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リアクション
〜 段取り6 ・ 休憩こそ真の戦場だ! 〜
「ふぁ〜、ミュージカルって言ったからもうちょっと華やかかと思ってたけど、迫力あったの」
「翠、ヒーローショー見てみたいって言うから来ては見たけど……まさか、またやらかしたりはしないわよね…?」
前半の感想を述べながら、うずうずしているパートナー
及川 翠(おいかわ・みどり)の姿に危険なものを感じてミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が注釈を入れる
何となく【やらかす】事に心覚えがあるのか、その言葉にビクッとなる翠がぶんぶんと首を振る
「まさかぁ〜、悪役は気になるけど変態さんはいないみたいだし、やったりなんかしないもの!
お姉ちゃんこそ、偉そうな事言っておいて人のこと言えない結果になったりして」
「ば、馬鹿な事言わないの!……そもそも、こんなステージにカワイイもふもふなんていないから……大丈夫、うん」
全否定より、安全確認の様に自らに語りかけるミリア
どちらの性分も前科も知っている徳永 瑠璃(とくなが・るり)は苦笑しながら言い合いを見守るのみである
とはいえ、序盤の迫力に観衆のテンションが上がったのは確かなので、物販ブースはてんてこ舞いになり
とりわけ霧島 春美(きりしま・はるみ)のヒーローグッズコーナーは多くの子供でごった返している
「はーい、いらっしゃいいらっしゃい!おせんに、キャラメル、ヒーローグッズはいかが?」
「春美さん〜お菓子系の補充追加、置いておきますね〜」
「ありがと!いやぁ〜前にも増してたいそうな賑わいっぷりで参った参った」
たこ焼きの出店から手伝いに来ているフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)が商品の補充を持ってきたのに礼を言い
春美は注文に殺到する子供たちの対応に戻る、その中の一人がじーっと春美をみつめて口を開いた
「お姉ちゃん?まえもお店やってなかった?好きなの?」
「あら?良く見れば【ウルトラニャンコ】グッズを買ってくれたお嬢ちゃんじゃない?また来てくれたんだ」
探偵を名乗るだけあって記憶力は人並み以上ゆえに、子供のこともすぐ思い出す
棚に並んでいるヒーローグッズに触れながら、少女の問いに答える春美
「あはは、お姉さんもヒーロー好きだよー、かっこいいしねー、
ん、ああいうふうになりたいってキミ達に思ってもらえれば、彼らも本望でしょ?」
「お姉ちゃんはヒーローになりたいって思わないの?」
「う〜ん、お姉ちゃんは橋渡しかな、こうやってお嬢ちゃんと彼等を繋ぐものを持ってもらって応援して貰うでしょ?
「キミらは彼らに、自分の未来…夢を占う
彼らも見本となるべく、正しく正直に強く、優しくなければと思う、ファンタスティック……どっちにとってもいいことよ
だから、これを持ってまたピンチの時に応援してあげて、はい」
サービス用のバッジを受け取りながら、赤面する少女……この前一生懸命声を出したことを思い出したらしい
その様子にクスリとわらってウィンクする春美
「ここまで来て恥ずかしがってても仕方ないよ、大きな声で応援したげ
て自分の目標になりそうなヒーロー達を、ね?」
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「にゃ〜!にゃにゃにゃ!」
「アデリーヌさん、飲み物買って来ました」
「ありがとう、綾耶さん、あさにゃんさん。はい、これで気持ちを落ち着けてください」
ちび あさにゃん(ちび・あさにゃん)と結崎 綾耶(ゆうざき・あや)販売エリアから買ってきたドリンクを受け取り
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は目の前で泣いている子供に渡してあげる
心配そうに見つめる、その子の兄と目が合うと微笑みながら泣いている子に再び話しかけた
「いっぱい戦いがあってびっくりしたと思いますけど、楽しくなるのはこれからですよ
今、怖い気持ちに負けちゃったら、それが見られなくなりますよ?もうちょっと頑張って見てみませんか?」
見慣れない音響と照明によって派手に演出された戦闘に、やっぱり怯えてしまう子というのはいるもので
客席係の大半はもっぱらその対応に追われてしまってる中
前回の経験もあるアデリーヌが中心になって、上手い事子供たちの面倒を見てくれているらしい
会場時は拾得物扱いをされてしまった【お人形】こと、ちびあさにゃんだが今回ばかりはその容姿が幸いして
子供たちの心を和ましていてくれるらしい
「今回は女の子向けのような印象を持って来てる女の子もいますからね」
「ええ、でも可愛くて怖くないだけじゃ、この物語……このお話の意味はありませんから」
綾耶の言葉にそう答えた後、ようやく落ち着いた少女と傍らの兄の頭を撫でて語りかける
「もし、今までのお話を見て怖いと思ったのなら……その気持ちを忘れないでくださいね
その気持ちは、今お話の中でみなさんの為に戦ってくれた人達も同じなんですよ
だから、そんな気持ちを持っている人が頑張っている姿を見てあげてください、お話はこれからですよ。それに……」
「にゃにゃにゃ〜!にゃ〜!」
「この子が『怖くなくなるまで一緒に見ていてあげる』って言ってくれてます」
自分のの肩で語りかける、ちびあさにゃんの言葉を伝えるアデリーヌ、筆談を使わずとも気持ちはわかる
少女はニッコリ微笑み兄の手をとって再び席に座るのだった
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「皆さんお疲れ様です!休憩用の一品を用意しましたよ〜!」
伏見 さくら(ふしみ・さくら)の用意したケータリングに、楽屋で控えている面々からおお〜…と感嘆の声が上がる
運動用の携帯食や糖分や水分補給用のものだけでなく、薔薇のティーセット&高級フルーツセットまで揃っている
まだ出演待ちのまま緊張を続けなければいけない者には、リラックスするには十分なもので
女性陣を中心に賑わっているなか、斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)の頭を撫でながら、さくらは彼女に労いの言葉をかける
「お疲れ様!すごい良かったよハツネちゃん」
「さくらちゃん、楽しんでくれた?」
「もちろん!やっぱり夢を与えるお仕事って素敵だよね!後半も頑張ってね!私もスタッフの一員として頑張るから!」
さくらの言葉に嬉しそうに頷くハツネ
その傍らでは安芸宮 和輝(あきみや・かずき)にドリンクを渡しながら
彼の衣装のチェックをするパートナークレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)の姿があった
「有りものから組み合わせた衣装ですけど……大丈夫でしょうか?
