百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

嫉妬にご用心!?

リアクション公開中!

嫉妬にご用心!?

リアクション


動揺する生徒たち

 「どり〜むちゃん、どこいっちゃったの? さみしいよ・・・・・・どり〜むちゃんがいないだけでこんなにつらいなんて・・・・・・」

 蒼空学園の校内で、ふぇいと・たかまち(ふぇいと・たかまち)が嘆き悲しんでいる。

 彼女のパートナー、どりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)も、ご多聞にもれず、今回の美少女失踪事件の犠牲者になっているのだ。

「ふぇいとちゃん、かわいそうに。でも、ツインテールの美少女メイドとくれば、ターゲットにされるのも無理はないわね。私もメイドだけど、どりーむちゃんのかわいさはハンパじゃないからね」

 広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は、泣きじゃくるふぇいとの背中に手を当て、慰めている。

「でも、ふぇいとちゃん。ファイもね、大切なウィルがいなくなっちゃったのよ。あ、本当の名前はウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)っていうんだけど。
 ウィルちゃん、事件の真犯人をつきとめるって言って、一人で調査に行ったんだけど、それっきり帰ってこないんです〜っ! ウィルちゃんは心配いらないって言ってましたけど、すごく心配ですっ! ウィルちゃんは自覚していないですけど、すごく可愛いですから、とても不安ですっ!」

 これを聞くと、ふぇいと・たかまちは涙を拭いて、広瀬 ファイリアの顔を見上げた。

「あなたもそうだったの・・・・・・ウィルちゃん、見つかるといいね」

「ふぇいとちゃん、ありがとう。ファイ、ウィルちゃんを助けに行くですっ! ふぇいとちゃんも、どりーむちゃんが見つかるよう、お互いがんばりましょうね」

 こういい交わす二人の目には、共感の涙が光っていた。

※ ※ ※


 神童子 悠(しんどうじ・ゆう)も、パートナーの鳳凰院 輝夜(ほうおういん・かぐや)と連絡が取れなくなってから、校内の生徒たちに聞き込みを続けていた。

「あんた、この娘を見かけなかったか? 輝夜といって、髪のきれいなウィザードの女の子なんだ」

 写真を見せられた朱宮 満夜(あけみや・まよ)は、パートナーのミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)と顔を見合わせ、少しとまどった。

「ごめんなさい、私たち、イルミンスール魔法学校の者なんです・・・・・・蒼空学園では、女の子たちが次々にいなくなっているんですってね。私もそのことを聞いて、何かお役に立てればと参上したのですが」

「そうだったのか・・・・・・」

「あ、神童子さん。そういえば、白い着物を着た女性を見かけたって話なら聞きましたけど・・・・・・」

「白い着物の? そういえば、そんな女性が現れるって話、確かに聞いたなあ。何か、今回の事件と関係あるのかな? あんたはどう思うんだ?」

「うん、神童子さん。もしかしたら、その着物の女性が、放課後に女の子たちをさらっているのかもって思えて・・・・・・」

 そこへ、体育教師の酒杜 陽一(さかもり・よういち)がやってきて、彼の推理を展開した。

「白い着物の女性ってのは、もしかしたら小谷 愛美(こたに・まなみ)マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)に関係があるかもしれないな。」

「愛美さんとマリエルさんですか?」

「うん、そうなんだよ満夜さん。マリエルは愛美は、先日一緒にスキーに行ったそうなんだけど、愛美はそれ以来様子がおかしいそうなんだ。なんでも『私はかわいくない』などと言ったりしているようだぜ。
 そこから考えると、その白装束の女が、なにか愛美の気持ちとリンクしている、と推測するのも、あながち間違っていないんじゃないかな? 
 雪女伝説の伝わる山から、二人が帰った頃から白装束の女が現れる神隠しが起きた。そして、間をおかずに起こった一連の異質・・・・・・これらになにか関連があるような気がするんだ。ミハエルさんもそう思わないか?」

