リアクション
●epilogue 2
緋桜遙遠が島の捜索を行うようになって、これで四日目となる。
三日目までは協力者が少なくなかった。だが三日、それなりの人数でたっぷりと探してそれでも、クランジΚに関係するものは、打ち上げられたその右腕しか見つからなかった。
捜索は打ち切られ、とても簡素なものながら、Κの葬儀が執り行われた。
そのときは遙遠も参列し、涙する他の参列者とともに花を海に流したものだ。
しかし、それでも遙遠は諦めきれなかった。以前、水中で自爆したファイス(あるいはΦ)というクランジがいたが爆発が小さく、本人こそ死亡したものの道連れにすべく抱きつかれた相手は一命を取り留めたという記録がある(参照)。クランジの自爆装置は水が弱点……そう言っていいのではないか。
しかもΚは生き延びようとしていた。飛び込んで必死で装置を外したのなら――可能性は、ゼロではない。
だから今日も、遙遠はΚの捜索のため魍魎島に来たのである。
(「我ながら未練がましいと思いますが……ね」)
上空から、あるいは、水に潜って、散々に探して今日もじき、日が暮れようとしている。
黒い翼をはためかせながら、遙遠は燕のように帰路に向けターンを行い、ここでふと、ある考えに至った。
(「潮に流されたとは……考えられませんか?」)
急旋回して遙遠は、潮流の先にある小島を目指した。
その小島は、魍魎島よりずっと小さい。大抵の海図に乗っていないか、乗っていても点のように描かれているに過ぎない。大波がくれば消失してしまうような場所なのだ。土地のほとんどは岩場で、鳥くらいしか住民はいなかった。
ただ、このときだけは、鳥以外の住民がいるのだった。
両脚が砕け、右手を失い、左手だけで岩にしがみつくようにして昏睡している人間が。
いや、人間ではとても無理だ。人間であれば、とうに衰弱してこときれている。特に、この状態で四日以上放置されているとあっては。
しかし機晶姫――しかもクランジなら、生存していても不思議ではなかった。
【訂正】
クランジΚ……死亡 → 生存。
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【Tears of Fate】
end
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マスターの桂木京介です。
ご参加いただきありがとうございました。
ここまで、長らくおつきあいくださりまして、ありがとうございました。
本作をもって、クランジという機晶姫が次々と出てきて戦う一連の物語はひとまずの完結とします。
もちろん、生存したNPCクランジがおり、謎も色々と残されていますが、それはまた別の機会に扱うこととし、しばらくはクランジという単語から離れてシナリオを組みたいと思っております。(生き残った彼女たちも新たな名前で新たな生き方を進めるものとし、過去にとらわれないようにする……予定です)
徹夜したり缶詰になったりとなかなか自分への負担の大きな話を続けて参りましたが、次からはもう少し楽な話にしたいと思います。シナリオガイドも短くします!……たぶん。
それでは、ここで一旦お別れと参りましょう。
いずれ新たな物語で、あなたと再会できる日を楽しみにしております。
桂木京介でした。
―履歴―
2012年3月20日:初稿/改定第二稿
2012年3月21日:改定第三稿
2012年3月26日:改定第四稿