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校長室

【十二の星の華SP】女王候補の舞

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【十二の星の華SP】女王候補の舞
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リアクション

「牡牛座はイルミンスール生の、ホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)です」
 イルミンスールの講師アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が、冷徹な声で言った。
「そう、ミー達の後輩のホイップは牡牛座の十二星華だったぜ。ずっと台風を封印してたらしい。星杖シナモンスティックで封印してるのがバレるとヤバイから黙ってたのかもしれないけどな」
 イルミンスールの新田 実(にった・みのる)も声を上げる。
 ホイップが十二星華であることは、今では沢山の生徒の知るところとなっており、彼女に関しての情報は次々と生徒達から語られる。
「ボクに説明させてください」
 しかし、イルミンスールの エル・ウィンド(える・うぃんど)が口を開いた途端、他の生徒達は言葉を止めた。
「彼女は、十二星華の1人、牡牛座(アルデバラン)のホイップ・アルデバランです。星杖シナモンスティックを所有しており、その杖で5000年前の巨大台風を封印していました。その杖は、封印する時にランダムで何かの運が悪くなり、封印しているものが大きければ大きいほど不幸になります」
 それから、とエルは言葉を付け加える。
「彼女は、とても金運が悪いです」
「借金が119,500Gもあるようだ」
 イルミンスールのクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)のパートナーマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)が言葉を付け加える。
 更に。
「どうやらこの、クロセルの悪友エル・ウィンドさんに好意を持っているようだ。その好意の程が友人としてなのか恋人候補としてなのかは定かではないが」
 突然のマナの言葉に、エルは軽く動揺するも、軽さは表さず真剣な眼をアーデルハイトに向ける。
「ホイップ様はティセラの襲撃に遭い危機的状況に陥いりました。星杖シナモンスティックが奪われ巨大台風の封印が解かれた際には、自らを石化させ再封印したのです」
 ホワイト・カラー(ほわいと・からー)は、メモリープロジェクターでホイップが石化している映像を皆に見せるのだった。
「なるほどのう……良い子のようじゃが」
 アーデルハイトは腕を組んで考え込む。
「蟹座と牡羊座、乙女座については、情報提供者はいないようだな」
 フォルクスがアンケート用紙をめくりながら言った。
「牡羊座(シェルタン)は……確か、黒羊郷で神として崇められている女性だとかいう噂が流れておるな」
 アーデルハイトが言い、フォルクスがメモをとる。
「乙女座については、十二星華を名乗る『謎の少女』がいるようです。髪型はストレートロングで、スタイルが良いらしいです。チャクラム状の光条兵器を使用して戦うそうです」
 蒼空学園の源 紗那(みなもと・しゃな)がそう発言をする。
「山羊座を助ける義務があるって言ってたんだよねぇ」
 パートナーのプリムラ・ヘリオトロープ(ぷりむら・へりおとろーぷ)が、おっとりと微笑みを浮かべる。
「乙女座(ヴァルゴ)は芸者だという噂もあるのう。自称で十二星華で名乗る者もいるようじゃから、星剣の威力など具体的な十二星華であることが証明できるような行為を目撃しておらねば、自称の可能性が高いのう。必要以上に振り回されぬようにの」
 アーデルハイトの言葉に、紗那とプリムラは首を縦に振った。
 ――チャクラム状の光条兵器を使用する自称乙女座の十二星華は、プリムラが扮した姿なのだが……彼女達には助けたい人がいて、まだ目的があるため、この会議の場では真実を話すことは出来なかった。
「聞いた話ですが、山羊座(カプリコーン)は蒼空学園の転入生の、リフル・シルヴェリア(りふる・しるう゛ぇりあ)です」
 エフェメラがそう発言をする。
「その娘のことなら、俺も知っている」
 ヒラニプラ出身のハレルヤ・ドヴェルグ(はれるや・どう゛ぇるぐ)が説明を始める。
「古代シャンバラ史にやたら詳しい娘だ。何者かに洗脳されてクイーン・ヴァンガードを襲撃していた」
 リフル絡みの事件には、教導団員でパートナーのラッキー・スター(らっきー・すたー)も関わっていたが、今日は同席していない。
 ラッキーのことを快く思っていないハレルヤとしては、願ったりでもある。
 ハレルヤは思い出しながら、リフルの印象を語る。
「まぁ、洗脳されてたとしても、元の本人も無口で無愛想な奴で何を考えてるかさっぱり分からない。とても女王候補に仕立てられる様な奴には見えないがな」
「それに彼女は、十二星華じゃなくなったそうですの。星剣を破壊されると十二星華は普通の花嫁になる様ですのね」
 エフェメラがそう言葉を続け、アーデルハイトが頷く。
「十二星華の強さは星剣にあるということじゃな。……となると……ううむ」
 アーデルハイトはなにやら深く考え込むがこの場ではそれ以上何も言わなかった。
「双子座(ミトゥナ)の名前は、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)です」
 イルミンスールのナナ・ノルデン(なな・のるでん)は、双子座の情報の提供をする。
「海賊と共に行動しており、双子の姉の仇というココ・カンパーニュへの復讐に燃えています。星剣は、星拳ジュエル・ブレイカーです」