「そういわれてみれば、そうかも。ただ、愛美に確かめてみる必要もあるだろうな・・・・・・美少女ばかりをさらう、か。『ま、事件は深刻だけど、満夜がさらわれるほどの美少女かどうかはあえて触れないでおこう・・・・・・』」

「え、ミハエル、何か言った?」

「いやいや、何も言ってないよ! さあ、調査調査!」

※ ※ ※


 一連の失踪事件に小谷 愛美(こたに・まなみ)が絡んでいるのかも? と思ったのは、ヴァッシュ・ナイトハルト(う゛ぁっしゅ・ないとはると)も同じだった。

「あの事件に愛美が関わっている可能性がないとは言い切れないよね。意図的でないにしろさ」

 これには霧島 春美(きりしま・はるみ)も同意できた。

「春美もそう思います。愛美さんの様子は確かに変。女の子が行方不明になっているというのに、彼女が全く興味を示さないのはちょっと怪しいかも・・・・・・なにか隠しているのかしら? 春美は、絶対に愛美さんがなにかを知っていそうな気がするわ」

「やっぱりはるみんもそう思う? 杞憂ならいいけど、この事件のあらましからして関わりがあるように感じちゃうなぁ。
 レティの情報だと、愛美って娘、もともと明るい性格らしいね。でも、聞いたのとは違うこの暗さ・・・・・・そして、同時に起こる事件、気になるねぇ。
 どうみてもアレはネガティブじゃないかなぁ? 可愛い女の子に対する嫉妬みたいな・・・・・・」

 レティス・ハワード(れてぃす・はわーど)は、ヴァッシュの傍らで黙ってうなづいている。

 と、操り人形を携えた橘 カナ(たちばな・かな)が、ヴァッシュ・ナイトハルトに異を唱えた。

「かわいいって理由だけで行方不明になったとは限らないわよ。ね、福ちゃん」

 そういって操り人形に話しかけた橘 カナに、腹話術の人形が答えた。

『アタシ達モカワイイノニ、行方不明ニナッテイナイ・・・・・・トイウコトハ!』

「別の原因があるのかもしれないわね! ・・・・・・ということで、私は行方不明者の知り合いへ聞き込みに行って来まーす」

 この腹話術を見ていた一堂は、思わず苦笑してしまったが、あえて橘 カナに反論する者もいなかった。

 一人芝居においては、人形で本音を言い、自分の口でそれをフォローするのは常套手段だから・・・・・・。


 ヴァッシュ・ナイトハルト(う゛ぁっしゅ・ないとはると)は、話の流れを戻すべく、口を開いた。

「でも、愛美の様子がおかしくなったのって、いつごろ、何をきっかけにそうなったんだろうね?」

「それは、もしかしたら愛美がブローチをつけだした頃からかもしれませんね」

 そう言うのは、プリーストのエミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)

「ブローチだって?!」

「そうなの、ヴァッシュさん。雪の結晶を象ったブローチ。彼女がこれをつけだした頃から、一連の事件が起きたのよ。私も女だから、なんとなく直感でわかるの」

 エミリアのパートナー、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は感心してフォローを申し出た。

「なるほど。じゃあエミリア、一緒に愛美のことを調べよう」

「ごめん、正悟。私、女性としてこのことを確認してみたいの。だから、あえて今回は男性のあなた抜きで、私一人で調べさせてくれる? 学校から帰るときは、できるだけ人目につくようにするから」

「そ、そうか。じゃあ気をつけて。」

「何かあったら、正悟が助けてくれるって信じてるからね☆」

 パートナーにウィンクしながら、エミリア・パージカルはひとりで出て行った。

 しかし間もなく、如月 正悟は、エミリアが何者かに誘拐されたことを知るのであった。

※ ※ ※


「またひとり、被害者が増えたぜ。こうなりゃ俺たちの出番! ジャスティスブラッドとして、事件を解決に導こうぜ」

 こう息巻くのは、モンクの雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)だ。

 悪食丸は、パートナーのジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)犬神 悟狼(いぬがみ・ごろう)とともに【血盟戦隊ジャスティスブラッド】を結成し、事件解決に乗り出した。

 ジャスティスブラッドと名乗る上は、コスチュームの準備も抜かりはない。

 ジョージ・ダークペインはシルバー、犬神 悟狼はブラックと、それぞれのスーツとマスクの変身セットを持参し、3人で出動を開始した!

