が応戦に出ます」
レキが通信機で優子に状況を報告する。
優子からは、仲間を危険にさらさない範囲で、機械獣の討伐に力を貸して欲しいという返事が返ってくる。
「うん、わかりました。そちらは大丈夫ですか?」
『順調だ。帝国側も一般人に手を出すつもりはないらしい。時々逸れた機械獣が向ってくることもあるが、軍の方が対応してくれている』
優子は周辺住民の避難を行っているようで、危険にさらされてはいないようだった。
「怪我をされた方は、治療を受けてください。戦える方は、扉の前へ。交代で護りましょう」
シェルターの中の契約者達を集めて、鈴子が指示を出していく。
(武器、沢山あるなあ……。契約者を集めたのって、もともと戦力として、だったり……)
レキはちらりとそんなことを考えた。
「了解。そのまま鈴子さんに従って、シェルターへ避難して。地下に向かった人は……仕方ないわね。多分戦力になってくれるでしょう」
亜璃珠は、会場に残り避難状況を見ているちび亜璃珠からの報告にそう答えて、電話を切った。
「敵の数は多いですが、皆様善戦しておられます。それに……龍騎士の方々は、館の中に入ろうとはしないようですし」
亜璃珠と共に、入口で指揮補助を行っているマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)は、状況を見ながらそう言った。
「そうね……。龍騎士の力をもってすれば、館ごと吹き飛ばすことも可能なはず。狭い建物内で、力をセーブして戦うより、機械獣に任せて目的のものを炙りだすという作戦かしら……」
分析しながら、亜璃珠は状況を通信機を用いて優子へ伝える。
優子は亜璃珠にこの場を任せて、全体指揮を行いながら、周辺住民の避難を誘導していた。
(帝国がここにあるもの……イコンを危険視し、建物ごと破壊しようとしたのなら、この辺一体荒野と化すことだって有り得る。でも、騎士団はむやみに一般人に手を出すことはしない。周辺住民も……ここを護るための駒……なんてことは、ないわよね)
亜璃珠は軽くため息をつき、戦況を見守っていく。
『おねーさま……屋上はダメです。全く持ちこたえられません』
続いて、理紗から連絡が入る。
班長の瑠奈を中心に必死に食い止めようとしているが、劣勢になる一方のようだった。
「わかったわ。無理はしないで、危なくなったら逃げるの」
『うん、弾幕ファンデーションの準備は出来てる』
「班長のこともよろしくね」
瑠奈からも連絡がいっているとは思うが、亜璃珠は優子に連絡を入れておく。
亜璃珠のいる場所とて、安全なわけではない。
「ここは、通しませんわ」
亜璃珠は野性の蹂躙で、機械獣の侵入を防ごうとする。
「機械の獣くらいでしたら、なんとか……!」
その攻撃に交じり、マリカは外へと飛び出す。
則天去私で機械獣を討ち飛ばしていく。
ただ、従龍騎士、龍騎士には単身では太刀打ちできないため、殺気看破で敵の位置を確認するに留め、対処を仲間に任せることにする。
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