空京

校長室

【選択の絆】夏休みの絆!

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【選択の絆】夏休みの絆!

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第1章 夏だ! 湖だ! バカンスだ! 13

「お待たせ」
 ドリンクを手にエーベルハルト・ノイマン(えーべるはると・のいまん)が戻ってきた。秋月 茜(あきづき・あかね)はゆっくりと体を起こしてこれを受け取ると、喉ごしを楽しむように味わって飲んだ。
「いかがです? 急いで持ってきたのですが」
「冷たいわよ、すっごく冷たい」
「ほっ。良かった。あっ! 日焼け止め、もう一度塗っておきましょうか」
「………………あのさぁ」
「はい?」
 すでに手の平に日焼けクリームを広げている。動きは機敏で仕事が速い、だからこそ余計に思った―――
「もう少しのんびりしたら?」
「忙しない……ですか?」
「忙しないわね。こっちまで落ち着かないわ」
 ゆったり寝そべってストローに口つけて。は変わらずにリラックスモードだ。
「そういえば、あれね」
 ふと気がついたが言う。
「貴方とあの子達って……どこか似てるわね」
「あの子達?」
 視線の先にはポムクルさん、彼らはせっせと屋台の手伝いをしていた。
「似ている……でしょうか」
「似てるわよ、奉仕が好きって所が」
「……なるほど」
 確かに不思議と近いものは感じるけれど……奉仕好き……ですか。
「お暑くありませんか? 扇ぎましょう」
「そうね。お願い」
「はい」
 大きな扇子でゆっくりと。
 奉仕が大好きなエーベルハルトは今日もの笑顔のために、御身と知恵を捧げているのだった。


「うぉおお海だ! 幼女だ! ちみっこだ!!」
 のっけから変態宣言をした刀村 一(とうむら・かず)だったが、彼の変態はこんなものではない。
「ポムクルちゃん、いや、ポムクルさん? どっちでもいいさぁーおじちゃんとあそぼうぜぇーい! ……あでででで」
 見るに耐えられなくてリン・リーリン(りん・りーりん)が止めた。
「もうっ! 恥ずかしいことはしないでほしいのっ!」
「りんちゃん、痛い、ごめんごめん、耳がなくなっちゃうよ、千切れちゃうよ」
 本当に千切れたらリンはどんな反応を見せるだろう。慌てちゃうかな? 泣いちゃうかな? くぅ〜それも見てみたいっ!
 しかも何と「ご褒美シーン」はまだまだ続く!
 ポムクルさんたちに操縦テクニックを教えてあげるの、と意気込むリンは、その実演の為に刀村の背中に乗るという。しかも―――
「カズちゃんの背中はリンのなのっ! ポムクルちゃんたちは他の人の背中に乗るといいのっ!」
 リンポムクルさんによる背中の取り合い。幼女ちみっこの板挟み。これはもう……もう―――
「あ〜〜〜、一体俺はどうしたら良いんだー!」
 抱きしめたい! でも「手を出さず愛でること」が自身のモットー。
 ペロペロしたい! でも「手を出さず愛でること」が自身のモットー。
 信念と欲望がせめぎ合う。
 変態の夏は非常に熱い。


 訪れた先は楽園だった。
 湖畔で遊ぶはポムクルさんたち。輪になったり駆け回ったり、屋台の手伝いや建設作業を手伝っている者もいる。
 そんな彼らを見ているだけで―――
「はわ……はわわわわ……」
 退紅 海松(あらぞめ・みる)は大興奮だった。
「小さな男の子が…………一杯! ヘブン! あいらぶしょた!」
 音も立てずに背後に回り、息を整えようとしても、もはや無意味。ハァハァハァハァと荒い鼻息のままどうにか笑顔を取り繕って―――
「私も一緒に遊びたいなー♪」
「あそぶー! いっしょにあそぶのだー!」
「はぅっ!」
 なんて眩しい瞳なのっ! これぞショタ! 純粋さこそが正義! 命!
「可愛らしいですわー♪」
 抱き上げて頬を押し当てて……あぁ、ぷにぷにのほっぺ……食べてしまいたい。
「あら、ほっぺにゴミがついてますわよ。私が舐め取ってあげますわ」
 荒ぶる吐息を必死に抑えて幼子の頬にそっと舌を―――
「ぅ…………」
「はいはい、そこまで」
 あと2mm、たった2mmだったのに。フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)に頭を掴まれて阻まれた。
「どうして?」
「それを聞きますか」
 変態だからですよ。毎度毎度まったく。
「もういっそ通報して罪を償って貰った方が世のため人のためではないでしょうか」
「そうですね、あの可愛さはもはや罪ですよね」
「………………」
 つっこむ事すら面倒になってきた。ジト目で見つめてみても
ちっとも気付かないし。
「え? 何か教えて欲しいんですの? そうですわね……私なら被服と美術についてなら、ある程度お教えできますわよ?」
 コスプレと同人被服と美術と言い換えるとは。間違いではないが、物は言い様だ。
「そのためには……そうですわ♪ まずはお体を測る必要がありますの♪ さぁさぁ、あちらでシましょう♪ 報酬は勿論―――」
「アウトー!」
 後頭部を蹴り飛ばしてやった。どさくさに紛れて抱きついたりできないように側面気味に蹴り倒した。
「痛いよぅ」
「そうだね、イタいね」
 痛がってはいるが、瞳はキラキラしたままだ。
 愛でたい海松とストッパーフェブルウスの攻防はまだまだまだまだ続きそうだ。