 さてさて、彼らの活躍はいかに! 乞うご期待!

※ ※ ※


 さてこちらは、パートナーの後光 皐月をさらわれて、怒り心頭の闇咲 阿童(やみさき・あどう)

「くそぅ! なんで皐月が誘拐されなきゃならないんだ。皐月を狙う奴は許さない! 見つけしだいぶっ殺してやる!」

 半狂乱状態の阿童に、パートナーのアーク・トライガン(あーく・とらいがん)も為す術がない。

『うー、俺様ひとりで阿童ちゃんを抑えられる自信ないゼ〜』

 しかし、大切なパートナーの消失に苦しんでいるのは大野木 市井(おおのぎ・いちい)も同じだ。

「なんで一人で行かせちまったんだ、俺は・・・・・・!」

「大野木、おまえもなのか?」

 同じ境遇の身に共感してか、阿童は少し落ち着きを取り戻して大野木 市井の話を聞くことにした。

「俺のパートナーマリオン・クーラーズ(まりおん・くーらーず)は、ひとりでこの事件を調べていたんだ。己を囮に、犯人を捕まえようとしてな。だが、逆に犯人に捕まっちまった。」

「そうだったのか・・・・・・」

「あいつ、健気だからな。剣の花嫁としての力を発揮できずに、いつも俺の足を引っ張っていると感じてた。だから、マリオンは俺の荷物になりたくないと焦っていたんだよ。全然そんなことないのにさ。今回の件は、俺がうかつだったぜ」

「そうか、俺も皐月が心配だ。お互いがんばって犯人を見つけて、ぶっ飛ばしてやろうぜ」

「おう!」

※ ※ ※


 多数の被害者を出している今回の事件に、【日本退魔師連合会】のメンバーも動き出した。

 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は、蒼空学園を取り巻く不穏な空気に、長年の退魔師としての勘が働いた。

「この気には、なにか得体の知れぬ、妖怪の存在を感じます。これは、最近立て続けに起きている美少女失踪事件と関係しているはず。咲、キミもそう思いませんか?」

「さすがはウィング君ね。私も、この嫌な空気の中に妖怪の気配を感じます」

 こう受け答えたのは、土御門 咲(みかど・さき)

 陰陽師の家系に連なる咲も、ウィングと同じような感覚を備えていたのだ。

 ウィング・ヴォルフリートは、さらにこう続ける。

「マリエルから聞いた、白い着物の女性ですが・・・・・・私はこの女性が、妖怪の正体なのではないかと思うのです」

「なるほど。マリエルは、最近愛美に元気がないことを気にしていたしね」

「そうそう、咲。それなんだけど、私はその白い着物の女性が愛美だと考えます・・・・・・正確にいうと、元気のない愛美の心の隙をついて、魔性の者が彼女に取り憑いた、と」

 これを横で聞いていた、プリーストの倉橋 和(くらはし・まどか)は、得たりとばかり、ウィングに同意した。

「それは一番ありそうな線ね。となれば、まずは情報集めよ。あたしは、風水による占いで、生徒が襲われた場所を特定するわ」

「じゃあ私のほうも、あざみに愛美の調査をお願いしましょう。あざみ、やってくれますね?」

 もちろん、夕凪 あざみ(ゆうなぎ・あざみ)は快諾した。

「わかったわ、ウィング。私の超感覚を使って愛美さんをマークしますね。私も妖怪の一種ですから、妖怪についてはかなり詳しいと自負しています。愛美さんを観察して、わかったことがあれば逐一報告しますね」

「じゃあ、私はウィング君と和ちゃんに協力するわね。みんなでがんばりましょ」

 土御門 咲のシメの一言とともに、退魔師たちは調査現場へと散っていった。