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魔女オメガのハロウィンパーティー

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魔女オメガのハロウィンパーティー

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第1章 忘れてはいけない夜会の礼儀・・・それは挨拶

-PM17:00-

 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は今夜のパーティーに持っていくための料理を家庭科室で作っていた。
「肉料理は他の生徒が持ってきそうだから、私は白身魚の塩釜焼きを作ろうか・・・」
 まな板の上に鯛を乗せ、鱗と内臓そしてエラを包丁で丁寧に取り除き、水でよく洗う。
 さばいた鯛を水で戻した昆布、卵白と合わせた塩で包むとオーブンに入れて焼いた。
「後は・・・これに合う和風のソースを作らないとな」
 戻した昆布から出た出汁に醤油を加え、手でしぼったカボスを混ぜ合わせてソースを作った。
「私も何か作ろうかな」
 リンゴやオレンジ、パイナップルなどのフルーツをクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は、食べやすい大きさに包丁で切り分けてボールの中へ入れる。
 色とりどりのゼリーとフルーツが入っていた缶詰のシロップを加え、さらにサイダーをたっぷりかけた。
 グラスに入れてノンアルコールのフルーツカクテルを完成させた。
「これなら見た目も味もバッチリね♪」
 透明のケースに入れ、満足気な顔をする。

-PM18:20-

「はい、これで注目度が抜群に上がったわよ。ぷっ!ククク・・・・・・あははは・・・。あーっはっはっはっ!あっはっはは〜!」
 アメリア・レーヴァンテイン(あめりあ・れーう゛ぁんていん)は無理やり狼耳と尻尾をクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)につけて仮装させ大爆笑する。
「ハロウィンなんだからそれくらいしないとねー。ほら!もたもたしてないで早く行きましょうよ」
「(―・・・・・・何で俺がこんな目に遭わされるんだ・・・・・・。何か・・・・・・とてつもない誤解の意味で注目を浴びそうだぞ・・・・・・)」
「ほら、クルードさん。持って行ってください」
 手作りのシチューやポトフ、そしてパスタを大量に作ったユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)は、料理の入った鍋などをクルードの腕の上に乗せていく。
「―・・・・・・おいユニ・・・・・・。いつの間にか・・・・・・俺が全部持って行くことになっているんだが。(確かに俺が一番力はあるんだが・・・・・・多くないか?)」
「とにかく大量にあるので、慎重に運んでくださいね」
「私は絶対に持たないわよ?」
「いくらパーティーだからといって・・・・・・こんなに大量に作らなくてもいいんじゃないのか・・・・・・?少しは運ぶ方の身にもなれってくれ・・・・・・。(少しでもこぼしたら何を言われるか・・・・・・)」
 積み重なった料理のせいで、前が見えないほど危険な常態だった。
「ユニ、行きましょう。面白くなりそうだわ♪クルード、早くしなさい!」
「(あぁ・・・・・・壁にぶつかったら終わる・・・・・・。少しつまづいただけでも一瞬で終わるぞ・・・・・・)」
 注意深くゆっくりと歩きながら、オメガ・ヤーウェ(おめが・やーうぇ)のいる屋敷へ向かった。



「イリーナ・・・・・・まさか普通の服で行く気ではないですわよね?」
 イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)が普段着でパーティーに行くのかと思い、エレーナ・アシュケナージ(えれーな・あしゅけなーじ)は顔を顰めて言う。
「ああゆうパーティーには、どういう格好が合うのか迷うな・・・どうしよう・・・」
 洋服選びに悩んでいるイリーナは、エレーナの方へ困り顔を向ける。
「特に仮装だと迷うでありますな・・・」
 トゥルペ・ロット(とぅるぺ・ろっと)も一緒に選んでやる。
「慎重に選ばないとだね」
 フェリックス・ステファンスカ(ふぇりっくす・すてふぁんすか)は椅子に座り、イリーナの着替えが終わるのを待っていた。
「失礼がないようにちゃんと着飾って行きなさい。魔女のお怒りを買ったら大変ですわよ」
「そうはいっても・・・」
「しかたありませんわね・・・わたくしが選んでさしあげますわ。(レオンさんが吸血鬼だってルインちゃんが言ってたから、イリーナもそれに合わせて女吸血鬼にコーディネートした方がいいですわよね)」
 クローゼットの中から赤いドレスを取り出すと、エレーナはイリーナに手渡した。
「―・・・これを着るのか?私にこういう格好は無理があるんじゃないだろうか・・・」
 渡されたドレスを着て、姿見の鏡の前に立ってみた。
「とても似合ってるであります!」
「そ・・・そうかな・・・」
「アクセサリーもつけてみたらいいかもしれませんわね」
 エレーナは薔薇のペンダントとイヤリングを、イリーナの美しさを引き立てるためにつけてやる。
「さぁ、そろそろ時間ですわ。行きますわよ」
 ようやく身支度を終え、彼女たちはパーティー会場へ向かった。

