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リアクション
カリギュラ・ネベンテス(かりぎゅら・ねぺんてす)
しっかしな、これはどんな言い訳もきかん状況ちゃうんか。
「そやろ。
なんぼ、ボクが犯罪事件なれしとるいぅてもな、狭い部屋に死体が一つ転がっとって、こんだけ人がおって、誰もが、自分はこれについてにはなんも知らん、死体がでてくる直前までは、死んどらんかった彼とは話しとりましたけど、彼が死体になったいきさつについては、いっさい、関知いたしません、なんちゅうのは、道理が通らん、常識では認められん証言やで」
「大阪弁のしゃべりは日本人には理解不能だにゃー。
ミディみたいなバイリンガルでも時々、わけがわからなくなるにゃ。
もっと、みんなにわかりやすく話すにゃーよ」
ボクの肩にのっとる翼猫(背中に羽はあるけど飛べない猫や。角うさぎと同じで、UMAみたいなもんやな。中国では、天使猫とも呼ばれとるらしいな)のミディア・ミル(みでぃあ・みる)が文句を言うてる。
ミディはボクを大阪弁、呼ぶんや。
どうでもええけど、ボクの大阪弁はパラミタなまりやで。この方言の使い手は、滅多におらんはずや。なんてな。
すんません。しょーもないこと言ってしもうた。
ボクはな、コリィベルの屋根にのぼって調査しとったら、かわい歩不と天ヶ原明がもめとるとこにでくわしてな、結果、大ケガしたみたいやけど歩不は心配ない気がして、明のやつが妙に引っかかったんや。
あいつは、普通やない。みとって寒気がしたわ。きれいな顔しとるけど薄気味悪いやっちゃな。
薄情かもしれんけど、歩不の方はな、以前からの活躍ちゅうか、いろいろ話を聞いとるんでな、これくらいで死ぬわけないと思うんや。
ボクは、問題の明を探しに内部に戻ったんやけど、おらへん。
消えよった。
逃げ足早いとかちゃうで。ほんまに消えてしもうたんや。あかんな。ある意味、むちゃくちゃグルービーや。気色悪さ爆発やで。
ほんでな、明を探して歩きまわっとったら、ミディとあったちゅうわけや。
この天使猫さんは、コリィベルにきたはええけど、やることがのうって、退屈したあげく、お散歩しとったらしいわ。
「あ、大阪弁。なにしてるだにゃ。へぇ、整備の神様を追いかけてるのかにゃー。
他人を尾行するなんて、大阪弁は、することなすことほんとにいやらしいやつだにゃー。
だから、あゆみにも嫌われるだにゃ。
待って。おいてくにゃ。大阪弁がヘンなことをしないように監視しててやるから、ミディも連れていくにゃ」
猫相手に本気で腹立てんのも大人げないやろ。
ボクはミディを肩にのっけてやって、明の死体があるこの部屋までたどりついたんや。
部屋におんのは、薔薇の学舎の柚木貴瀬(ゆのき・たかせ)と柚木郁(ゆのき・いく)、天御柱学園のメカニックの長谷川真琴(はせがわ・まこと)とクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)、それから、マイトの叔父さんに明を会うように助言されたっちゅう、空大生の九条ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)と{SFL0035304#シン・クートリッジ}や。九条やつ、顔が白ぅなってて元気ない感じやけど、大丈夫か。ボクが百合園推理研の仲間やって自己紹介したら、シンにメンチきられたんやけど、なんでや。
「最後にここについたボクとミディが一番、怪しくないちゅうんは、異論のないとこやろ。
遅れてきた客として、いわしてもらうとな、みんなの話を聞いて感じたんは」
「案外、最後にきた人が一番怪しかったりしてね」
「えー、このへんなしゃべりかたするお兄ちゃんとねこちゃんがわるものなのー。
いくはかみさまとはともだちだったから、かみさまにひどいことするわるものはきらいだなー」
「ミディは無実だにゃ。
疑わしいのは、大阪弁だけだにゃ」
貴瀬と郁に横槍を入れられ、ボクの顔の横におるミディまで便乗して、責めてきおった。
翼猫は、ええ加減にせいよ。
「カリギュラさんのご指摘はもっともだと思うんですが、天ヶ原さんが二人いたって可能性や、この死体がよく似てはいるけど天ヶ原さんのものではない、という線もあるのではないでしょうか」
「あたいは真琴に賛成だ。
あんたも自分で言ってるだろ、天ヶ原は怪しいってさ。
だから、普通に考えるだけじゃなくて、天ヶ原自体を疑う必要があるんじゃないかい」
「それは、ま、そやな」
さすがメカニックのお姉さんたちは、筋が通っとんな。
関係ないかしれんけど、メガネの子、真琴ちゃんか、は、こないな異常な事態になってしもうて、心細いんか、携帯をお守りみたいに胸にきつくあてて、抱きしめとる。
待ち受けに大事な人の画像でもいれてあるんかいな。
「私とシンは、元スコットランドヤードのクロード・レストレイドに、コリィベルには神が二人いる、今回の殺人事件の頻発には、神が必ずかかわっていると教えてもらったんだ。
二人のうちの一人が天ヶ原明なんだよ。
クロードによると、二人が神呼ばわりされてるのは、まんざら理由がないわけではなくて、そのう」
「不死とか不老とか奇跡を起こす力を現実に持っていなければ、ここで神として支持され、配下をたばねることなどできない。
おっさんはそう言ってたぜ。
所内のやつら、何人かに聞き込みしてみたが、おっさんの話は、ヨタじゃねぇみてぇだ。
真偽はおいといて、周囲には、神様二人は本当に神fがかってると思われてるらしいな」
シンはガラは悪いが、気のまわる、しっかりしたやつみたいやな。
「これでも私は医者の卵なんだが、簡単に天ヶ原の遺体を調べさせてもらってみて、彼には特殊な処置が施されていると思う。
心肺停止で脈もないけど、彼は、死んでないんじゃないかな」
しゃべるのもいっぱいいっぱいの感じの九条は、冗談を言ってる感じやない。
「死んでおらん。そやったら、こいつは、生きるとんのか」
「常温のまま、冷凍保存に近い状態にいるとでもいえばいいんだろうか。
死後どれくらい時間が経過しているのかはっきりしないけど、皮膚も眼球も口内も死んでる人のもではないね。
どうすれば、彼は起きるのかな」
「おもしろいじゃん。
復活の鍵は、案外、すぐ側にあったりして」
「きせ。いくのおもちゃをとらないでよ。
いくはうちゅうのかみさまなんだよー。かみさまに、えねるぎーをじょうずにりようして、せかいをへいわにしてごらんっていわれたんだよ」
貴瀬は郁から☆型のケースを取り上げ、明の顔の上にかざしたんや。
「光よ!
てね。あはははは」
☆型が輝きだしたようにみえるんは、気のせいやろうか。