リアクション
エピローグ『始まりの、つづき』
『ドッキリ大成功!』
浮かび上がった文字を見て、茫然自失するメンバーたち。
しだいにどよめきが沸き起こってきた。
「これって……もしや……」
「ただの……古代人のイタズラなんじゃ……」
いちばん驚愕していたのは、アゾートである。
彼女は目を見開いたまま固まってしまった。
メシエがやれやれというように、肩をすくめながら言う。
「ようするに私たちは、女王器の名を騙ったマジックアイテムに、踊らされていたわけですね」
「そ、そんなっ。だってここに……」
アゾートが、古本屋で手に入れた本を取り出す。
何よりの証拠だといわんばかりに。
だがその本は、いきなり鳥のように羽ばたきだすと、遺跡の外へ向けてパタパタと飛んでいってしまった。
本を見送るアゾートの顔が朱色に染まりはじめる。唇を噛み締めながら、ぷるぷると震えていた。
騙された恥ずかしさと悔しさが、こみ上げているようだ。
「どうせ、暇を持て余したヴァルキリーが戯れに作ったのでしょう」
冷徹に言い放ったメシエの一言。
アゾートの瞳に、涙が浮かぶ。
「ま、この際どうでもいいじゃない。あたしはね。可愛い友達ができたから、それで満足よ」
アゾートの頭を撫でながら言ったのは、ニキータであった。
ニキータの言うことに偽りはなかったが、それは早とちりした若き錬金術師の、フォローという側面も大きかった。
「このカレンダーは、本当に戯れでしょうか」
優斗が、アゾートに歩み寄りながらつづける。
「僕たちは目標をもつことで、こうしてひとつになれた。きっと古代のヴァルキリーは、わざと危機感を持たせることで、人々の絆を深めようとした。そう考えられませんか」
優斗の意見に、あくまでもメシエは冷たく応える。
「どうでしょう。真相はわかりませんよ」
たしかに彼の言うとおりではある。古代人がなぜ、こんなトンデモアイテムを作ったのか。
真相は闇の中だ。
世界の救世主ムードから、一転してただのお騒がせヒロインになってしまったアゾート。彼女はうつむきながら、必死に涙をこらえていた。
そんな彼女に、加夜が優しく話しかける。
「アゾートちゃん。私も、無駄ではないと思います」
「……そうかな」
「私たちは、『世界が終わってしまうかもしれない』と思うことで、改めて未来があることの尊さを知りました。それだけでも、この場所にみんなが集まった意味はあるはずです」
そして加夜は周りを見回した。彼女の言うことに、反対するものはいない。
「そうだよ。今日は楽しかった!」
「良い思い出ができたね」
「アゾートちゃん、ありがとう!」
みんなから祝福され、アゾートの涙腺はついに崩壊する。
瞳から雫がこぼれ落ちる直前。
彼女に溜まっていた悔し涙は、いつしか、嬉し涙に変わっていた。
“世界の終わり”まで、あと??時間
お読みいただきありがとうございます。
初めての執筆だったのですが、いかがだったでしょうか。楽しんでいただけたら嬉しいです!
始まる前はメンバーが集まるかどうかすら不安だったのですが、なんとか形になり、ホっとしております。参加してくれた皆様には感謝です。
重ね重ね、ありがとうございました!
それでは。
またお会いしましょう!