-PM20:00-

「(仮装っても俺は既に甲殻が固まってるから服は着ないんだよな・・・翼もあるし・・・・・・)」
 せっかくだからとルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)の首に赤いリボンを巻いていた。
「(美味しい酒があるといいな・・・)」
 夏侯 淵(かこう・えん)の仮装姿は、頭には白い帽子、少年セーラー水兵服の格好だった。
「わあっ似合う。タキシード仮面様みたいだよっ」
 ルカルカのコーディネートで、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を仮装させていた。
 黒タキシードの胸ポケットには赤い薔薇、頭にはシルクハットを被り、顔にはマスクをつけている。
「そうか。ところで・・・タキシード仮面とは・・・なんだ?」
「それはねぇ・・・・・・ひ・み・つ☆―・・・あっ!オメガさんに挨拶してこなきゃ」
 主催者の姿を見つけ、ルカルカは上機嫌のまま彼女の元へ向かう。
「仮装パーティに、お招きありがとうございます」
 アニメ風な魔法戦士のコスチュームを着たルカルカが、丁寧にオメガに挨拶をする。
 ルカルカの衣装には、胸の当たりには大きなリボンがあり、両手には白い手袋をはめていた。
「お土産にクッキーを作ったんです。あっ!ダリルも作ってきてくれたんですよ、テーブルに並べて置いておくのでよかったらどうぞ。」
 クッキーの入った箱は可愛らしい包装紙とリボンでラッピングされている。
「サンキュな」
 パーティーを開催してくれたお礼に、カルキノスは主催者へ飴を渡した。
「ありがとう、後ほどいただきますわ」
 飴を受け取ると、オメガはニコッと微笑む。
「ボク、オメガおねえちゃんと仲良くなりたくてパーティーに来ちゃいました♪」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)はミニスカートの黒いローブを纏い、頭にはローブと同じ色の三角帽子を被り魔女の仮装をしていた。
「こんばんわ、小さな魔女さん。仲良くしていただけるとわたくしも嬉しいですわ」
「楽しいパーティーを企画してくれてありがとうございますぅ」
「人も大勢いるから盛り上がりそうだよね」
 お揃いの魔女の服装で仮装したメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)の2人はオメガを挨拶する。
「どうもこんばんわ」
 男装の吸血鬼の格好をしたフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も主催者へ声をかけた。
「来てくれてありがとう、楽しんでいってくださいな」
「オメガさんこんばんわ。蒼空学園の者ですがご招待の噂を聞き、桐生ひなと一緒にお邪魔させていただきました」
 御堂 緋音(みどう・あかね)は炎の精の仮装をし、オメガに赤いドレスの裾をお嬢様風にちょこっと手で持ち上げて挨拶する。
 ドレスの背中には妖精羽をつけている。
「ひなです、オメガさん宜しく」
 アライグマさんの仮装をした桐生 ひな(きりゅう・ひな)が、緋音の傍からひょこっと顔を出す。
 黒のとんがり帽子を被り、魔法使い風にマントを纏ったシルヴァーナ・イレイン(しるう゛ぁーな・いれいん)も、ペコッとお辞儀をした。
 メイド服のまま猫耳と猫尾をつけたナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)は、ニコッと笑い軽く挨拶する。
「今日はお招きありがとうございました。えっと、トリック・オア・トリート・・・?」
 地球のハロウィンで使う言葉がここでも使われてるのかどうか分からないジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)は、疑問符を浮かべたような口調でオメガに話しかける。
「はい、どうぞ。可愛らしいお嬢さん」
 オメガはクスリを笑い、きれいに包まれたアップルグミ入りのチョコレートをジーナに渡した。
「―・・・ありがとうございます。えーっと・・・あの・・・皆で一緒に食べるためにミートパイと、パンプキン・ミートパイを作って来ました」
「あら、そうなの。そこのテーブルに置いておいてくれるかしら」
「はい、では私はこれで・・・」
 軽くお辞儀をすると、ミートパイを乗せたプレートを抱えてテーブルの方へ歩く。
「トリックオアトリート〜♪」
 小悪魔の格好をした卯月 メイ(うづき・めい)が、可愛らしくオメガに声をかける。
「はい、可愛らしい小悪魔さんにもあげますわ」
「わーい、おいしそう♪ありがとー」
 レモングミ入りのチョコをメイにあげると、少女は嬉しそうに会場内を駆けていく。
「こんばんわオメガさん」
 シンプルな白ワンピースを着ている月見里 渚(やまなし・なぎさ)は、天使の仮装をしている。
「どうも、お会いできて嬉しいですわ」
 挨拶してきた渚に、オメガはニコッと微笑む。
「やっほーであります!」
 トゥルペは笑顔で駆け寄り、ルカルカに話しかけてきた。
「あっ、トゥルペ来てたんだね。パーティー楽しんでる?」
「もちろん楽しんでいるであります!」
「空京ではどうも。あれから元気にしていたかね?」
 ひなの姿を見つけ、レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)が声をかける。
「元気ですよー♪」
「それでは皆さん、一夜限りの宴に・・・乾杯」
 グラス同士が当たり、カチンッと鳴る。



