空京

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帰ってきた絆

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年を忘れる宴2

 時々、世の中にはおかしな人がいる。
 清良川 エリス(きよらかわ・えりす)をらんちき騒ぎの生け贄に捧げるティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)なんかもその一人だった。
「わ、わわっ、う、うう、うち、こないな話し聞いとりまへんえー!」
 エリスはティアに服をはぎ取られながらそんな叫び声をあげた。
 それもそのはずである。
 エリスは、今日は単なる年忘れの忘年会に過ぎないと聞いていたのだ。
 それがいざ現場にやって来てみると、いきなりティアによる拘束を受けたのだから、それは文句の一つも言いたくなる。
 しかしティア本人はさほどその事を気にしておらず、やはり彼女はおきまりのように下品な笑みを浮かべていた。
「ふふふふ、大人しくしなさいませ、エリス。あなたはあたしを楽しませるために生け贄になる運命なのよ〜!」
「そんな運命いやどすー! た、助けてくだせぇー!」
 いくら悲鳴をあげても、助けは来ない。
 それどころかますますティアの行動はゲスさを増していった。
「ほらほら皆さん、ぜひどうぞ。帯を一回引っ張る事に5000円のお値打ち価格ですわよ。寄ってらっしゃい見てらっしゃい、さーさー、いらっしゃいませー!」
「にゃ、ななな、なにしてるんどすかー!」
 いつの間にか、ティアは宴会に参加していたお客さんの呼び込みを始めていた。
 そのおかげでぞくぞくと変態(もとい、宴会の参加者たち)が集まってくる。
 すっかり帯が緩められたエリスは、何やら言葉では言い表せないようなエロティックな展開にもつれこまれていた。
「あーれーっ! お、お助けぇぇ! うち、こんなん嫌どすぅー!」
「追加料金を支払って下さればもっと先まででもOKですわよ? あちらに別室も用意してますわ〜。うふふふ」
「うふふって、うふふって何があぁぁぁぁ!」
 叫び声をあげるエリスを無理矢理縛りつけ、エリスそのままずるずる引きずっていった。
 その笑顔は、実にすがすがしい顔であった。

 大盛り上がりの現場に、ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)たちはいた。
 そこにはセス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)水嶋 一樹(みずしま・かずき)たちの姿もあった。
 彼らの多くはもちろんお酒を飲んでおり、中にはすっかり出来上がって酔いしれている者もいる。
 さすがに泥酔というほどまでは泥沼に落ちる者もいなかったが、それでも時に悪ふざけが始まるわけで……。
「パンパカパーン! 第一回、ちきちきイケメン脱がし大会ー! イエーイ!」
 悪酔いしたリナリエッタが、お酒片手に近くのイケメンを裸にしにかかった。
「リナ……それ、セクハラ……です」
 リナリエッタのパートナーである南西風 こち(やまじ・こち)がぼそっと言う。
 しかし、リナリエッタはそんなこと知ったこっちゃなかった。
「もう、こちったら。こういうのはスキンシップって言うのよ、スキンシップ」
「スキンシップ?」
「そう、男と女がくんずほずれつ、お互いの理解を深め合うために裸になるの。こういうのを日本では裸の付き合いって言うのよ」
「裸の付き合い……」
 こちはそう呟いて、こくっと頷いた。
 まあもちろん、リナリエッタの言うことはあまりにも曲解に過ぎると言えるが……。
 それでもまあお互いに楽しければそれでも良いのかもしれなかった。
 一方で、セスやヤジロたちはお酒を飲み交わしたり、食べ物を食べたりと楽しんでいる。
「いやー、たまにはこういうのもいいな!」
 そんなことを言うヤジロ。
 セスはそれに向かって小さく微笑んだ。
「そうですね。たまには、こういうのもパラミタらしいかもしれません」
「なにすましちゃってんだよ、セス! ほら、もう一杯もう一杯!」
 ヤジロはセスにじゃんじゃん酒を渡すが、自分もぐびぐびと飲む。
 そのおかげで、いつの間にか彼女はすっかり酔っ払いだ。ふらふらとして、顔を真っ赤にしていた。
「ぬふ〜……セスぅ……俺、もう眠くなってきたぁ……」
「でしょうね。それだけ騒げば」
 セスはそう言って微笑む。
 実はセスはこうした状況を悪く思ってはいなかった。
 酔っ払ってとはいえ、ヤジロが――いや、アイリが、自分に甘えてもたれかかってくるのは素晴らしい。
 その首にセスがつい先ほどつけた牙の痕があるのはご愛敬として、ともあれアイリはふにゃふにゃとセスの肩に倒れかかった。
「むぅ……セスぅ……いつまでも……一緒にいようなぁ……」
 と、そんなことを呟くアイリ。
 彼女をそっと見ながら、セスはこう言って答えた。
「……そうですね。いつまでも一緒に」
 酔っ払いたちの隅っこで、そんなセスたちの甘い空間が作られていた。

