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リアクション
「和輝達、大丈夫かな……」
アニスは、不安な気持ちを抱えながら、後方の砲撃部隊に混ざり、龍雷連隊の様子を伝え、砲撃を頼んでいた。
「数では圧倒的に不利だけど……むしろ、個々の強さでも不利だけど、やり方次第でどうにかなるさ!」
前向きな意見を言いながら、砲撃部隊に加わって、イコンでの遠距離攻撃を担当しているのはミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)だ。彼女のイコン、ストレイキャットにはサブパイロットとして、パートナーのリリウム・ホワイト(りりうむ・ほわいと)も搭乗している。
「遊撃隊の援護も大事でありますが、一番侵攻されている場所をまずは食い止めねばならないのであります!」
金住 健勝(かなずみ・けんしょう)も、レジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)と共にシルバーに乗って、要塞近くから遠距離攻撃で味方の援護に務めていた。
数も実力も劣っていようと、投げ出したら一番の犠牲になるのは普通の人々だから。
軍人である健勝は、敵に恨みはなくとも、討つことに迷いはなかった。
「ここで確実に止めるであります! レジーナ、状況報告頼むでありますよ!」
「はい、頑張ります。でも無理だけはダメですからね! 危なくなったら後退しますよ!」
レジーナは健勝にそう答えて、状況把握に努める。
「よし、次の目標はどのイコンだ?」
ミューレリアは、目標を定めずミサイルの弾幕援護で弾幕を張る。
飛兵、龍騎士であっても、迂闊にはこちらに近づいてこれない。
「空の隊を狙うであります! 突破されては困るでありますから!」
「3時の方向に、敵飛兵隊発見。前線を越えてこちらに向かってきます」
「よし、そっちの方向に撃つぜ!」
健勝とレジーナの通信を受けて、ミューレリアは3時の方向に弾幕援護。
「2時の方向に回避。当ててください……!」
レジーナが言いモニターにドラゴンを映し出す。健勝は急所を狙い、スナイパーライフル
で射撃。
弾はドラゴンの頭部に当たった。
落ちるドラゴンの背から、龍騎士が飛び降りる姿がモニターに映る。
「空からの接近は危険なんだぜっ!」
ミューレリアがマジックカノンを発射。
魔力が龍騎士とワイバーンに騎乗する従龍騎士を襲い、吹き飛ばす。
「ミサイル接近。移動します!」
「回避します!」
リリウム、レジーナが言い、急発進でその場から離れる。
大地に着弾したミサイルの爆風を受けて、機体が揺れるが大事には至らなかった。
「っ……。イコンが大破したら、生身で戦うだけだけどな! 契約者なめるなよ!」
ミューレリアはミサイルが飛んできた方向に、ミサイルを撃ち返す。
「こちらが攪乱します。小隊長機と思われるあの機体を狙ってください」
リリウムが言い、シルバーより前に出て敵の攻撃を誘う。
ブースターを利用し、動きに緩急をつけて敵を翻弄する。
「了解しました」
レジーナはシルバーの動きを止めてチャンスを待つ。
「マシンの性能はこちらの方が劣るかもでありますが、武器はそうとは限らないであります!」
そしてミューレリアの弾幕援護後に、健勝がスナイパーライフルで攻撃。
弾は動力部に命中し、敵機を撃破する。
イコンの性能も劣っており、数も少ないが、背後には格納庫、武器庫のある要塞がある。
武器弾薬の量は、こちらの方が優れているはずだ。
「さすがに、イコン部隊を相手にはできませんが……『ドラゴンスレイヤー』の称号に恥じない働きはさせていただきますよ」
砲撃部隊の援護の中、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は飛竜の部隊へと接近していた。
単身ではあったが、その身に概念分割の欠片 フェルキアの記憶(がいねんぶんかつのかけら・ふぇるきあのきおく)を憑依させ、魔鎧の白銀の戦闘着、ルータリア・エランドクレイブ(るーたりあ・えらんどくれいぶ)を纏っていた。
ウィングが狙うのは――ドラゴンとワイバーン。
私が行うのは狩りだ。
一方的に狩りつくす狩猟者だ
神速のその先を行く私の私の速さには誰もついてこられない。
例えそれが神であっても。
そう念じ、絶対の自信を抱きながら、ウィングはアクセルギアを発動。
更に、勇士の薬、神速で身体能力を上げてある。
パートナー2人の能力も自分のものとし。
凄まじい速度で、ウィングは飛竜部隊へと斬りかかっていく。
攻撃を受け、落ちてきたワイバーンの背に飛び乗り、従龍騎士ごと斬り倒し、軽身功で空を駆けるかのように、次のワイバーンへと飛び移り、斬る。
従龍騎士やワイバーンが攻撃、防御に転じるより早く、ウィングは跳び移り、眼にもとまらぬ速さで、剣を振り下ろすのだった。
ただ、龍騎士はそう簡単に倒すことは出来ない。
ウィングの動きを見抜き、その部隊を指揮する龍騎士は盾を構えるが――。
「私はあなたを狩るつもりはありません。面倒ですからね」
