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学生たちの休日15+

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学生たちの休日15+

リアクション

    ★    ★    ★

「そろそろ開始よね。でも、ジェイダスさんはどこにいるの?」
「さあ」
 キョロキョロと周囲を見回すルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が肩をすくめました。
 主催であるのですから近くにいそうなものですが、どこにもその姿が見えません。
「これは、迎えに行かなくては」
「だが、どこにいるのか分からなければ、迎えに行くこともできないが……」
「うーん……」
 どうしようかとルカルカ・ルーが困っていると、レース会場にむかってアトラスの傷跡の陰からフリングホルニが現れました。
 華やかに無数の花火を打ちあげつつ、フリングホルニが接近してきます。そして、その甲板の上方に、巨大なジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)の姿が立体映像で映し出されました。
「皆の者、よく集まってくれた! ここに、第3回新ジェイダス杯の開催を宣言する!」
 高らかに、ヤング・ジェイダスが宣言しました。相変わらずど派手です。
「まあ、派手ですな」
 ちょっと面倒くさそうに、フリングホルニのブリッジでデュランドール・ロンバスが言いました。
「これも、国家間の大事な交流ですから。前回のユグドラシルでのレースの続きと思ってくださいな」
 まあまあと、エステル・シャンフロウ(えすてる・しゃんふろう)がデュランドール・ロンバスをなだめます。
「間もなく、スタート位置に着陸します。参加する選手たちと、マイトナー姉妹の準備をさせてください。それから、直前にバイトで雇った者たちの確認を」
 グレン・ドミトリーが、ジェットコースターとして使われているフィールド加速器の近くへとフリングホルニを寄せながら言いました。
「分かりました」
 進行を担当しているシャレード・ムーン(しゃれーど・むーん)が、要所に配置したバイトたちの様子を確認しました。
 甲板には、インタビューアナとして大谷文美がおり、スタート地点にはジェイムス・ターロンがスタート係として待機しています。本来は、加速器のコントロールは神戸紗千がやる予定でしたが、はっきり言ってとても手が足りないので、現地でバイトを雇うことになりました。まあ、いつものパターンです。
 そこで名乗りをあげたのが、散楽の翁の配下の十二天翔たちでした。全コースの十分の一地点ごとに彼女たちが待機しています。ちょうどその地点に到達した選手を、ボーナスとして加速する役目です。ただし、運が悪いとスピードがつきすぎてコースアウトしてしまいます。
 フリングホルニが着地すると、ニルス・マイトナーフレロビ・マイトナーの案内で、参加選手たちが甲板へと集まってきました。どうやら、スタートは、フリングホルニの甲板のフィールドカタパルトを使って行うようです。
『それでは、参加選手たちを御紹介しましょう。大谷さん、お願いいたします』
 実況のシャレード・ムーンに呼び出されて、カメラが甲板にいる選手たちに切り替わりました。レースの状況は、遊園地の各地にある巨大モニタに映し出されています。
「それでは、インタビューを開始したいと思いますう。エントリーナンバー1、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)選手ですう。なんとお、空も飛べる自転車で参加ですう。その美脚から繰り出される脚力に期待したいと思いますう」
「出るからには、優勝したいと思います!」
 自転車のカゴに入れたミニバッキーのぬいぐるみの頭をポンポンと叩きながら小鳥遊美羽が意気込みを語りました。
「続いてはあ、強化光翼で自ら飛びます、エントリーナンバー2番、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)選手ですう。じき御結婚のようですがあ、お嫁さんの脚を見て動揺しないでくださいねえ」
「大丈夫。特訓しました!」
 いったい何の特訓をしたのか気になるところですが、コハク・ソーロッドが自信満々で答えました。
「続いて、エントリーナンバー3番、風森巽選手ですう。こちらは、マシン・シルバージョンに婚約者のココ・カンパーニュ選手と二人乗りで参加……えっ、ただの運転手? アッシー? ええっと……、頑張ってくださ……えっ、まだ何かあるんですかあ?」
「お約束です、変身させてください。変身! とうっ!!
 素早くバイクの上でポーズをとると、風森巽が仮面ツァンダーに変身しました。おおっと、ココ・カンパーニュが感心したように拍手をします。なんだかんだで、だんだんお似合いのバカップルになりつつあるようです。
「ええっと、次行っていいでしょうかあ。エントリーナンバー4番、またカップルですかあ。ぶーっ。あっ、いいえ、こちらの話です。エントリーナンバー4番、遠野 歌菜(とおの・かな)選手&月崎 羽純(つきざき・はすみ)選手です」
「貸し切りに興味はあまりないが、レースは楽しませてもらおう」
 ワイルドペガサスの手綱を取りながら、月崎羽純が言いました。だきかかえられるようにして鞍の前の方に乗せられている遠野歌菜は、なんだか上目遣いに月崎羽純に見とれていてインタビューどころではありません。まるで、白馬の王子様を見つめるような潤んだ瞳です。
「続いて、エントリーナンバー5番、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)選手ですう。レッサーワイバーンのリューちゅんでの参加となりますう」
「今回も、面白くレースに参加するよー」
 モニタの中で勢いよく腕を突きあげるミルディア・ディスティンの姿を、観客席から和泉 真奈(いずみ・まな)がしっかりと見つめていました。
「ミルディア様は、無事スタートラインに着いたようですね。さて、私はここからしっかりとサポートさせていただきます」
 ノートパソコンを開いてコースの状態をモニタしながら、和泉真奈が無線でミルディア・ディスティンに告げました。
