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○第五試合 螢惑−六天魔王

 湯島 茜はパートナーである明けの明星 ルシファーの姿を探した。ついさっきまで一緒にいたのだが、スタッフの指示で会場の外へ出てから行方が分からない。
「まさか迷子……じゃないよね」
 ルシファーは、天使の1/3を率いて神に反乱を起こしたという史上最強にしてもっとも輝かしい存在、けれども神に敗れて地獄の氷の下に埋められ、そこから脱出してイブに林檎を食べさせ堕落させた――という悪魔なので、むしろ、
「やっぱりナンパかな……」
 それなら納得がいく。もはや諦めの境地である。

「さて、二試合目じゃ! 正々堂々、仕合おうぞ!」
 織田 信長に正々堂々と言われてもな、とちょっと茜は思った。彼女の記憶に間違いがなければ、信長こそ勝つために手段を選ばなかった男――のような気がする。今は生憎、女らしいが。
 ここは一つ慎重に――と、茜は螢惑をフィールドに出した。
「ファイッ!」
 信長は自信満々の笑みを浮かべている。何を考えているか、そこから読み取ることはできない。ある意味、究極のポーカーフェイスかもしれない。
「ファイッ!」
 必殺技はもう決勝まで使えない――なるべく距離を取ったほうがいいかもね。
「いい加減、戦え!!」
 大鋸が怒鳴った。
「あ、はいっ!」
 茜は咄嗟にフレイムスロワーを構えさせた。イコプラのプラスチックをも溶かす威力がある。だが、
「遅い」
 表情はそのままに、ちょっぴり邪悪さをトッピングし、六天魔王は空裂刀を螢惑の胴を薙ぎ払い、すれ違いざまにくるりと向きを変え、背から袈裟懸けに斬った。
『六天魔王の空裂刀が続けざまに炸裂! 螢惑、敗れる!』
 展開のあまりの速さに、茜はぽかんとしたまま動けなかった。
「どうした、貴様はその程度で倒れるイコラー(イコプラバトラーの略)ではないはずだ!」
 客席から声が飛んだ。
 ルシファーが、その辺でナンパした女性の肩を抱いて立っている。
「……い」
「どうした?」
「遅いんだってば!!」
 茜の命令で、螢惑のフレイムスロワーがルシファーへと向けられた。

  ×螢惑−六天魔王○


○第六試合 コームラント・デトネイター−シュヴァルツ・カイザー・ピングイーン

「優勝はこの私、“海京の弾幕ガール”(自称)葛葉杏とこの『コームラント・デトネイター』が頂くわ!」
 杏が高らかに宣言する。重火器で武装されたコームラント・デトネイターは、ベースとなった本来のコームラントよりもずっと重量が増している。
 一方のシュヴァルツ・カイザー・ピングイーン。本来のイコンは人型にも変形できるが、今はこのダイバーモデルで戦っている。
「ファイッ!」
 大鋸の掛け声と共に、
『コームラントがライフルを撃った! ピングイーン、避ける! 続けてミサイル! これはビームキャノンで迎え撃つ!』
 初手以外、全く同じ攻撃を二体は繰り返した。
「フェル! 気合と根性だよ!!」
 あまり参考にならない応援を十七夜 リオは叫んだ。しかしフェルクレールト・フリューゲルは、素直に「了解」と呟く。
 フェルクレールトは距離を取り、コームラント・デトネイターのミサイルより早く引き金を引かせた。結果、ミサイルはコームラント・デトネイターに近い場所で爆発が続き、
『コームラントが倒れた! 審判が確かめる!』
「間接部分がダメージを受けすぎて、動かなくなっている。続行不可能、ピングイーンの勝ちだ!」
 大鋸が高らかに宣言した。
「くっ、私の腕もまだまだってことね……」
 杏は手を差し出した。フェルクレールトはしばしそれを眺めていたが、リオから「握り返すんだよ!」と言われ、その通りにした。
「私に勝ったんだから、あなたが優勝してよね。優勝した人に負けたなら、言い訳も成り立つし」
「……まあ、そのつもり」
 あんまりやる気のないフェルクレールトであった。

  ×コームラント・デトネイター−シュヴァルツ・カイザー・ピングイーン○