|
|
リアクション
百合園女学院指定の水着を着て、波のプールを楽しげに見つめているイリス・クェイン(いりす・くぇいん)。その視線の先にはハデスたちのやり取りが。ちょうどクラーケンに薬を注入し、大変な事になっているところだ。
(休息のつもりできたんだけれど、良いものを発見したわ。誰がやったのか知らないけれどいい趣味してるわね)
クラーケンを見つめる瞳が妖しく揺れた。
(別に恋人が欲しいわけではないけれど、目の前でイチャイチャされるのはなんかムカツクのよね)
イリスは獲物を探すように辺りを見回し、あるところで視線が止まったのだった。
(カップルではないけれど……あれは面白そうね。決めたわ)
1人ほくそ笑むとイリスはプールの中へと入っていったのだった。
ちょうどイリスの視線の先にいたのは刹那・アシュノッド(せつな・あしゅのっど)たち3人だ。
刹那は白と黒、アレット・レオミュール(あれっと・れおみゅーる)は白、遊馬 澪(あすま・みお)は青と白のお揃いの紐ビキニを着てきている。
波のプールを見て、刹那は目を輝かせると気持ちよさそうに伸びをした。その伸びで水着がずれそうになるが、意外とずれない。周りから見ている男たちの舌打ちが聞こえてきそうだ。
「ん〜! プールに来てみるものね! 暑いのを忘れられるわ!」
「刹那さん、気を付けないとですよ……」
その姿を見たアレットが慌てて忠告をするが、刹那は全く分かっていないらしい。
その後ろでは澪が肩のところの紐を持って、首を傾げている。
「……面倒だねぇ。これ着てなきゃダメ?」
「ぬ、脱いじゃダメですよ!?」
普段から『面倒だから』という理由で下着を上下ともつけない澪が今にも脱いでしまいそうで、アレットが急いで止める。
3人はとりあえず、波のプールへと入っていった。ざぶざぶと水の中に入っていき、ちょうど胸の辺りまで入る。そこで遊ぼうとしたその時、刹那は胸と腰を締め付けていたものがなくなり、楽になるのを感じた。
「ふぅ〜♪ って、ん!?」
刹那はすぐに水の中の自分の体を見て、真っ赤になってしまった。着ているはずの水着がなぜかなくなっていて、真っ裸になってしまっている。慌てて水着を探すが、見当たらない。
異変に気が付いたアレットも、その様子を見て、おろおろと周りを見渡すが見つからない。それどころかもっとやばい状況なのを知った。
「澪さん!? 水着!」
澪の水着もなぜかなくなっていたのだ。救いなのはアレットだけは無事だったことだろうか。
「ああ……いつの間にかなくなっていたねぇ。別に問題は――」
「ありますから!」
「いや、いつも下着はつけていないし、この方が楽だからねぇ。それよりも、あそこにいる白い物体……どうやって捕まえよう?」
「えっ?」
刹那とアレットは澪の言葉でようやくプールの一番深いところにいるクラーケンの存在に気が付いたようだ。よく見ているとその触手が他の人の水着を取っているのがわかった。
「もしかして私たちの水着も!?」
刹那はあんぐりと口を開けてしまった。
「ふふ……たしかにやったのはクラーケンですけど、けしかけさせたのは私ですよ」
そこへ何か紐のようなものを持ったイリスが泳いで近寄ってきた。
「そ、それもしかして……おふたりの水着ですか!?」
その手にしていたのが刹那と澪の水着とわかるやアレットが叫んだ。
「返して欲しい……ですか?」
にやりと笑うイリスに刹那とアレットは一歩下がった。澪だけはあまり動じていない。
「ふふ……そうですねぇ……返しても良いですけど、私ともっといいことして遊びましょう?」
「いいなぁ! ボクも混ぜてー!」
イリスに後ろから抱き着いてきたのは、先ほど鳳明に逃げられたばかりの摩耶だ。
「あら、楽しそうですね」
「でしょー?」
恐怖で刹那とアレットはさらに2歩下がった。
その後、何やらシャワールームから悩ましげな声が聞こえてきたとかなんとか……。