 ちょうどそんな頃、一樹たちは酒にテンションが上がってしまっている。
「うわぁ! 百合子!? いったいどうしたんだそんなに酔っ払って!」
 一樹が驚いているのは、パートナーの西野 百合子(にしの・ゆりこ)の痴態であった。
 百合子はすっかり酔っ払い、ぐでんぐでんの上機嫌になっている。
 そのせいか服も乱れ、なんだか陽気でぽわーっとしていた。
「あれー? おにーちゃん……? あたし、いったい……ふにゃぁ……」
「わぁ、バカ! こんなところで服なんて脱ぐな!」
 一樹が顔を真っ赤にして止めようとしても、百合子はいっこうに止まる気配がない。
 むしろあおられたように、笑顔でゆっくりと一つ一つボタンを外していっていた。
「むー……だってお部屋じゃお着替えしないと……」
「ここは部屋じゃねえ!」
 とかなんとか言いながらも……。
 しかし、一樹はたらーっと鼻血を出して妹の痴態に見とれてしまっていた。
「う、うういかん! し、しかし百合子が可愛すぎるのがいけないんだ! さすが俺の妹天使! ふ、ふつくしい……」
 先ほどまでは兄としての理性で止めようとしていたのだが、すっかりそのリミッターも切れてしまったらしい。
 彼はカメラを片手にぐふふふと笑いながら百合子の半裸姿を写真に収めていた。
 パシャ! ジー……。パシャ! ジー……。
 そんな一樹を見て、ひそひそと噂する周りの野次馬たち。
「ち、違う! 違うんだ! これは兄としての妹観察記録を付けなければという義務が俺に強制発生しただけで――おい、誰がロリコン犯罪者だ! ちがっ……やめて! 通報はやめてぇぇぇ!」
 誰が呼んだのか、通報の現場に警備員たちがやって来た。
 もちろん、その目的は一樹である。彼は抵抗もむなしく、がっしと両腕を掴まれた。
「さあ、話は向こうで聞こうか」
「この時期になると変態も多くてなぁ……」
「俺は無実なんだぁぁぁぁ!」
 ズルズルと、引きずられてゆく一樹である。
 それを見やりながら――
「あれー……おにーちゃん、楽しそうだなぁ……」
 のほほんと、百合子は言った。

「わーい、お酒だー! 忘年会だー!」
 そう言って叫ぶのは契約者のレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)だった。
 彼女はまだ成人には達していない。
 しかしそれでもこの忘年会に参加出来たのは、お酒ではないが酔うことは出来るというまか不思議なジュースがあるということを聞いたからだった。そのジュースであれば、お酒を飲んだことにはならないので未成年でも大丈夫である。
 そんなわけで、お酒さながらのジュースを片手に乾杯するレキ。
 それをミア・マハ(みあ・まは)が呆れながら見ていた。
「まったく、いくらジュースとはいえ飲み過ぎには注意じゃぞ。だいたい、そのジュースは酔っ払うんじゃからな!」
「まあまあ、ミアってば固いこと言わないの」
 すでに顔を赤くしたレキが、ミアを聞き分けのない子みたいになだめた。
「ボクってばほら、実はナイスバティでしょ? だから、こういう趣向はどうかな? みんな野球拳するの!」
「んなっ! そなた、本気か! ここにはエロ河童どももたくさんおるんじゃぞ!」
「にゃははは、気にしなーい!」
 どうやらレキはとっくに理性など吹っ飛んでしまっているらしい。
 楽しそうに笑いながら、彼女はみんなのもとに向かっていった。
「あ、こらレキ! 待つんじゃー!」
 ミアはそれを追いかける。
 結果――なぜか、野球拳をするのはミアになってしまっていた。
「…………レキにやらせるわけにはいかんからの。野球拳はわらわが相手じゃ!」
 男どもからはぶーぶーと野次が飛ぶ。
 もっとボンキュッボンな女がいいだの、レキちゃんを出せだの、色々と騒がしかった。
「やかましいっ! 大体、女の魅力はそれだけではないわ! 見よ! わらわのナーイスバディな姿を! どうじゃどうじゃ!?」
 しかしまあ、その姿はどう見ても幼児体型のそれなわけで。
 男たちのやれやれといったため息がこぼれていた。