薔薇の学舎

リアクション

愛美の行方

　放課後、愛美が帰途についた。

　今日こそ、誘拐事件と愛美の関係を究明してやろうと目論む生徒たちは、彼女を尾行することにしたのだ。

橘　恭司（たちばな・きょうじ）と橘　沙耶（たちばな・さや）は、「隠れ身」のスキルと、纏う者の気配を殺す「ブラックコート」を身につけて、愛美の後を追った。

「もし愛美が白い着物の女性と合流したら、普通よりも少し距離を開けて尾行を続けますよ」

　恭司は後ろにいる沙耶にこう声をかけると、沙耶は目でうなずいた。

　夕凪　あざみ（ゆうなぎ・あざみ）も恭司らと同じく、隠れ身とブラックコートで愛美の後を追っていた。

　あざみの場合、超感覚も使っていたので、万全のマークといっても差し支えないだろう。

　酒杜　陽一（さかもり・よういち）は、あざみたちのような尾行技能を持っていなかったが、嵩張る重装備を外し、慎重に愛美の後を追うことにした。

「仮に愛美が悪事を働いたとしても、迂闊な攻撃は控えておこう。まずはアジトを突き止めることが先決だから」

　レイナ・ミルトリア（れいな・みるとりあ）は、パートナーのアルフォニア・ディーゼ（あるふぉにあ・でぃーぜ）に集めてもらった情報を元に、愛美を尾行していた。

　もちろん、スキルを使って隠れることは怠らない。

　レイナに同行するのはウルフィオナ・ガルム（うるふぃおな・がるむ）。

　尾行だけではなく、護衛の意味も含んでいる。

　だからもし、尾行中に犯人と遭遇してしまった場合、ふたりで挟撃できるよう打ち合わせもしていた。

　アルフォニア・ディーゼ（あるふぉにあ・でぃーぜ）は、万一のため、レイナたちのさらに後方から追いかけていった。

　このほか、如月　正悟（きさらぎ・しょうご）、レクス・アルベイル（れくす・あるべいる）、麒麟宮　文貴（きりんぐう・あやき）らも、白い着物の女性と愛美の関係を解明すべく、尾行に加わった。



　やがて、愛美がたどり着いたのは、生徒たちが睨んだとおり、やはりツァンダの洞穴だった。

　愛美は、しばらく洞穴の中でなにごとかをした後、出て行った。

「今だ！」

　生徒たちは、愛美のいなくなった隙を見計らって、洞穴に潜入した。

　･･････そこは、凍えるような氷室だった。