「高名な魔女のオメガ嬢とお見受け致します。この度は寛大な御心で以って我々の様な凡百を宴に御招き頂き恐悦至極。以後とも末永く御付き合い頂ければこれ以上の誉れは御座いません」
 レオンハルトは膝をつき紳士らしく挨拶をした。
 彼は黒のタキシードに黒いマントを着用し、吸血鬼の仮装をしている。
 立ち上げるとワインの入った自分のグラスと、オメガのグラスを軽く合わせてカチンッと音を鳴らす。
「ご丁寧にどうも」
「どうも・・・この度パーティーに参加させていただき、ありがとうございます」
 白のタキシードに銀のマントを纏い、吸血鬼の仮装をしたシルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)が主催者に声をかける。
「ようこそ仮装パーティーへ」
「何かお話しましょうか」
「わたくしでよろしければ・・・」
「昨今はそうですね、ナラカから舞い戻った英雄の霊。英霊何て物が闊歩する様になって各地で随分と騒動が起きてますね」
「そうなんですの?」
 シルヴァの会話に、オメガは首を傾げて聞く。
「他にも何でしたかね。夢の具象化とでも言う様な悪魔も随分幅を利かせてるみたいですよ。確かそう・・・アリス・リリと言いましたか」
「外ではそういうことが起こっていますのね・・・。わたくしには分からないことだらけですわ」
「いや、地上の人間が此方へ足を踏み入れて僅か10年・・・全く随分と様変わりした物です」
「ここの外では、いろいろなことがあるのですわね・・・」
「ねね、オメガくんは食べたい物とかないかなっ?ルインが取ってきてあげるんだよっ♪」
 花冠に蔦を這わせた緑のドレスを着て、森の妖精の格好をしたルイン・ティルナノーグ(るいん・てぃるなのーぐ)が、シルヴァの後ろからひょっこり顔を覗かせる。
「それじゃあ・・・ステキな妖精さんに、お魚の料理を取ってきてもらおうかしら」
「はぁーい♪」
 ルインは料理の置いてあるテーブルの方へ向かう。