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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション



関谷 未憂(せきや・みゆう)

食事会で一緒だったブリジットさんはどこかへ行ってしまったし、コリィベルのどこかにいるらしい、名探偵弓月くるとくんにはなかなか会えないしで、パートナーのプリムと合流した私は、偶然、大講堂にいた彼女に話しかけたの。
ネットで読んだかわい家さんの犯罪ルポもどきで、彼女がパラミタの名探偵の一人だと言うのは、知ってたわ。
「あなたが私の名前の以下にあげた方たちと同じグループ扱いされるのは、違和感をおぼえますが。
はい。私がシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)です。
あなたのパートナーの竪琴奏者プリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)さんが、シュリンプ殺害事件の最中に本人では処理しきれないなにかをみてしまったのと、あなた自身が大講堂以外のコリィベルのどこかで事件に巻き込まれてしまっていること、それくらいしか私にはあなたのことはわかりませんよ。
みゆうさん」
「わぁー。あなたって、正統派の探偵さんなのね。
ミステリ小説の名探偵みたいな推理としゃべり方、見事だわ。
ごめんなさい。私はイルミンの関谷未憂。どうして、私たちのおかれている状況と私の名前がわかったのか、説明してくれますか」
「かまいませんが、今日は、お会いする方々が、みなさん、私の話し方について、一言おっしゃりたくなる不思議な日ですね。いえ、気になさらずに。
私は日頃からのクセで、常に周囲の人々の動向をなにげなく観察、把握しています。
プリムさんは、私と同様に演芸会の出演者でしたから、側にいる時間も多く、私は自然と彼女をみていたのですよ。
プリムさん、あなたがみたのはマジシャンでしょう」
「……はなすのは、みゆうにきいてからにするわ」
プリムが私のコートの袖をつかんだ。人見知りが激しく、なんでも私に相談するこの子の行動はいつも通りだけど、シャーロットさん、あなたは名探偵チックすぎる人ね。一挙一動が映画やお芝居をみてるみたいで、感心してしまう。
「プリムも私に話したそうだし、マジシャンの件は後回しにして、先に私の名前をあてた種明かしを」
「簡単です。
ついさっき、背後でプリムさんが、あなたをみゆうと呼んでいるが聞こえたのですよ。
それだけです。
私のことは、シャルと呼んでくださってけっこうです。
あいさつは終わりましたので、あなたが遭遇した事件について話ししていただけますか」

□□□□□

私はティーパーティーで遭遇したメメント・森殺人事件のこと、そこで見聞きした事件についての情報をシャルに伝えた。
「正直言って、ブリジットさんか、くるとくんに伝えようと思ってたんだ。
というか犯罪捜査が得意そうな人なら誰でもよかったんだけど、あなたに会えてよかったわ。
私も事件解明に協力したの」
「選択肢は二つですね。
森事件なら、セレマ教団。
シュリンプ事件なら、マジシャン。
どちらに狙いを定めましょうか。
余計な質問ですが、未憂さん、ティーパーティの時にはあなたの隣にいたはずのリン・リーファ(りん・りーふぁ)さんがここにはいらっしゃいませんが、彼女はどこにおられるのですか」
「リンは、いま、行方不明中なの」
「…だいじょうぶなの?」
「たぶん、ね」
プリムには、とりあえず、こうこたえはしたけれど、私にもよくわからないわ。
一緒に大講堂へ歩いてくる間に、リンはいなくなっちゃったんだもん。
「廊下を歩いていて消えたのなら、医療チームか蒼空第一幻影軍団。
この二つに接触した可能性が高いですね。
セシリア。(セシリア・モラン(せしりあ・もらん)
リンさんを探してあげてください。
私は、未憂さんと共に行動していますから、見つけたら、私たちのところへ連れてきてください」
「お嬢様。私がいるのに、お気づきでしたか」
「ええ。もちろん。
黙って立っているので、でてくる気がないのかと思いました」
私は、シャルの背後の柱の影に、彼女がいるなんて、思ってなかった。
名前を呼ばれてでてきたのは、メイド服で薄茶のロングウェーブの髪の女の子。
背は普通で、きれいだけど存在感の薄い人、でも、胸は大きいわ。
「外での調査のご報告とお嬢様の護衛はよろしいのでしょうか」
「はい。用をすませて、すぐに戻ってきて、それからしてくれれば問題ありません」
「わかしました。失礼します」
セシリアさんは一礼して去っていったわ。
「彼女、リンについてなにも知らなくても、探しだせるの」
「ええ。できるから、きかなかったのでしょう。
セシリアは私のパートナーです。
怪しいものではありませんので、ご安心ください。
話の腰を折ってしまって、もうしわけありませんでした。
順序として、まずは、プリムさんからあなたにマジシャンの話をしていただくのが、先でしょうか」
「……はなしていい」
「この子、シャルに先に話してもらってかまわないって」
プリムは、どうぞ、という感じで手をさしだしたわ。
「では、私がお話しますね。
私もプリムさんも単体では怪しくはない人物が、必要以上に多数、ステージ裏にいたのをみているのです。
演芸会に出演していたマジシャン、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)
彼女がいるのは、おかしくはないのですが、彼女が二人いるのはおかしいですよね。
見間違いではありません。
どうやらピクシコが複数人いるようだと気づいた私は、彼女をマークし、出演者たちでごったがえすステージの裏で彼女たち二人が、接触しているのを目にしたのです」
プリムが頷く。この子もそれを見たのね。
「二人の会話も途中からですが録音させていただきました。

「なにをしている」
「仕事だ。
ワタシはおまえに会えてうれしい。後でむかえにくる。それまでここにいろ」
「ワタシは」
「ワタシたちが一つに戻るのを邪魔するものは、みんな殺す。
ファンタスティックな夜に乾杯だ」

シャルがスマートフォンで再生したのは、女性の硬い声。声質が似てて、一人の人が話してるようにもきこえる。
「私としては、こちらの件には、深入りせずにいてもいいと思っています。
なぜなら、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)のパートナーは、百合園推理研究会のマジカルホームズ、霧島春美(きりしま・はるみ)ですから。
ピクシコがシュリンプを殺害していようと、私が捜査してあげる必要はないでしょう。
私のお友達にも、伝言はしましたしね。
あなたとセレマ団を調査に行きたい気分なのですが、よろしいでしょうか」
「はい。名探偵サマ」
他にこたえようがないよね。私とプリムは、ほぼ同時に首を縦に振ったわ。