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リアクション
○第十三試合 コームラントカスタム−ネレイド
「この参加人数だと優勝までは五試合……。えーっと、攻撃が当たる確率が1/3だから……ブツブツ……」
「一試合のポイント期待値は1.66……必殺技をあーして、こーして……そうか……必殺技最後に持って来れば防御一回得するわ!」
「いや待ってよ、そうなるとこちらのダメージが……」
「えっ、もう時間!? ちょっと待って! まだ計算が……」
「何やってるんだニャ?」
ハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)は、コンクリート モモ(こんくりーと・もも)の後ろ姿を欠伸混じりに見送った。
『この試合には解説として特別ゲストを呼んでいる』
『あ……どうも……。和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)です……。恐縮です』
“ネレイド”の最終チェックをしていた和泉 猛(いずみ・たける)は、危うく機体の腕をちょん切りそうになった。
「あいつ、何をしているんだ?」
絵梨奈は猛の妹である。どうやら応援に来てくれたらしいのだが……。
『あの、イコプラを売店で買ったらスタッフの人に声をかけられて、いつの間にかここに座っていました。ちなみに買ったのは、【アルマイン・ブレイバー】型です。改造して、僕のビーゾルと同じにしたいと思っています。見た目はあまり変わりませんけど』
『そなたは和泉選手の妹だったな。何か意見はあるか?』
『あの……イコプラは初心者なので詳しいことは分からないので……』
『そうか。見たところ、ベースはアンズータイプで特徴的なドリルを工具で使う電動ドリルに取り替えているな。少し荒業だ』
『は、反則ですか?』
『いや、問題ない。材質も少し変えているようだ。色が違う。金属パーツか……少し重いかもしれないな』
猛はうんうんと頷いた。自分の拘りポイントを分かってもらえるのは、嬉しいことである。正直言えば、優勝よりこの改造を施した技術力を見てもらいたかった。
『おっと、そんなことを言っている間に試合開始だ。大鋸は容赦ないな』
「時間が足りねえんだよ! おら、ファイッ!」
『おっと、いきなり“コームラントカスタム”の20ミリレーザーバルカン!』
『あ、でも避けましたよ!』
『ネレイドはコロージョン・グレネード!』
『当たりました! 勝ちですか?』
『動けなくなったところをネレイド、パイルバンカーで攻撃! しかし、コームラントも防ぐ!』
『ああっ、惜しい!』
『コームラントカスタム、ノイズ・グレネード!』
『見ていられません!』
『畳み掛けるように大型ビームキャノン!』
『食らえとか言ってますよ!』
「うるせえ解説だな! 勝者、コームラントカスタム!」
大鋸の宣言に、会場が沸く。
猛は嘆息した。どうやら改造が災いし、本来の機動力を出せなかったらしい。
「まだまだ、改良の余地があるな……」
これをイコンの整備と設計に生かせればと考えながら、猛は吹き飛んだネレイドの頭部を拾おうとした。
「ニャ?」
――ウサギの被り物をした巨大なネコと目が合った。
「ニャ、ニャー! 楽しい!」
「ちょ、それ俺のネレイド!」
頭部を転がしながら駆け出すギルティを、猛は慌てて追いかけた。捕まえるのに十分かかった。
○コームラントカスタム−ネレイド×
○第十四試合 ナグルファル−雷火
『せっかくなので、和泉選手にはこのまま次の試合も解説を手伝ってもらおうと思う』
『あ……よろしく』
ギルティを追い掛け回してすっかりくたびれた猛は、どうでもよさそうな返事をした。手の中にネレイドの頭がある。
『次の試合はハイナ・ウィルソン選手の“雷火”と、流浪のイコン仮面選手の“ナグルファル”だ』
『いやあれ……魔鎧だろう? どう見ても。いいのか?』
『本人は仮面と言い張っている。問題ない』
本当にいいのか? と猛は首を傾げた。
斎賀 昌毅(さいが・まさき)はパートナーのカスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)を魔鎧として装着し、二人で一人の流浪のイコン仮面として参加していた。
装着されているカスケードは、人間体は筋骨粒々の偉丈夫だが、鎧化後の姿は人間大のガンメタリックなイーグリット型である。イコプラ代わりに作られ捨てられたという、悲しい過去がある。
故にイコプラは好きではないのだが、昌毅がどうしてもと言うので、こうして参加した。
『ハイナ・ウィルソン選手の雷火は見たところ、これといった改造はされていないようだが……待てよ』
『分かったか。刀身が金属パーツに置き換えられている。あれなら本当に切れそうだ。ナグルファルは、気をつけた方がいいな』
「わっちのイコプラは切り捨てソーリーでありんす!」
雷火がデモンストレーションとばかりに、ばっさり唐竹割りをしてみせた。
『ナグルファルは、大型キャノン砲ばかり六門も積んであるが、あれ、機動性はどうなっているんだ?』
『人のことを言えるのか?』
『……』
「準備はいいか? ファイッ!」
「先手必勝でありんす!」
雷火が間合いを詰める。その瞬間、ナグルファルの大型キャノン砲が全門火を噴いた。
『これは凄いぞ! 弾幕で雷火が見えないほどだ!』
「ヒット!」
ダメージを受けた雷火は様子を伺った。ナグルファルが動かないのを見て、ハイナは再び雷火を近づかせた。
「近づかせる前に撃てば問題なし!」
『大型キャノン砲が二度発射された! ダブルヒット! 雷火、動けない!』
「マイガーッ! でありんす!」
「三ポイント先取。ナグルファル、二回戦進出!」
思いもよらぬ雷火のストレート負けに会場が沸く。
「確かに……この大会、荒れてきたな……」
辻永 翔がぽつりと呟いた。
○ナグルファル−雷火×
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