生命力が強いという理由で、ウィングはもともと龍騎士を相手にするつもりはなかった。
ドラゴンの喉を斬り割いて、次のワイバーンの元へと跳んだ。
そうして、ウィングはわずか5秒の間に、十数匹の飛竜に深いダメージを与えたのだった。
「よし、離れろ!」
通信機からミューレリアの声が飛んでくる。
ウィングが離脱した直後に、砲撃部隊のミサイルの雨がその飛兵部隊に降り注ぎ、中隊に壊滅的被害を与えた。
砲撃部隊よりやや前線寄りに、前線部隊を支援する形で戦う小隊があった。
「役立たずの仮面をかぶるのはもうおしまい」
れいりんメカ一号に乗って諸葛 霊琳(つーげ・れいりん)は、シャンバラの部隊を支援していた。
彼女は第七龍龍騎士団の味方として動いていたことがあった。
彼女なりの考えがあってのことで、本当にシャンバラを裏切ったわけではなかったのだけれど……。
「結局目立った成果は上げられずに帰還することになってしまいましたね」
サブパイロット席に座るパートナーのアラン・エッジワース(あらん・えっじわーす)がふうとため息をついた。
「まあ、これからです」
「本気のワタシを龍騎士達に見せるアルよ」
霊琳が仲間に意気込みを見せる。
団長が変わった龍騎士団に未練はなかった。
シャンバラ側に戻るため、シャンバラに情報を提供し、今回は監視つきで前線に出ている。
空戦も、射撃でも自分の能力は活かせないため、手榴弾を用いて戦っていた。
「すっぱり関係を断つためにも手加減は無しアルよ!」
「でも、こうやって裏切りを続けていると誰からも信用されなくなりますよ?」
アランの意見に、霊琳は特に問題がないとうようにこう答える。
「友達なくしても、ワアシ、アランがいれば大丈夫ネ」
まったくもう……と思いながら、アランは状況把握に務めることにする。
「歩兵の接近はないようです。前線に集中し、攻撃は回避いたしましょう」
敵の攻撃は主に、前線と後方部隊に向かっている。ここからでは、武器は届かず、遠距離攻撃にもふさわしいとは言えない。相手側の反撃攻撃を防げるだけの防御力はない。
「味方を巻き込んだりはしないアルよー!」
霊琳がコロージョン・グレネードを敵イコンに投げつける。
「こちらも行きます!」
ペガサス・ファウに乗る音井 博季(おとい・ひろき)も、コロージョン・グレネードをイコン部隊に投げ込んだ。
「今アル!」
霊琳が声を上げる。
前線で戦う部隊が一気に武器を繰り出して、敵ヴァラヌスを押していく。
「ここを護りきれば、キマク奪還の足掛かりにもなるはずです……!」
博季は上空から周囲、下方を見回す。
戦力差は歴然。自分達が勝利する……つまり、護りきる為には粘るしかないと、皆を鼓舞しながら自分も敵わない敵に立ち向かっていく。
「総合能力は劣っていますが、機動力は負けないはずです」
ペガサススピアを手に、博季は飛兵に挑んでいく。
狙うのは騎手よりもワイバーン。翼に槍を繰り出す。
騎乗した従竜騎士の盾は、博季の矛先に届きはしない。
傷ついた飛竜が1匹、また1匹地上へと降りていく。
無論、従竜騎士達も黙って攻撃を受けているわけではなく。
博季の体、騎乗しているペガサスも少しずつ、傷ついていく。
また、従竜騎士はほとんど無傷なため、落とされたワイバーンは魔法で治療されてまた戻ってくる。
「しかし、精神力には限界があります。それはこちらも同じですが……」
だが、体力や精神力を回復させる道具、補給のしやすさに関してはこちらが有利だ。要塞を落とされなければ。
戦っているのは国と国。
個人と個人ではない。
「殺し合う理由なんて、ありません……」
だけれど、戦いの最中に命を落としてしまうことがあることも、解っている。
相手も、自分、も。
手を抜きはしない。
守るべきものが背後にあるから。
「攻撃来ます! 避けてください」
敵イコン部隊から空に向けて砲撃がある。
博季は避けながら、砲撃を行った敵の小隊長を狙いマジックカノンを発射。
博季の攻撃は、小隊長の武器を弾き飛ばした。
と、その時。
帝国軍の飛兵がぱっと左右に分かれた。
空中にできた広い道に――鋭い風の刃が生まれる。
砲撃部隊のミサイルを空中で爆破させ、全ての攻撃を散らし、その風はシャンバラの飛兵の元に迫る。
「隊長の魔法ですね……ッ」
博季はペガサスを操り、回避しようとする。だが、間に合わない。
次の瞬間。
その風の刃を押し返すように、要塞側から風が吹いてい来る。
弱まった刃が博季の頬を撫でた。軽く、傷がついただけだった。
「反撃します。援護お願いします!」
博季は振り向かずに言う。
後方から風を生み出し、敵の攻撃を弱めたのはヴァイシャリーからの援軍――レイル・ヴァイシャリーと風魔法の使い手、ファビオ・ヴィベルディ(ふぁびお・う゛ぃべるでぃ)であることは解っている。
後方から強風が発生し、敵飛兵を襲う。
側面から急接近し、博季はドラゴンの翼にマジックソードで強い一撃を放ち、即離脱する。
龍騎士を乗せたドラゴンが1匹、地上へと落下していく。
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