「海賊に復讐か……」
 呻くアーデルハイトに頷いて、ナナは言葉を続ける。
「復讐対象のココさんは星拳エレメント・ブレイカーの所持者ですが、パートナーの剣の花嫁の目撃情報はなく現在調査中です。二つの星拳は元々は一つの双星拳スター・ブレイカーだったようですが、何故分離したのかは不明。星剣の特性は、魔法等を吸収して自らの属性攻撃に変換できるようです」
「ココさんは地球人である事から、十二星華のパートナーとなった者も星剣が使えるものと推測されるね」
 パートナーのズィーベンが付け加えていく。
「ボク達が知っている十二星華では、ティセラとパッフェルは女王器が狙いで、アルディミアクは復讐が最優先のようだよ」
「過去はどうだか知らぬが、現在は思惑も行動もバラバラのようじゃの。ティセラ、パッフェル、セイニィは組んでいると考えてよいのかのう」
 アーデルハイトがそう感想を漏らす。
「あと射手座(サジタリウス)に関しても情報提供者はいるようじゃが……公にはしにくい情報のようじゃから、後ほど個別に話を聞いて、可能な限り資料にまとめさせてもらおうと思う」
 アンケート用紙を確認しながらアーデルハイトはそう言った。
 端の席で、神代 明日香(かみしろ・あすか)がほっと息をつく。
 射手座の少女が関わった事件で、その存在を知った明日香だけれど、本人が人に知られることを酷く嫌がっていたため、公にはしたくないと思っていた。
 しかし、イルミンスールの女王擁立というより、女王候補の親衛隊であるクイーン・ヴァンガードという組織への疑問から明日香は信頼の置ける人物に、射手座の少女のことを知ってほしいと思っていた。
「ティセラがヴァイシャリー家を訪れたということですし……隠しておけない状況に陥っているかもしれませんけれどね」
 パートナーのノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)がそっと明日香に語りかけ、明日香はこくりと頷いた。
 射手座――サジタリウスの少女は、百合園生だ。
 彼女の正体は蒼空学園の御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は知っている。
 星剣は所持しているようだが、力は封印しているようだ。
 環菜はこの力を強制的に解かせようとしていた。
 サジタリウス本人は、今以上の戦火に巻き込まれることを望まず、周囲に十二星華であることを秘密にしておきたいとのこと。パートナーにも話していないそうだ。
 つまりある程度は戦火に巻き込まれている人物……。
 明日香は彼女のことをどこかで見たことがあった。
「それだけじゃないぜ」
 イルミンスールの緋桜 ケイ(ひおう・けい)が声を上げる。
「先日蒼空学園で行われた、ミルザムの式典で、謎の十二星華と会ったんだ」
「あたしもそれを話しに来た」
 メイコ・雷動(めいこ・らいどう)が待ちわびたかのように発言を始める。
「名前は不明。外見は21、2歳。緑色のポニーテール女で毒に強いって話だった。十二星華が13人ってなんだよ! まあ、リフルが星鎌を失って十二星華じゃなくなったから結局12人だけどな」
 メイコは眉に皺を寄せて、歯噛みする。
「扱う武器は十二星華と同じく、光条兵器。形状は蛇腹剣で、鞭のように自在に操って戦う。彼女自身も高い戦闘能力を持っていて、学生数人を相手にしてもものともしなかったぜ。『毒』に対して高い抵抗力も持ってる」
 ケイは冷静に説明を続けていく。
「山羊座のリフルを操ってたんだ。この蛇使い座(サビク)が蒼空学園で起こっていた、クイーン・ヴァンガード襲撃事件の真犯人だ」
 ケイが説明を終えた後、メイコが再び口を開く。
「蛇腹剣の光条兵器を持ってミルザムを襲って、女王器を要求してたよ。失敗したけど女王像の左腕は持って行った。多分ティセラの仲間だ。くっそー! 次は勝つ!」
「うぬ……ティセラ側がもう1人か」
 アーデルハイトも眉間に皺を寄せる。
「ちなみに、ボクっ子であったな。平然と人を傷つけるところが恐ろしくもあったな」
 ケイのパートナー悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が補足をしていく。
「狙いもやはり女王器で、女王像も集めているようであったぞ」
 一旦言葉を切った後、カナタは考え込むアーデルハイトと、飽きて足をばたつかせ始めたエリザベートに言う。
「わらわたちは、これまで十二星華は十二名だと思っておったが、ここにきて十二星華が十二名以上いる可能性も出てきたのだ。もっと情報を集めねばなるまい」
「そうじゃのう……」
 と、アーデルハイトは大きく息をついた。
「ほぅ、緑色のポニーテール、ボクっ子ですか」
 アーデルハイトの側の席では、絵師として立候補した薔薇学の明智 珠輝(あけち・たまき)が、熱心にイラストを描いている。
「十二星華を目撃された方には後ほど詳しい外見をお尋ねします。で、蛇使い座はこのような感じでしょうか?」
 珠輝が皆に見せた紙には、ポニーテールの可愛らしい女性のラフが描かれている。
「髪質とかはわかるかな? ふんわり、とかさらり、とか……」
 珠輝のパートナーリア・ヴェリー(りあ・べりー)が、メイコとケイに尋ねる。
「髪質まではちょっと」
「細かい点はあとで説明するけど、まあそんなカンジかな」
 そう答えるメイコとケイに。
「それではまず尻の形を細かに……!」
 当たり前のように珠輝が言う。
「いや、それより先に、胸の開きぐあ……っ」
 ドゴスッ
「尻や胸は関係ないだろーが、真面目にやれっ!」
 皆の反応より早く、リアの空中飛び膝蹴りが珠輝に決まった。
「イラストは後回しじゃ……」
 アーデルハイトは頭を抱えた。
「うぐ……ふふふ。大腿部を先にお聞きすべきでしたね」
 蹴り飛ばされて床に這い蹲りながらも、珠輝は紙にペンを走らせていく。