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ホレグスリ狂奏曲

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ホレグスリ狂奏曲

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 終章 歴史に刻まれたレオタード


 解毒剤も大体出回り、イルミンスールはいつもの平和を取り戻し……ていなかった。
 中央ホールの北にレオタード次女、城定 英希(じょうじょう・えいき)とその部下30人、東にレオタード末妹、明智 珠輝(あけち・たまき)、そして西にレオタード長女のエリザベート・ワルプルギスとその取り巻きが陣を作るように集まっていた。
 それぞれの人数を見て、英希は高笑いした。
「あーっはっは! これでイルミンスールは俺……私のものでーす!」
「もともとは50人居たんですぅ〜! いろいろあって、みんな病院送りになったんですぅ〜!」
「ばればれの嘘は吐かない方が良いですよー? 私の部下に調べさせて、最高でも20人居なかったことは分かっているんです!」
 火花を散らす2人とは別に、珠輝は1人、エリザベートのレオタード姿に改めて賛辞を送っている。
「エリザベートさん、素敵です……! ふふ、汗でレオタードが密着して……嗚呼、うっとりです…!」
「う〜、悔しいですうぅ〜、今日はなんだかんだで、1つも勝ててない気がしますぅ〜」
「さあ、我が部下よ! イルミンスールのみなさんに勝利の舞いをお見せするのです!」
 英希の合図で、赤いコートを纏った30人の部下が中央ホールの真ん中に進み出た。
 ばっ! と赤コートを脱ぐ。
 ラジカセを抱えた部下の1人が、ぽちっとな、と再生ボタンを押した。
“タララタラー ターラッラッタッラー タータタタララララ ラッタッター”
 以下繰り返しの音楽と共に、男達が踊る。
 両腕を伸ばす!
 横にスライド! 
 ターン!
 両手を膝に当てて胸に向かって這わせ……両手を上げて後ろに!
 前に来てターン!
 身体を横たえてポーズ! 首はぐいっと上に!
「これこそが本当の逆ハーレムですー!」
 腕を広げて高らかに笑う英希に、あくまでもマイペースに珠輝が言う。
「ふふ、逆ハーレム!? そんなもの私の脳内ハーレムに比べたら可愛いものです! 
 私の脳内では貴方も貴女もスッポンポンですよ……!」
「負けません〜! あなたたちも踊りなさぁい〜!」
 エリザベートの取り巻き4人が集団に混ざる。
 汗が光る。
 珠輝が脳内破廉恥地獄絵図を淡々と語る。
「その時、英希の柔らかな唇に珠輝の……」
「何を語っても俺はそう驚かないよー。そう、そういう性格……やめてー。ごめんよー。やめてー……」
“ターターララ ターラッラッララー ターターララ ターラッラッララララータラー……ジャジャジャジャン!”
 フィニッシュ!

 その頃、ザンスカールの市場では――
「こ、これなんてどうですか? お友達、気に入ると思いますよ」
 鬼崎 朔(きざき・さく)が、クリスマスデザインの施されたリングを選ぶ。赤い顔をした四条 輪廻(しじょう・りんね)は、それを受け取ってレジへと持っていく。
(ふむ。これは、薬が切れた後ももしや……だな)
 離れて観察していた尼崎 里也(あまがさき・りや)が胸中で呟く。戻ってきた輪廻は、リングの他にもう1つ、ネコのストラップを持っていた。
「な、なんだ……その、今日は楽しかったからだな……い、いや惚れ薬の効果だというのは分かっているし、無理強いもしないのだが……デート、にも興味が出た」
 びっくりしてストラップを指に引っ掛ける朔に、輪廻は言う。
「また今度、よければ……よければだが、一緒に遊びになど……」
 ……赤面しすぎて、何だか貧血を起こしそうだ。
「……自分は『汚い』けれど、……それでも本当に自分を『きれい』と思ってくれるなら…」
 自分はその過去により、自身のことを『女』ではなく『汚いモノ』という捉え方しか出来ない。でも、私のことを『汚い』と思わずに本心から一人の『きれいな女』と思ってくれるなら、……それに答えたい。
「ききき、きれいだ! とても綺麗だぞ!」