「うん、頼んだよー」
 和泉真奈のサポートを受けて、ミルディア・ディスティンが安心したように言いました。
「エントリーナンバー6番、前回の完走者、クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)選手ですう」
「今回は優勝を目指す!」
 前回5位の実力をさらに発展させてみせると、クリストファー・モーガンが意気込みました。乗機は、水雷龍ハイドロルクスブレードドラゴンです。
「エントリーナンバー7番、クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)選手ですう。薔薇の学舎の生徒としては、ここは負けられない戦いですよねえ」
「今回は、水に落ちる心配もないので、全力でいきます」
 小型飛空艇オイレに乗ったクリスティー・モーガンが、ホッとしているように答えました。
「続いて、エントリーナンバー8番、ルカルカ・ルー選手、エントリーナンバー9番、ダリル・ガイザック選手ですう」
「えーっと、ジェイダスさんは……、ああ、あんな所にいる。ここに来てくれればいいのに……」
「ジェイダス様に会えるのは、上位入賞者だけですよお。会えるように頑張ってくださあい」
 残念がるルカルカ・ルーに、大谷文美が言いました。
「新がつくジェイダス杯だ、心機一転、俺たちが優勝させてもらおう。それで、堂々と会えるさ」
 ダリル・ガイザックがそう言いました。
 二人は、それぞれが小型飛空艇アウラダに乗って、歩調を合わせてレースに挑む作戦のようです。
「エントリーナンバー10番は、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)選手ですう」
「ふふふふ、優勝は、このわたくししかおりませんわ。勝ちますわよ!」
 小型飛空艇ヴォルケーノに乗ったエリシア・ボックは、やる気満々です。
「続くエントリーナンバー11番は、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)選手ですう」
「ノーンの方が、おねーちゃんよりも速いんだから。頑張るよー」
 ジェットドラゴンの上で、ノーン・クリスタリアが、エリシア・ボックに負けじと言います。
「エントリーナンバー12番、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)選手ですう」
「お誘いを受けた限りは、皆様には負けません」
 小型飛空艇ヘリファルテで、御神楽舞花が思惑を秘めた瞳でコースを見つめました。
「エントリーナンバー13番は、レースクイーンから急遽参加の綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)選手&アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)ですう」
 大谷文美に名前を呼ばれて、小型飛空艇にまたがったレオタード姿の綾原さゆみが両手を挙げて歓声に応えました。
「今回もレースクイーン予定だったのに、レースの方に参加することになるなんて……。なんでこうなった?」
 まだちょっと戸惑っているように、アデリーヌ・シャントルイユが綾原さゆみに言いました。
「だって、毎回写真撮られるばっかりで飽きちゃったのよ! たまにはいいんじゃない?」
「そうは言っても、準備とかしてなかったし……」
 レーシングスーツどころか、ハイレグのワンピース水樹という姿ですから、バイク型の小型飛空艇に前傾姿勢でまたがると、結構あれな後ろ姿になります。
「気にしたってしょうがないじゃない。ガンガン行こう。おー!」
 意気あがる綾原さゆみに、事故るのだけは勘弁と、しっかりコースを確認してナビゲーターに徹しようと考えるアデリーヌ・シャントルイユでした。
「さて、エントリーナンバー14番は、なぜかパビモン トレリン(ぱびもん・とれりん)選手を連れ出してきた源 鉄心(みなもと・てっしん)選手ですう」
「前回は不覚を取ったが……。あれが実力と思われても困るからな」
「頑張るリン♪」
「あ、ああ」
 トレリンに励まされて、スレイプニルの上で源鉄心がちょっと心ない返事をしました。
 パビモンたちと一緒に参加するというのは、もともとはティー・ティー(てぃー・てぃー)の案なのですが、いったい、これに何の意味があるのでしょうか。
「エントリーナンバー15番は、パビモン リラード(ぱびもん・りらーど)選手&ティー・ティー選手です」
「ここは一つ優勝して存在感をアッピルしとかないとですよ」
「分かったリラ。俺に任せるリラ!」
 なんだかティー・ティーに乗せられて、リラードが胸を張って張り切りました。二人は、ワイルドペガサスのレガートさんに乗っています。
「エントリーナンバー16番は、なんと、前大会の優勝者、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)選手と、新しき相棒パビモン ミラボー(ぱびもん・みらぼー)選手ですう」
「ああ、わたくし、自分の才能が恐ろしいのですわ……。きっと、きっと、今回も、優勝してしまいます」
「ほんとミラ?」
 素直に、ミラボーがイコナ・ユア・クックブックに聞きました。
「ええ。けれど、大人しくしていてくださいね。わたくしの邪魔をしてはダメですわよ」
 そう言うイコナ・ユア・クックブックの方は、すでに優勝した気になっていてはしゃぎまくりでした。あまりに背中の上で騒ぐので、炎雷龍スパーキングブレードドラゴンのサラダがちょっと嫌な顔をしたぐらいです。
「さて、最後の参加者ですう。エントリーナンバー17番。スープ・ストーン(すーぷ・すとーん)選手と、パビモン ナウディ(ぱびもん・なうでぃ)選手ですう。スープ選手? あれっ、スープ選手う!」
 大谷文美が名前を呼びましたが、反応がありません。見れば、スープ・ストーンとナウディは、ふかふかベッドで仲良く寝ています。というか、これは乗り物なのでしょうか。まあ、フィールドカタパルトであれば、推進力を持たない物でも射出できますが、はっきり言って石を投げるのと同じみたいなものです。
「とりあえず、選手紹介終わりましたあ。マイクお返ししますう」