張り切り過ぎると強度が心配なので気をつけてくださいね」
「ありがとう、後半のキーとなるポジションの一員だから頑張りますよ!」
後半登場組だけでなく、前半から出た者でも衣装の変更がある者もいる
新規の衣装の為、手製のレプリカで前半をこなしていた武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)がスーツの具合を確かめていた
「……何とか持ちそうだな、これを渡された時は灯が体調不良になったと思ったが、魔鎧モードの新調とはな
でも、おかげで後半はカッコよく盛り上げる事が出来そうだ、ありがとう」
「【魔鎧「六式」】への成長が思った以上に魔鎧の姿に変化をもたらしてみたいで
ヒーローショーの後にヒーローと握手会、写真撮影もあるから頑張りましょう!」
頼もしい相棒……龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)の励ましに力強く頷く牙竜
だが、内心いつものアレ……魔鎧になると彼女の服が脱げる仕様だけが変わってなかったので
ステージに出る時、うっかりお子様の前でそれをやってしまわないかが彼の気がかりなのである
そんな風、休憩と共にキャストが着々と準備を進める中、裏方スタッフは次の準備の為に舞台裏を奔走する
「強度チェックオッケー!後は転換装置のボルトとレーザーワイヤーの確認か……演奏側の方はどうよ?」
「アンプとミキサーの調整と再確認は済んでるよ、セットリストの紙もさっき予備もらった
後はワイヤレスマイクのバッテリーチェックがまだ戻ってきてない」
「確認はあっきーに頼んでる、もうすぐあんたの相棒が持ってくるはずだって」
新谷 衛(しんたに・まもる)と琳 鳳明(りん・ほうめい)がステージと楽器関係の最終チェックを済ませる中
衛の言葉通り、藤谷 天樹(ふじたに・あまぎ)がマイクを持ってやって来るのが見える
同じくして特殊効果で出た破片の掃除を済ませた桜月 綾乃(さくらづき・あやの)が戻ってくる
「ステージのチェック完了だよ、落ち物も破片ももうないはず」
「おういえ!あとは舞台監督殿のキュー待ちってとこだな」
拳をぐっと握って、衛がやる気を漲らせる中
楽屋控えの方から大勢のおお〜という歓声の声が聞こえ、鳳明達と揃って声の方を見る
そこには【光のプリンセス】に相応しいドレスに身を包んだ桜井 静香(さくらい・しずか)の姿があった
その反応に、衣装を用意したジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)が褒めろといわんばかりに、こっそりと胸を張るのが見え
思わず笑いを必死に堪える衛である
そんな自分を見ての歓声に顔を赤くする静香であるが、そこは校長という身の上ゆえの度胸か流石に緊張の色は見えず
感心する雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)、むしろその分上乗せで隣の少女の方が固まっている様子である
「大丈夫よ、あなたはあなたでさっきみたいにやればいいんだから」
「そうだぜヤクモ!何かあったら俺達がいる、舞台上だって仲間がいる!なんの心配もいらないって!」
「……はい」
後半の展開に緊張している瀬織津 ヤクモ(せおりつ・やくも)に雅羅だけでなく大谷地 康之(おおやち・やすゆき)も励ましの言葉をかける
胸に手を当て深呼吸するそんな彼女の前に、さくらがハーブティーのカップを差し出した
「はい、セントジョーンズワートのハーブティー。ハーッピー・ハーブって言うくらいだからリラックス効果バッチリ!
大丈夫、貴方なら出来るよ……ほら、笑って!皆に夢を与えてきて」
「………はい!」
口をつけたハーブの香りとともに、さくらの言葉がヤクモの不安感をやさしく包み込む
その様子を見ながら、雅羅は後半の開始時刻を確認しインカムに向かって通信を送る
「こちら雅羅……各自スタンバイは確認したわ、予定通り3分後に後編開始!音響と照明、準備よろしく!」
ヘッドホンから聞こえる様々な『了解』の返答とともに、目の前の衛も大きく頷く
いよいよ大舞台……後編の幕開けであった
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