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リアクション
水上闘技大会第一試合(1/2)
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第一試合 出場選手
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)
ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)
吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)
ヴォルフガング・モーツァルト(う゛ぉるふがんぐ・もーつぁると)
花柳 雛(はなやぎ・ひな)
真蛹 縁(まさなぎ・ゆかり)
十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)
ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)
一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)
スウェル・アルト(すうぇる・あると)
アンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)
マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)
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円形をしたその闘技場の広さはどれほどか、と訊かれれば野球グラウンドと同じ程と答えるのが適当だろう。
意外にもそこそこに広さはある。
これならば存分にルール無用のバトルが繰り広げられる事だろう。
出場者たちは3つのブロックに分けられ、そこで勝ち残った者だけが決勝戦へと駒を進めることができる。
円の外に出た時点で失格、飛行していても円の直径範囲を越えると失格だ。
バトルスタイルやどんな武器を使用するかも重要だが、何よりも選手たちを苦しめるのはやはり揺れる足場であろうか。
広さはあれど、そこは水上。どうしても足場は揺れる。
いつものスタイルで戦うべきか、それとも揺れる足場を考慮した戦い方を選ぶべきか。
出場する選手たちの多くがそこに頭を悩ませる中、彼らの勝負所は入場時(リングイン)だった。
『カーニバル・オブ・チャンピオンズ』を発動しての登場により、会場の空気が瞬時に変わった。
観客にとっては敵ではない、それでも圧倒的な威圧感を感じさせるには十分だったようだ。
今日の主役は自分だと言わんばかりに涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は『凶器用パイプ椅子』を片手に、堂々たる風格で入場を果たした。
「The Champ is here !」
プロとして魅せる試合を。
せっかくのバトルロイヤル、しかもたくさんの観客たちがこの試合を見守ってくれている。
技の美しさはもちろん、ド派手な技の数々で観客たちを魅了してくれようぞ。
「さぁさぁさあさあ! 命知らずはかかって来い!」
「涼介兄ぃがノリノリだぁ」
何かと彼に付いて行っては、同じに悪のりをするヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)も、今日ばかりは付き合わないようで。
手には『ヘビーマシンピストル』が二丁。今回の大会はバトルロイヤル形式。ならばサシでの戦いよりも対多数戦術の方が適していると考えたようだ。
「ち、違うよっ、決してプロレスコスが嫌だったからって訳じゃないんだよっ」
神聖なるロングタイツをコスと言っている時点で本音は微塵にも隠せてはいない。もちろん男女の違いはあるのだが。
模擬弾で気絶させてから丁寧にゆっくりと湖に沈めてゆくという温情たっぷりな方法で勝ち残っていった彼女だが、予期せぬハプニングに巻き込まれて湖に落下してしまう。
予期せぬハプニング、突然の地盤崩壊は、わずか5分後のことであった。
「♪陽気に俺に尻をなめろ♪」
反吐が出そうな歌詞を口ずさみながらに入場してくるは吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)、自称イケメンの巨漢ハゲである。
水着姿でヴァイオリンをかき鳴らすヴォルフガング・モーツァルト(う゛ぉるふがんぐ・もーつぁると)を引き連れて、自作の曲を歌い現れた。
「♪文句を言っても仕方がないから俺の尻をなめろ♪
♪ブツブツ言っても仕方がないから俺の尻をなめろ♪
♪双丘のふもとの落とし穴♪
♪スメルホールをなめて掘れ♪」
バトルスタイルは相撲レスラー。まわし姿は異様に似合っているが、何しろ曲がイタダケナイ。
『体当たり』を駆使した突進も、隙を突いた足払いも技としては実に見事だが、ここで披露した曲のおかげで、残念ながら最後まで彼らが歓声を浴びる事はなかったという。
彼ら以上に、いやそれも良い意味で目立っていたのは真蛹 縁(まさなぎ・ゆかり)とヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)の2人だった。
「おーっほっほっほっほー!! さぁ、皆さま、美しいわたくしをとんとご覧あれ!!」
と高笑いでモデル歩きな真蛹が目立つのは当然か。
挑発するようで妙な魅了がある眼差しと微笑みは会場の男共の視線を程良く集めていた。
一方でパートナーの花柳 雛(はなやぎ・ひな)はといえば、
「えええ!? 真蛹さん!! どうして私が前なんですか!? 私まで同類に思われるじゃないですか!」
なんて恥ずかしがっていたが、オドオドからの半泣きウルウル瞳な様は、実に何とも十二分に愛らしかった。
もう一方の注目の的、ヨルディアも恥じらう様で人目を引ければ良かったのだが、残念ながら彼女の武器は肌の露出だった。
それはもはや裸同然。性的サービスが売りの接客業でしか使われないような鎧を、幼い顔立ちをした美少女が身につけているとなれば……漢ならばオートフォーカスがフォーマット。
まぁ欲を言えば、もう少し胸が大きければ言うこと無し、なのだが―――
「誰かしら? ちっぱいだなんて仰ったのは」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
笑顔の奥に殺気が垣間見えて、男共は一斉に口を噤んだ。
消される前に目に焼き付けよう。ロリ巨乳も好ましいが純正ロリは文句なしに美味。
観客だけでなく、出場している男共もどうやら変態ばかりだったようで、目の前で攻撃を躊躇う男共をヨルディアは容易く『群青の覆い手』で押し流して排してゆくのだった。
「ってなんで真蛹さんまで私を狙うんですかぁ! 一緒に戦ってくれたっていいじゃないですか! うひゃあ!?」
相変わらずの半泣きで雛が駆け逃げてゆく。それでも十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)は眉一つ動かさずに精神統一に努めていた。
全身の毛が逆立つような、それでいて心は水面よりも静かに澄んでいる。
自身に施した『潜在解放』の効力を肌で感じながらに宵一は闘技場の中央に向かい駆け出していった。
対イコン用の神剣『神狩りの剣』をラヴェイジャーの奥義で振れば、わずか一振りで10名以上の選手が場外へと吹き飛んだ。
『 アナイアレーション』の一撃は周囲の選手たちに恐怖とより一層の警戒心を植え付けたようだ。
そうして敵を蹴散らしながらに辿り着いた中央部には馬場 正子(ばんば・しょうこ)が待ち構えていた。
「なるほど、やはり強者はこの場所を嗅ぎつけるか」
彼女の彫刻像のような肢体が目の前に現れたと思った次の瞬間、巨大な拳が目前に迫ってきていた。
「ぐっ……」
間一髪かわしたが、拳風で頬が切れた。
「ほぉ、あれを避けるか。ならば!」
「っ!!!」
宵一の体は上体を反らしたままに宙に浮いている。それでも『女神の右手』の防御力を信じて拳を繰り出した。
初めの衝突音は宵一の籠手が巨拳は軌道を逸らした音、そして直後の音は勢い余った正子の巨拳が闘技場の床部を粉砕した音だった。