「すげえ! 姉ちゃん! すげえ広い湖! すげえ!」
 バカ丸出し……いやピュアだと言っておこう。ユキヒロ・シラトリ(ゆきひろ・しらとり)は頭がプア―――いや違う、ピュアなのだ。
「俺水着持ってるし、入っていいよな!」
「もちろん。あ、でもちゃんと準備運動はするのよ、海で溺れたら本当に危ないんだから」
「よっしゃ! 任せろ!」
「ふふ。準備運動で怪我しないでね」
 ユキノ・シラトリ(ゆきの・しらとり)は微笑んだ。今日も今日とてユキヒロは元気だ。彼と過ごす初めての夏、いい思い出が作れそう♪
「よーし終わりっ! 行くぜ湖! 待ってろ太陽!」
「では私も……って、ユキヒロっ! 空飛んじゃ水遊びできないでしょ!」
 ツバメ型の翼を広げて湖の上を飛んでいる。でもそれじゃ水着の意味が! 準備体操の意義が!
「だって羽が邪魔で泳げないし。それにほら、湖に自分の影が映ったりして面白いぜ!」
「そうですね―――って、ズルいです! 自分ばっかり!」
 宙返りをしたり滑空したり。しばらく気ままに飛んだ後に、ユキヒロポムクルさんたちを浅瀬に呼んだ。
「ん? 水浴びするの? ならみんなで水の掛け合いっこでもしようかな?」
 足だけ浸かっているだけで冷たくて気持ちいい。水を浴びればもっと涼しくて。
 まるで家族になったみたいにユキヒロポムクルさんとも笑顔を交わした。
 今日というこの日一日は、笑顔あふれる楽しい夏の思い出となったに違いない。


「あ……あの……」
 恥じらいながらに佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)が言う。身に纏うは『危険な水着』、布地が異様に少ないエロ水着である。ビキニタイプだが紐はどれも細く、生地もまるでランジェリーのように薄い。色は淡い黄色をしているが、遠目に見ればまるで下着に見えることだろう。
 そんなものを着ておきながら牡丹は大いに恥ずかしがっていた。
「だって……こんなに派手な感じになるなんて……」
「いいじゃん、いいじゃん、似合ってるよ〜、牡丹」
 パートナーのレナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)が笑って言った。フォローしてくれているのは分かるのだが、そんな事を言われても―――
「似合ってしまってはダメなんですっ! 私そんな女じゃ……っていうかポムクルさんっ!」
 わらわらわら。気付けばポムクルさんたちが集まってきていて……なんだろう、純粋な瞳が眩しくて痛かった。
「僕が連れてきたんだよ、一緒に遊びたくて」
「それは良いですけど今は――――――へっ?」
 両腕で胸を隠してうずくまった時だった。
 パンツの紐が破けて―――
 ぷりん♪ 柔らかそうなお尻の双丘が露わになった。
「きゃあぁああああ!!!」
「きゃー!」
「きゃー!」
「きゃー!」
「きゃー!」
「きゃー!」
 初めは牡丹で、続いたのはポムクルさんだ。彼らは楽しそうに叫び声をマネて遊んでいた。目の前の「お色気ショット」よりも「叫び声」の方をチョイスするなんて……やはりまだまだ小人なようだ。
「そうそう、誰も気にしないって〜」
「私が気にするんですっ!」
 見向きもされないもの悔しかったが、とにかく今は恥ずかしさでいっぱいだった。
「最悪……」
 暑い夏の日、ヴァイシャリー。
 とびっきりの思い出が彼女の手に転がってきたようだ。