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リアクション
流れるプールに女性の水着姿を凝視している監視員、蔵部 食人(くらべ・はみと)の姿があった。あまりにもじっと凝視する姿に女性は引き気味だ。むしろよく通報されないものだ。
食人は自分の鼻の下を抑え、満足そうにガッツポーズを作る。
(よし、よし、よーし! 今のところ鼻血は出ていない! これで少しは女性の裸に耐性が付いたはずだ!)
食人はキョロキョロと辺りを見回す。要救助者を見つけるためよりも、次に凝視するためのターゲットを探しているという理由の方が大きい。
すると、ある人物に目がとまった。八華 唯一人(やつはな・ゆいり)と日廻 小花(ひまわり・こはな)だ。小花はワンピース、唯一人はビキニを着てきている。
食人は友人である2人に嬉しそうに近づいていった。
こちら、まだ食人がいる事に気が付いていない2人。
小花が流れるプールでぼんやりぷかぷかっと流れて遊んでいるのを、近くで唯一人がビーチチェアに腰掛けながら眺めていた。小花が軽く流れに逆らって泳いでいるので、唯一人のそばを離れる事はない。別に意識しているのではなく、ただそうやって遊びたいだけのようだ。
だが、急に小花の動きが止まり、少し流される。
「……! 水着の中に何か入ってきた……?」
プールの底に足を付き、流されないようにすると、胸の谷間を見る。すると、そこでなにか黒くぬめるものが動き回っていた。
「……うなぎ?」
唯一人はその様子を見て目を輝かせた。
(堂々と小花の水着の中に手を入れてあの巨乳をまさぐる絶好の機会じゃ!)
「待っておれ! 今、助ける!」
そう叫ぶと唯一人はすぐさまプールの中に飛び込んだ。だが、その飛び込みで唯一人が空中にいるという短い間に小花は自分の胸に手を突っ込みうなぎを取り出してプールへとリリースしてしまった。
「なんじゃと〜!?」
それを見てしまった唯一人は叫びながら、プールの中へと落ちていく。そして、少しの間、水の中に沈んでいた唯一人が水面へと上がってくると、手足をばたつかせ、必死の形相になっている。
「わしの弱点が【泳げない】なのを忘れておったのじゃ! 溺れるのじゃ〜! 誰か助けてなのじゃあ〜!」
「……なんですごく冷静に溺れてるの? ……楽しそうだね」
そんな唯一人を小花はのほほんと楽しそうに見つめているだけで、手を貸そうとか助けようとはしない。
「ごぼぼぼぼぼ……」
唯一人はとうとう
水の中に沈んでしまった。
「今行く!」
そこへ、近くまで来ていた食人が助けようと、プールの中に飛び込んだ。急いで唯一人のそばへ行くと、唯一人は必死に食人にしがみつき、なんとか足をプールの底につかせる事が出来た。
「ぜぇ……はぁ……あ、あり……ありがとうなのじゃ」
息を切らしながら、唯一人はお礼を言ったのだが、なぜか食人から何も言葉が返って来ない。不思議に思った唯一人は食人の顔を覗き込むと鼻血を出しながら、ある一点を見つめているのがわかった。
その視線を追って、自分の体を見てみると、暴れた拍子に外れてしまったらしくトップスがなくなっていた。
「まあ、助けてくれたお礼じゃ。見られても構わぬが……おぬし、大丈夫か?」
「だい……じょうぶ……だ……」
食人は良い顔をして、親指を立てたが、やはり無理だったようだ。鼻血の出血大サービスにより、貧血でそのままぶっ倒れたのだった。