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まほろば遊郭譚 第一回/全四回

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まほろば遊郭譚 第一回/全四回

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第七章 追跡2

「暁仄姐サン……」
「どうしたんだい、胡蝶。お披露目に怖気づいたのかい」
 暁仄は花魁衣裳に身を包んだティファニーの背を軽く叩く。
「身請けでも廓から出るとはいえ、最初で最後の晴れ舞台だよ。お気張んなさい」
「ミーは暁仄姐サンがいいデス」
「……は? 胡蝶?」
「暁仄姐サンがいいデス……」
 涙をためたティファニーが暁仄をじっと見つめている。
 そして彼女は姉遊女の華奢な身体に手を伸ばし、抱きついた。
 暁仄はようやく理解したらしい。
「馬鹿な子だよ……化粧が落ちたら……またやり直しだよ」
 暁仄はティファニーの頬に、唇を落とした。
 赤い紅が頬からうなじへとひかれていく。
 胡蝶の白い肌がぱっと赤らんだ。

卍卍卍


 遊郭内に植えられた桜並木を、豪華に着飾った花魁一行が大傘とともに進んでいく。
 童女が前を歩き、大勢の付き人を従えて、花魁はゆっくりと八文字を踏む。

「みてみて要! 花魁道中だよ……綺麗だなあ!」
 東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)が指差す。
 大通りは『竜胆屋(りんどうや)』の胡蝶を一目見ようと、たくさん人がごった返していた。
 彼女に付いてきていた要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)も両腕を前に組んで見物している。
「秋日子くんも花魁に興味があるんですか……遊女のかっこうがしてみたいとでも?」
「……要、顔赤いけど。もしかして想像してるの?」
「なっ、何を!? 自分はただ、こういう場所には慣れてないだけです。それに、東雲(しののめ)遊郭というくらいですから、てっきり秋日子くんは関係者かと……って、なんで笑ってるんですか」
「だって、おかしくて。確かに私も『東雲』だけどね! ねえ要、あの道中、付いていってみようか。東雲の関係者ですっていったら、もしかしたらお座敷にも上げてもらえるかも」
「はあ、大丈夫でしょうか。自分たちは、マホロバ前将軍の貞継公に似た人物を探しにきたんですからね。忘れないでくださいよ」
 二人は興味半分に一行に付いていった。

卍卍卍


「ティファニーちゃん、ほんま綺麗やで〜。うちにきてくれたからには、アイドルとして売りだしたるからな!」
「シャッチョさん、どうぞ」」
 茶屋の座敷では『846プロ』社長の日下部 社(くさかべ・やしろ)が上機嫌でいた。
 胡蝶が酒をいでいると、茶屋の主人がきて、常客が来たがあいにく部屋が塞がっているため、隣の座敷を使わせて欲しいといってきた。
 そうとうなお大尽らしい。
「え、俺も大金だしてんねんけど。まあ、目出度い席や。一緒に騒いだ方が盛り上がるし、ええよ」
 主人は深く頭を下げた。
 しばらくして、そのお大尽一行がやってくる。
 ティファニーは一点を見つめて固まっていた。
「ショーグン様がいる……」
「将軍様やて?」
 視線の先には、遊女や芸者、付添い人たちを引き連れて奥座敷にあがる貞継がいた。
 社は開いた口が塞がらない。
「……マホロバの前将軍がなんでこないな場所におんねん!?」