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嫉妬にご用心!?

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嫉妬にご用心!?

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雪女との対峙

 囚われていた少女たちを救助し、急いで洞穴からの脱出を試みていた一行だが、そう簡単にはいかなかった。

 彼女たちの前に立ちはだかったのは、そう、例の白い着物を着た女性だった。

 顔を見ると、小谷 愛美だった。

 だが、以前の明るい表情の愛美とは、似ても似つかぬ顔つきをしている。

 それは、ぞっとするような冷たい表情だった。

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、愛美の姿をしたその女に話しかけた。

「貴方が例の誘拐犯ね。この前は不覚にも攫われたけど、クイーン・ヴァンガードとして、おいそれと捕まるわけにはいかないわ。攻撃するなら全力で抵抗するわよ」

 ティファナ・シュヴァルツ(てぃふぁな・しゅう゛ぁるつ)は、逸るアリアを制して、女に会話を求めた。

「あなたはいったい何者なの?」

 女はフッと笑って答えた。

「私は、山に住む雪女よ・・・・・・」

「何故私たちを捕らえたの?」

「可愛い女が邪魔だったからよ。」

「!!!」

「私、好きな男に振られたの。その男、私より可愛い女と付き合ってしまったわ。だから、私より可愛い女はみんな抹殺する!
 そう思ってたところ、ちょうど、この小谷 愛美が私と同じ考えだったから、彼女の体に憑依できたのよ」

「そんな! そうして女の子達を消して、罪に手を染めてあなたは満足できるの?」

「ええ、満足よ。私より可愛い女がみんないなくなれば、男は私に振り向いてくれるはずでしょ」

 雪女の話を聞いていた筑摩 彩(ちくま・いろどり)は、我慢しきれずにこう叫んだ。

「顔だけで女の子を選ぶなんて絶対ヤな人だよ。そんなの運命の人なんかじゃない!」

 宮坂 尤(みやさか・ゆう)も必死で説得にあたった。

「・・・・・・の可愛さが顔だけだと、そう思ってるんですか! それは違う! ・・・・・・愛美さん、いい加減目を覚ましなさい! 一生懸命で、元気いっぱいで、そんな笑顔の愛美さんが可愛いんです! 素敵なんです!」

 橘 舞(たちばな・まい)も女の考えを改めさせようとがんばる。

「そもそも、人を容姿で区別するような考えは間違いです。本当に大切なものは、顔がきれいかどうかではなく、心の清らかさです。あなたにも清らかな心はあるはずです。どうか攫った皆さんを家族の元に返してあげてください」

 しかし、彼らの説得は、雪女をますますいきり立たせるだけだった。

 ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)は、舞を制して言った。

「だめよ、こいつは説得しても意味がないわ。こうなったら戦うより仕方がなさそうね」

 こういうと、ブリジットは「レッドペッパーボム」を雪女に投げつけた!

「ボンッ」

 ゴム風船の割れる音がして、唐辛子の粉末が飛び散った。

「ゲホッゲホッ」

 雪女が咳き込む。

「今だっ!」

 燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)は装甲姿で雪女を取り押さえようと踊りかかった。

 ザイエンデは、装備した【加速ブータスー】二基を全開にして、全速力でここに駆けつけたのだ。神野 永太(じんの・えいた)も引っ張りつつ・・・・・・。

 雪女がザイエンデの体当たりを受けて転倒すると、モナルダ・ヴェロニカ(もなるだ・べろにか)はセスタスで打撃を与える。

 また、リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)は、アワナズナ・スイートピーの斬撃を飛ばして、雪女の使役する式神たちを倒していた。

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)も、雪女には轟雷閃、式神たちには乱撃ソニックブレードで攻撃を加える。

