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リアクション
今回、クィクモにおいては、クレア中尉を司令に戦部少尉が参謀長の役割を担うとすると、兵(実動部隊)を率いる各部隊長は基本的には武官的な位置付けにあると言えようか。クィクモにおける教導団司令部である。
戦部はリース・バーロット(りーす・ばーろっと)を用い、クィクモ軍閥とのやり取りを行った。それも踏まえ、今後の方針を決めねばならない。また、各方面への部隊を編成すべく、会議を持つことになるが、各部隊長との間との連絡も行い、教導団内での意見の事前調整やすり合わせを入念に行った。これによってクィクモ軍閥との間での食い違い等が起こることもなく、会議まで滞りなく進めることが可能になった。各決定に対しての上層部の許可取りは、ロンデハイネ中佐宛てに行ってある。
会議には参席しないが、それ以外の少尉らが、司令部周りの兵を扱い各々の任務に移る。彼ら少尉組。
国境戦での石化を治療中の大岡少尉を見舞ってきた、金住、比島少尉に曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)少尉の姿も見える。一条アリーセ少尉は、一つ前に見たように医療関係を統括すべくクィクモに残る。それに、金住少尉はクィクモ滞在における北の歩哨警戒を、司令部に申し出てきたのであった。クィクモ着までの先行部隊を率いた金住少尉であるが、今度はクィクモを少し出たところに駐屯し警戒を行うことになる。
クィクモ側もこれを受け入れ、教導団との合同の国境警備隊として、北部の警戒を強化することとした。北の都市ヒクーロ方面に、飛龍の目撃情報もあるのだ。油断ならないことである。
「どうなることでしょう。ともあれ、自分はここに残り、警戒にあたることとなったであります! お二人は?」
「本当にその通りですね。この状況、どうなることか」と比島は、金住の言っていた飛龍の件などに張り詰めた様子で考えていたが、金住の問いには、「自身はミカヅキジマへ向かうこととなった」と答える。
「そうだねぇ」曖浜はどこかのんびりしているように見えるが? 彼も「ミカヅキジマへ」と答える。
「難しいことはよくわからんが、道中の力仕事ならなんとか。まあ、兵を拠点に移動させるってことだから、その船の警備にあたることになったよ」と曖浜は続ける。
「とは言え、」比島も加えて言う。「新星は全隊をクレセントベースへ向けるべく編成を行っており、主力部隊は彼らや海軍が担うのかと見受けますけど。今回、クィクモ軍閥からの兵が我々教導団に加わるそうですから、そちらと共に、訓練を行いつつ向かうよう指示を受けました。彼らと同じように、自分には自分のやるべきことがあるということであります」
「オレも、クィクモの人たちと同じ船で行くことになるよ」と曖浜。「新星だらけの船で行くのもがちがちだし、龍雷の筏というのもね……窮屈そうだ」
「ですね。海軍は海軍で新たに編成が行われていますし。クィクモは旧軍閥とも言われていたように、現在の我々教導団ほど規律ある軍のようには見えませんでしたし、気安そうな人たちでしたよ。それだけに訓練は必要なようでありますが」
「仲良くなれそうならありがたいね。でもオレは、ミカヅキジマにいるっていう猫の方が……」
「猫?」
「い、いや。何でもない。そっか、比島少尉は第四師団の猫の兵(ニャオリ族)を連れているんだ?」
「そうであります。師団の中では、古参の兵ですよ」
「一緒の船でよかった。もふもふ……」
「……」
「そう言えば他に、この出兵から師団の兵となった湖賊はどうしたのでありましょうか?」金住は問う。
「一隻ミカヅキジマへ出すみたいだけど、頭さんは当面、こっちに残るとか? 誰が船を率いるんだろうねえ」
「自分たちの他に、少尉がいたでありましょうか?」
ともあれ、金住は敬礼し、
「比島少尉。曖浜少尉。では、自分はクィクモにて任務をに就きますが、無事を祈るであります!」
比島は同じく敬礼で、曖浜もそれに倣いゆるい敬礼で返した。
「ああ。本当に、皆が無事に帰れるといいねえ」
「というわけで、あたしが湖賊の船を率いることになったみたいなのね」
夏野 夢見(なつの・ゆめみ)は、クィクモの港から釣り糸を垂らしながら呟いた。
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