リアクション
■■■終章
「この雪像って壊しても良いの?」
雪祭りが無事閉幕を迎える頃、ミスティと阿童が露店の会計を確認し合っていた丁度その時、ライゼがそう尋ねた。
「ええ、構いません」
無事に終わった雪祭りに安堵しながら、町役場の職員が頷く。職員はそうしてから、役場が居を構える建造物を一瞥した。
その一室では、四条町長が、娘の螢の前で静かに椅子に座っていた。壮年の彼は、指を組んで、そこに額を寄せている。
「確かにイコンの参加のおかげで、雪祭りは無事に閉幕した」
「そうね、お父さん。急な申し出だったのに、本当に有難う」
朗らかに螢がそう述べた時、町長は、僅かに目を細めて顔を上げた。
「だが、何故あのように急にスノーゴーレムが会場に紛れ込んだのか――私には分からない」
「簡単な事じゃない」
一方の螢は微笑んだまま、小首を傾げる。
「確かにイコンは細かい作業が苦手だけれど――元々は戦争用の兵器なのだから。単純に雪像制作だけしていたって、訓練になんてならないでしょう?」
「それが、蒼空学園の意思なのか?」
「まさか。一介の教育実習生に、学園の総意を任せるわけが無いじゃない」
「では、どうして――」
「それだけ就職活動は大変だって事なの。有難うね、場所を提供してくれて」
簡潔に言い切ると、微笑し螢が踵を返した。娘のそんな姿に、町長は唇を噛む。
教育実習を経たからとはいえ、教員になることが叶うとは叶わないのが、現実である。そのため螢は、様々な民間企業へ対する就職活動を、この近辺――また地球上外を問わず行っているらしい。その中で誰かが、イコンの操縦練度を上げるため、より向上させるため、彼女にスノーゴーレムを誘致させたのかもしれなかったし、あるいはそもそも、スノーゴーレムがいるその場所へ、いずれかのイコンを誘導しようとしていたのかもしれない。真相を知るのだろう螢に、けれど恐怖して、町長は何も問うことが出来ないままだった。
そんなやりとりなど一切知らないまま、何の因果なのか、入場も退場も同時刻となったキリルは、博之を一瞥しながら呟いた。
「何しに来たんだこいつは」
会場で何度か遭遇したこともあったが、加夜をはじめ可愛らしい女性を目にしても、眺めるだけで特に何をする出もなく、声すらかけずにぼんやりと雪祭りを回っていたらしい相手に対し、改めてキリルが腕を組む。
その一歩後ろを進みながら、天音が口にする。
「それにしても御神楽環菜像は、すごかったね。一体誰の案だったんだろうか。とても興味を覚えるな」
パートナーのそんな声に、その案を投書したドラゴニュートのブルーズは曖昧に視線を背ける。
その時、彼らの背後で、ライゼが盛大に雪像を壊す音が谺したのだった。
終幕の時を迎える頃、漸く降り出した雪が、全てを隠すように積もり始める。
こうして無事に開催された雪祭りは終わりを迎え、次の夜が訪れようとしていたのだった。
ご参加またはご覧頂き誠に有難うございます。密巴です。
書いている内に、前夜どころか、数日前から描写したくなってしまい、タイトルに若干内容がそぐわない点、誠に申し訳ございません。
私は雪国の出なのですが、このシナリオ案を公開させていただいた日取りは丁度、例年地元で雪祭りが開催される頃合いでした。
私自身雪像を作ったり、友人が出している露店で、物品を購入した記憶があります。
ですので、もしもこの世界で雪祭りが開催されたならば……と、妄想して生まれたシナリオガイドでした。
どうなるのだろうとワクワクしていた最中、様々なインパクトあるアクション案をご呈示いただき、誠に嬉しく思った次第です。
書きながら、私も是非、皆様のアクションが彩る雪祭りへ参加したくなってしまうような気持ちでした。
まだまだ書き慣れていない点や、至らない点、判定が下手くそな箇所など多々あるかとは思います。
ですが書かせていただいたことで、私個人は、参加できなかった今年の雪祭りを、別の意味合いで味わうことが出来たような、そんな気持ちでいっぱいです。
なお、オチはオチとしてつけたのですが、頂いたアクションを拝見しながら、ご参加いただいた皆様は、本当に優しい心根の持ち主なのだろうと勝手に考えておりました。いつかイコンが、平和的に使用される日が来るようにとの想い、私も同じように持っております。
とはいえ、ロボットそして戦闘描写等々至らない点もあると、読み返しながらも実感しております。
いつかイコンによる平和維持活動が日常化する前には、私個人も、もっと技術を磨くことが出来れば菜と考えております。
ですので今後とも、温かく見守っていただければ幸いです。
それは兎も角、さておいて。
個人的に、ご提案いただいた露店の数々、そして温泉、宣伝活動。
目にしながらついぞ食べたくなったり、旅行に出かけたくなったりしてしまいました。
さらには、ゴーレムに関してや、各種イコンについて、私自身がまだまだ不勉強であることを補っていただくようなアクションの記述をしてくださった皆様に対し、本当に感謝しても仕切れない気持ちでいっぱいです。
少しずつかも知れませんが、精進していきたい思いでいっぱいですので、なにかあればお気軽にご一報いただければ幸いです。
ではでは、ご参加並びに、リアクションをご鑑賞いただいた皆様、誠に有難うございました!
これからも頑張りたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。