 しかし、雪女からの反撃は、剣で受け止めず、スウェーでの回避を心がけていた。

 これは、相手の攻撃が未知数だからだ。

「無理に倒す必要はないわ。怯ませたら逃げればいいのよ」

 大野木 市井(おおのぎ・いちい)は、鞭状の光条兵装と薙刀で、敵に切り込んでいった。

※ ※ ※


 雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)ジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)犬神 悟狼(いぬがみ・ごろう)の3人も、ヒーロースーツに着替えて参戦した。

 最初は悪食丸が名乗りを上げてポーズを取る。

「熱い拳で突き進む、レッドブラッド!!」

 次はジョージ。

「悪を断ち切る、シルバーブラッドッ!!」

 そして、悟狼。

「いつかは、テレビみたいに自動で変身できたりするようになってやる・・・・・・野生の弾丸、ブラックブラッドッ!!」

 最後は、全員でチーム名を声高に唱和だっ。

「血盟戦隊ジャスティスブラッド」

 ・・・・・・と、ようやく、彼らも攻撃態勢に入った。

 ジョージは火術を使って、悟狼はトミーガンで、それぞれ悪食丸の援護射撃。

 悪食丸は、彼らの援護を受けながら、敵に接近して爆炎波を放つ。

 しかし、火に弱いはずの雪女だが、これらの攻撃を受けても平然としている。

 なぜなら、雪女は愛美の身体を借りているため、熱攻撃にはそれなりに耐えられるのだ。


 鬼崎 朔(きざき・さく)は「カリンを攫った雪女憎し!」とばかり、猛攻撃を加えている。

 尼崎 里也(あまがさき・りや)や他の戦闘メンバーと連携しながら、トラップを仕掛け、雪女の捕獲を目論んでいるのだ。

 麒麟宮 文貴(きりんぐう・あやき)も、銃撃で朔をフォロー。

 さらに、鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)ジーク・スカイウインド(じーく・すかいういんど)シルヴィス・アークウインド(しるう゛ぃす・あーくういんど)レクス・アルベイル(れくす・あるべいる)も追撃に加わる。

 シア・メリシャルア(しあ・めりしゃるあ)は、アジトから出てくる式神たちを殲滅。

 一連の見事なコンビネーションだった。

 青龍寺 葉桐(せいりゅうじ・はぎり)は、全力で守備役を担おうとするが、麒麟宮 文貴に止められる。

「青龍はまだ守備には不十分だ。今は前衛のサポートをしろ! それが最大効果に繋がるから・・・・・・わかったね、葉桐? 辛いかもしれないけど聞いてくれ」

 御館様である文貴からの指示とあらば、従わざるを得ない。

 持っている火術で応戦した。

 乱戦の中、白虎洞 紗々(びゃっことう・さーしゃ)の姿は見えなかった。

 しかし、青龍寺 葉桐が雪女に追い詰められてピンチになると、「何やっとん・・・・・・やっ!!」の掛け声とともに、敵にダガー投げつけた。

 いわゆる、隠れ身を用いた不意打ち作戦である。

※ ※ ※


 戦闘は激しさを増していた。

 雪女が栂羽 りを(つがはね・りお)に氷術をかける。

 と、サバト・ネビュラスタ(さばと・ねびゅらすた)が助けに入る。

「りをに手ェ出す馬鹿がいやがったら、俺がとことん暴れちぎってやるからなーー!!」

 サバトの勢いに、雪女はりをから離れた。

 しかし、今度はベルセリア・シェローティア(べるせりあ・しぇろーてぃあ)が雪女のターゲットになった。

 すかさず、月森 刹夜(つきもり・せつや)がベルセリアのピンチを救う。

「セツヤ、無事だったのね! ベルがセツヤを助けに来たはずなのに、逆に助けてくれてありがとう。なんだかんだいっても、必ずセツヤはベルを守ってくれるね」

 戦闘中にもかかわらず、ふたりは絆を確認しあったのだ。


 朱宮 満夜(あけみや・まよ)は、戦闘中、決して氷術は使用せず、他の魔法で攻撃を加えていた。

「雪女に氷術は効かないわよね」

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、戦闘に加わったものの、とまどっていた。

 もともと、囚われていた生徒たちを逃がすためだけに戦うつもりだったが、さらに、攻撃の対象が愛美の体であることに、躊躇していたのだ。

 しかし、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)のディテクトエビルでは、明らかに「悪意を持っている者」のは愛美そのものだ。

