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リアクション
更衣室から出てきた風見 愛羅(かざみ・あいら)の水着姿に御影 美雪(みかげ・よしゆき)は見惚れてしまっていた。愛羅はフリルのついたワンピースタイプの水着だ。ちなみに美雪の方は男性用の水着に水着素材で出来たパーカーを羽織って、胸をしっかり隠しているので、顔と体を見るとなんだかどう判断していいのか困りそうだ。
じっと見られている事がわかると愛羅は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
(ちょっと恥ずかしいですけど……美雪が他の女性に目をやらないのは嬉しいかも……)
愛羅がそう思っていると、美雪が口を開いた。
「似合っているね、水着。可愛い」
「え、えっと……ありがとうございます……」
愛羅はますます赤くなってしまった。
その後、2人で50mプールへと向かって行く。波のプールや流れるプールなどにみんな流れているのだろう。他の場所に比べて人が少なく、落ち着く。
美雪は1つ伸びをしてから水の中へ入り、愛羅の方を向いて笑顔になる。
「愛羅もおいでよ」
「えっと……」
美雪が手を差し伸べるが、愛羅はもじもじしてプールの中に入って来ない。
「……ひょっとして、苦手なのかな?」
「いえ……泳げないということは……ただ私は……手足を動かしていると沈んでしまうだけで……」
恥ずかしい事を言っているのが自分でもわかっているのだろう。愛羅はさっきとは違う意味で顔を真っ赤にした。それを見て美雪はちょっとだけ苦笑する。
(それはつまり泳げないって事なんだけどね。突っ込まないでおこうか)
それから美雪はやわらかく笑うと愛羅へと手を差し伸べた。
「よーし、じゃあ俺が面倒見ちゃうよ!」
愛羅はその笑顔に引き寄せられるように手を取ると、美雪にプールの中へと引きずり込まれてしまった。
「きゃっ!?」
いきなり水の中に入ってしまい、体を固くする愛羅だったが、美雪に抱きとめられている事がわかり、ほっとする。美雪の腕は見た目よりもずっとがっしりしていて、男性なんだと言うことがよくわかる。
「一緒に泳げるようになろう」
「はい、泳げるようになります。私も一緒に泳ぎたいですから……」
「うん」
(愛羅のこういうところ、可愛いよね)
美雪はちょっとほほ笑んでから、抱きとめていた腕を外した。美雪の腕の感触がなくなると、愛羅は少しだけ残念そうな表情をする。だけど、そういう顔をしている事は本人は気が付いていない。残念だと感じていることを意識していないのかもしれないが。
美雪は愛羅の手を取り、さっそく泳ぎの練習を始める。ちょうど人が少なく、練習にはもってこいだ。
この日、愛羅はテーマパークが閉まるまでには50mが泳げるようになっていたという。