|
|
リアクション
「ちょ、マジやばくない? この子たちみんなレベル高いんですけど〜。フゥ〜」
「みんなで一緒に楽しい事して遊ぼうよ、フゥ〜」
歩いていた榊 朝斗(さかき・あさと)たちは日焼けし過ぎた肌とブリーチのやり過ぎで傷んだだらしない髪をした2人組みのナンパに捕まってしまっていた。こいつらの中では『フゥ〜』というのが流行っているのか、かなりうざい。
「申し訳ございませんが、他を当たってください」
もう何度目かのこのセリフをルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)は言い放った。そして、自分の着てきたビキニの水着を見て嘆息した。
(水着の選択間違えちゃったかしら……)
ナンパ野郎たちはどう頑張っても落ちないのを察したのか、すぐに引き下がってどこかへ行ってしまった。
「ルシェン、僕がナンパを追い払うから良いよ。僕も良い気分じゃないしね」
朝斗は男物の水着なのだが、パーカーを着ているのとその容姿のせいで女性と間違われてしまっているらしい。
「あ、そうだ。喉乾かない? ちょっと買ってくるよ」
そう朝斗が言うと、ルシェンは笑顔でコーラを頼んだ。
「朝斗が行くのなら私も行きます」
朝斗の背中を追い、アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)もついて行ってしまった。
ルシェンは手持無沙汰となってしまい、近くの流れるプールに入っていったのだった。
「のんびり流れるのも良いものですね……」
ぼんやりとプールの流れに身を任せるルシェン。しばらくすると飲み物を買ってきてくれた朝斗たちの姿が見えた。あっちもこちらに気が付いたようだ。
ルシェンが手を振ると向こうも手を振りかえしてくれる。ルシェンは朝斗たちのところへ行こうとすると、次の瞬間何か違和感を感じた。
「……ん? このプールぬるっとしてま……きゃっ……」
ルシェンの脇の下をうなぎが体をこすりつけた。そして、そのままお腹を通り、太ももの内側へとそのぬるぬるした体をすりつける。
「んんっ」
ルシェンから悩ましげな声が漏れ、頬が上気してしまっている。異変に気が付いた朝斗はアイビスに持っていた飲み物を託すと、すぐにプールの中に入りルシェンの近くへと向かって行った。
ルシェンを大変な目に合わせているのがうなぎだとわかるや、朝斗はプールの中にもぐり、うなぎを捕まえようと格闘する。しかし、ぬるぬるとしたその体はなかなか捕まえられず、1度息を吸いに水面に顔をだし、もう一度潜っていった。
無理矢理素手でうなぎを捕まえ、朝斗はプールからはい出た。うなぎから助けられたルシェンも一緒だ。
「助けてくれてありがとう――」
そうルシェンが言った瞬間、近くにいたフレデリカが使った火術が朝斗に直撃し、うなぎともども焼かれてしまった。
「朝斗!?」
驚いたルシェンの声を聞きながら、朝斗はまた流れるプールの中へと逆戻りしてしまった。
「朝斗……!」
慌てて、アイビスが助けようと飛び込む……が、しかし、どうやらアイビスは泳げなかったらしく、そのまま朝斗と一緒に流されてしまったのだった。