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リアクション
プロローグ『終わりの、始まり』
“世界の終わり”まで、あと24時間
日付が変わったばかりの夜陰を照らすのは、朧げな月の光だけだった。
アゾート・ワルプルギスから報告を受け、遺跡の前に駆けつけた大勢のメンバーたち。
彼らは皆、世界の終わりを食い止めるため、覚悟を決めた表情になっている――。
わけでもないようだった。
「楽しみだね。スタンプラリー!」
にこやかな笑みを浮かべながら、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がそこらじゅうをはしゃぎ回る。
緊張感のかけらもない彼女の言動に、アゾートは呆れながらため息をついた。
「キミはなにか、根本的に勘違いしてる。ボクたちは、遊びにきたんじゃない」
アゾートは本を手に取ると、わかりやすく説明をはじめた。
世界の終わりを告げる『世界終焉カレンダー』の期日が、今日で切れること。カレンダーを書き換えるためには、遺跡内に散らばる『世界救済ハンコ』を集めなくてはならないこと。
説明を聞いていたルカルカは、つまらなさそうに口をすぼめた。
「えー。よくわかんなーい。そんなの、明日やればいいじゃん!」
「だから、その明日が来なくなるんだよ」
すかさず、ルカルカのパートナーであるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がたしなめる。
彼は冷静な態度でアゾートに向き直ると、知性に富んだ口調で話しかけた。
「俺に考えがある。皆で役割分担を決めよう」
「でも、時間が……」
「焦る気持ちはわかる。だが、準備を怠るとかえって手間がかかるものだ」
ダリルは「安心しろ」といわんばかりに、アゾートの頭を撫でた。
そして、楽しそうに遺跡を見上げるルカルカへ視線を送りながら続ける。
「ああいう天然娘を、野放しにするわけにはいかないだろう」
その一言が、アゾートの気持ちを決めたようだ。人員の配置にはこだわった方が良い。
彼女は遺跡内の地図が描かれたページを開くと、月明かりの下、メンバーたちの役割を振り分けていった。
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