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リアクション
【◎6―7・最終局面】
「みんなやめて! その猿の手には、どんな攻撃もきかないの!」
亜美の叫びにも構わず、みんなは攻撃を休めない。
レキが陽動射撃で猿の手の注意を逸らせたところへ、ミアがサンダーブラストを放ち。
空に逃れようとしたところへ今度はミューレリアのサンダーブラストが炸裂する。
「猿の手が出してくる、白い光には気をつけて! 幻覚に囚われて逃げられなくなるよ!」
静香もときおり支持を出して、援護を欠かさない。
そうした攻防を眺める亜璃珠は、わずかに不安そうに隣のラズィーヤへと問いかける。
「ですけどラズィーヤさん。勝算はあるんですの? 相手は精神攻撃を駆使してくる上に、どんな攻撃もきかないんですのよ?」
「ええ。わたくしも、そのあたりがずっと不安でした。けれど……ようやく弱点を見つけましたわ」
「えっ……ほ、本当……ですか?」
あきらかに勝算ありといった表情のラズィーヤに、タァヘルが驚きの声を出し。
亜美も信じられないといった顔つきになる。どうやっても壊せないからこそ、自分は死を受け入れたのだから。
「攻撃を続けてくださいですわ! そうすれば、すべてがわかります!!」
「ふぅん……なんにせよ。俺は、俺のできることをするだけだ」
淳二は妖刀村雨丸を手に、チェインスマイトで切り込んでいく。
切った感触は淳二の手に残っていたが、しかし猿の手はなんら変化なくまた空に浮きあがり始める。
けれど上空に逃げられる前に、朱音のサイコキネシスが猿の手の動きを鈍らせ。
そこを美羽が、その身に似合わぬ刃渡り2メートルの大剣型光条兵器を、猿の手めがけて勢いよく振り下ろした。それは、美羽のスカートがまくれあがり、屋上が突き破れそうなほどの衝撃を生み出したが。
猿の手はすぐにするりと抜け出して、また懲りずに亜美へと特攻してくる。
しかしそこは傍で控えていたアイリスが、ソニックブレードの勢いを利用して後ろへと吹き飛ばした。
そして、エンデを魔鎧として装着していた小夜子がそれを待ち構えていた。
猿の手は、やられてばかりいられないとばかりに掌から白い光を放出してくる。静香がわずかに息をのんだが、小夜子は予想済みだった。
猿の手の飛ぶ先にいたのは、エンデがスキルに持つミラージュの幻で。
本当の小夜子はすでに後ろに回っていた。猿の手はしぶとく光を放ち続けていたが、小夜子はリーブラランジェリーと虹のタリスマンを身につけて、しかもスキルの肉体の完成とマインドシールドをも行使して万全を整えていた。
おかげで精神攻撃は通じぬまま、ブラインドナイブスによる攻撃が猿の手を切り裂いた。
するとついに、変化が起きた。
猿の手についていた黒い爪が、はがれ落ちた。
かと思うと、生えていた紅い毛も抜け落ちて。
黒ずんだ肉の部分も、ぼたりぼたりと落ちて。
しだいに元のミイラ化した猿の手に戻っていき。
最後には、風に煽られただけでたやすく風化し、いともあっさりと消滅した。
むしろ早く決着がついたことで、全員が「もう終わり?」という思いを抱くほどだった。
「ふふっ。そもそも本当に無敵だというなら、猿の手は攻撃を避ける必要なんかないですわよね? つまりアレは単純に、やせがまんを、していただけなんですわ」
「そんな……そんな、簡単なことだったの……?」
「眼に見えてダメージがなければ、てっきり無敵と勘違いしても仕方ありませんけどね。要は……諦めてしまうか、そうでないかの違いがでただけですわ」
そう言ってラズィーヤが亜美に、勝ち誇ったような笑みを浮かべると。
「やっぱりワタシは、アナタが嫌いよ」
「そうですの? わたくしは、そんなに嫌いではないのですけれどね」
「嘘ばっかり」
「本当ですわよ。無事でいてくれて、本当に、よかったですわ」
そう言って今度は心からの笑みを向けてきたラズィーヤに、
かあぁぁ……と、頬を染める亜美であった。