「アリア、これ食うか?」
 市場に売っていた艶やかなリンゴを指して、鈴木 周(すずき・しゅう)は言った。
「はい……仰せのままに……」
「ちっがーう!」
 周は頭を抱えた。
「そうじゃねーんだって! 俺は普通の恋愛がしてーんだって! アリア、ちょっといつもどおりにしてみ?」
「……貴方が望むのなら、如何様にも……」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、リンゴを地面に落として指を周に向けた。
「……我を愛せよ、我を愛せよ、我を愛せよ、我を愛せよ……」
「うわっ! 出た!」
「……我を愛せよ、我を愛せよ、我を愛せよ、我を愛せよ……」

 ――夜。
 イルミンスール魔法学校ではクリスマスパーティが開催された。普通の、平和なパーティだ。
 一部を除いて。

 薬の切れた志方 綾乃(しかた・あやの)は、茅野 菫(ちの・すみれ)に『せふれ』の意味を聞いて真っ青になった。
「え、ええっ!? 『せふれ』って、シャンバラ語で『友達』って意味じゃなかったんですか!? わ、私……」
 青い顔が、今度は真っ赤になる。
「あ、綾乃!?」
 素面に戻っても綾乃への気持ちが完全に消えなかった菫は、卒倒した綾乃の身体を支えた。今までは、いじりがいのあるちょっとエロい団員としてしか思っていなかったけれど……
 これからは、もう少し大切にしよう。
 
「「「「「「「「「「「エリザベート様〜〜〜〜」」」」」」」」」」」
 ホレグスリ効果の切れた元レオタードの男子生徒達が、エリザベートの足元で泣いている。
「俺達のクリスマスが……」
「なんだか妙な変態行為を……」
「あのダンスはなんだったんだ……?」
「10代最後のクリスマスだったのに……」
「うるさいですぅ〜! いつまでも根に持って、男らしくないですうぅ〜!」
「本当ですな。教導団で鍛えなおした方が良いようです」
 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)が冷ややかな口調で言った。
「ホレグスリ……効果も短時間で切れたことからそう酷いものじゃなかった。学園内においても知らない人というのは多いものでしょう。同じ学校内においてクラスが違えば縁が無い人もいます。そういった人と縁を持ち、学園内で連帯感を持つことも出来たでしょう。結果、変な行動をしたとしても『校長の薬のせい』といえば笑って済ませもするだろうし、薬の影響が無くてもやりようで話しかけたかった人にも話せたかもしれない。以上より、素晴らしい1日でしたな。学園にも益があったのでは? 少なくても、それがしは他校の行事として楽しめました」
「良いこと言いますぅ〜。毎年やってもいいくらいですうぅ〜」
「「「「「「「「「「「それはやめてください」」」」」」」」」」」

「ぷっ、これ……コレ、CGじゃないの?」
 エリザベートとアーデルハイトの絡み写真を見て、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は吹き出した。
「どこもいじってないぜ。正真正銘、ロリコンビがラブってる写真だ」
「ビデオもあれば面白かったでござるが……」
 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)風間 光太郎(かざま・こうたろう)が交互に言う。
「あはっ、あっ、はは、ふふふふふ……これで、1つ弱みを握れたわね。あなた達には礼をするわ」
 環菜は立ち上がって、後ろの棚から蒼空学園用の記録簿を取り出した。写真を挟み、こう記す。

『12/24 イルミンスール魔法学校 レオタードパニック発生』

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

マスターの沢樹一海です。ご参加&拝読、ありがとうございます!
「桃色パニック」は「レオタードパニック」になりました。
今回もハイパー分割タイム入ってます。赤白縞々青年を探せ! ほどではないと思いますが。

副作用については、2組のカップルに適用させていただきました。発動ワードは「1つ」だったのですが(あなたと1つになりたい……的な)、そんなベタな台詞を書いてきたアクションがなかったので無理矢理捻じ込みました。ふふふふふふ、とか言っちゃだめですね、うん。症状としては「本音が隠せなくなる」というこれまたベタな(ry
……ガイドのコメントで半分ばれてましたね^^;

また、ランダムカップルのえろ基準ですが、
えろあり、それなり、無し、で分けて組み合わせました。なるべく同じレベルで合わせましたが、(えろに関しての)記述なしの場合「それなり」に合わせている場合があります。よろしくお願いします。

次回のシナリオ予告ですが、15日にガイド公開します。真面目系です。こちらの方もよろしくお願いします。

では、またお会いできる日を楽しみにしております。

1/16 一部スキル、二人称、文字化け等修正いたしました。