 式神たちには爆炎波と火術の連続攻撃を浴びせて倒したものの、愛美の本体に攻撃を加えることはできなかった。

「もしかしたら、愛美が身につけている雪の結晶ブローチがカギを握っているのかもね。あれを破壊すれば・・・・・・」

 橘 恭司(たちばな・きょうじ)橘 沙耶(たちばな・さや)も同じ考えだった。

 彼らは、愛美の体についているブローチをめがけて、攻撃を加えた。

 すると、愛美に異変が起こった。

 なにかが、愛美の中でもがいている。

 出て行けという力と、出て行くまいとする意志とがぶつかっているような感じだ。

 この様子を見た朝野 未沙(あさの・みさ)は、すべてを理解した。

「わかったわ。雪女が愛美の身体を乗っ取っている間は、いくら攻撃をしてもダメね。愛美の身体が傷つくだけで、雪女にはダメージを与えられないわ。だから、雪女を愛美の身体から離すのよ」

 未沙はそういうと、危険を顧みず愛美に近づいていって、彼女をギュッと抱きしめた!

 未沙は、愛美の頭を片方の手で固定し、もう一方の手は背中に回している。

 そしてなんと、おもむろに愛美と唇を重ねたのだ!

 愛美は驚いて、未沙を突き飛ばす。

「ちょっと、やめてよ。私、そういうの興味ないから」

 ヴァッシュ・ナイトハルト(う゛ぁっしゅ・ないとはると)が、慌てて未沙を抱き起こす。

 しかし、今の反応は、明らかに本来の小谷 愛美そのものだった。

 未沙の不意打ちキスに雪女も驚いて、一瞬憑依を解いてしまったのだろう。

 だが、油断はできない。

 まだ雪女は、完全に愛美からは離れていないのだ。

 土御門 咲(みかど・さき)は、神矢の弓型光条兵器である「破魔弓・聖天浄」と、光条兵器の特質を使って、愛美の洗脳を解除しようと務めた。

 また、この間にミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、囚われた生徒たちを脱出させるべく、血路を切り開いていた。

「まぁ、捕らえるって事は殺す気は無いだろうし、それなら何とかなるよ!」

 そう考え、自ら盾になることを買って出たのである。

 ただ、大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は、囚われた生徒たちの中にパートナーのコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)がいないことに気づいた。

「ここにもコーディリアがいない。一体どこに?」

 彼の不安はマックスに達していた。

※ ※ ※


 ブローチを破壊されそうになって、雪女は慌てていた。

 この様子を見たウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)は、攻撃の手を休めて雪女に説得を試みた。

「こんな事を繰り返しても、幸せになるなんて事はできませんよ。それに、嫉妬に狂ったあなたに魅力を感じる人は誰もいません。正気に戻ってください。あなたは、こんな事をして喜ぶような人ではなかったはずです!」

 さきほどまで、あれだけ頑強に意志を曲げなかった雪女が、明らかにぐらつきを見せた。

 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)も、力ずくで倒すよりは、相手の心の隙を埋めたほうがよいと考え、説得にあたった。

「外見も大切だけど・・・・・・やはり一番大事なのは心ですよ」

 これを聞いた雪女は、ついに「ワーッ」と号泣して、愛美の身体から完全に離れると、そのまま遠くの山に飛び去っていった。

 憑依は解けたのだ。

「終わったのか?」

 雪ノ下 悪食丸ら【血盟戦隊ジャスティスブラッド】のメンバーは顔を見合わせ、そして、喜び合った。

「初勝利だ、万歳っ!!」