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リアクション
■ ワタシヲタベテ ■
外は雪。
こんな日は家でのんびり過ごすのが一番だ。
何かお菓子でも作ろうかと、仁科 姫月(にしな・ひめき)は冷蔵庫を開けた。
真っ先に目に付いたのは、バレンタインで作ったチョコレートの余り。
「あ、これ……」
姫月の脳裏に成田 樹彦(なりた・たつひこ)にチョコレートを渡したときの事が蘇った。
一昨年までのチョコも本命だったなら、もっと味わえば良かった。
そう言ってくれた樹彦の言葉が、とても嬉しかった。
でもやっぱり、一昨年までのチョコレートは義理だと思われて、普通に食べられていたのだと思うとちょっと残念だ。
一昨年だって姫月が渡したチョコレートは、本命も本命、思いっきり本気のバレンタインチョコレートだったのだから。
仄かに寂しさを味わった姫月だったが、そこでひらめいた。
「よし、ここは今年のとは別に、一昨年の分まで味わってもらうチョコを作ろう!」
そうしたら、一昨年の分の姫月の気持ちもちゃんと樹彦に伝わってくれるだろうから。
「チョコかぁ……どんなのが良いかな」
今年のと同じにならないように、と考えるとなかなかいいのが思いつかない。
姫月はインターネットで手作りチョコレートをいろいろと検索してみることにした。
市販のチョコレートにデコレーションするもの、トリュフ、チョコレートケーキ等々、様々なバレンタインチョコレートがあるけれど、樹彦が喜んでくれるのはどれだろう。
姫月は悩みながら検索結果を見ていったが……。
「え、うそ……こんなのがあるなんて……」
モニターに表れたバレンタインチョコレートに息を呑む。
(でもこれなら……うん、兄貴も喜んで食べてくれるよね)
インパクトもあるし……と姫月は小さく頷くと、早速準備に取りかかった。
「30分ぐらいしたら私の部屋に来てね!」
姫月にそう言われた樹彦は、30分きっかり後に部屋に向かった。
ノックするとすぐに、入ってと姫月の返事がかえってくる。
何の疑いもなく部屋に入った樹彦だったが……部屋にいる姫月を見た途端、驚愕に固まった。
姫月は裸にリボンだけを巻いただけの姿で、口にチョコレートをくわえて樹彦を見ている。
何かを期待する目つきはきっと、このままチョコレートを食べて欲しいということなのだろう。そして当然、食べて欲しいのはチョコレートだけではなさそうだ。
(さあ兄貴、チョコと一緒に私の唇を味わって。そのあとは、私の体も味わってね)
そう訴えかけてくる姫月の視線を捉えると、樹彦は後ろ手に部屋のドアを閉めて姫月のもとへと歩み寄るのだった。