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リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 11
イーダフェルト2号の動きは鈍くなる。
だがマンドレイクは健在、つまりは無数のゴーストイコンが動いているということになる。
「他の方々のおかげでここまで体力を温存できました。
ですから、今こそ力を発揮するべき時です」
ゴーストイコンが集まっている場所に、おそろしい嵐が巻き起こった。
暴風の渦はゴーストイコンを強引に動かし、お互いの機体同士がぶつかりあい、ダメージを負う。
嵐を引き起こしたザーヴィスチは更に深く敵陣へと斬り込む。
一閃、また一閃とまたも暴風のようにゴーストイコンたちを撃墜、翻弄していく富永 佐那(とみなが・さな)。
「直上、二機です!」
エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)の叫びに即応し、佐那はスラスターを吹かして更に更に前進。
ゴーストイコンもそれに追いすがる。
「……振り返り様に、斬る!」
高周波ブレードの柄を握り、振り向き様に一閃。
前へ向けていた推進力も上手く刀身に乗せることで、二機同時斬りに成功する。
「邪魔するなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
マンドレイクが喚き散らす。
「邪魔をしているのはお前の方だろうに」
ゴスホーク、そして柊 真司(ひいらぎ・しんじ)とヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)がゴーストイコンを全て無視して、マンドレイクへと爆進。
味方のフォローを受けながらも、ゴーストイコンを次々と抜き去っていく。
風すら置き去りにしそうなスピード。だがマンドレイクも逃走するそぶりは見せない。
「世界を変える男の根性はそこそこか」
スピードだけで逃げないものかと一瞬思ったが、すぐに頭を切り替えた真司は停止して武器を構える。
レーザービットを展開して、ビーム砲台を遠隔操作することで攻撃するが、
マンドレイクもこれを全弾かわす。
真司は直にライフルに持ち替えて、自ら照準を合わせてマンドレイクへ放つ。
「あだらなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い!!」
ライフルの弾道を見切った上で前進、真司に向かっていく。
(……好都合だな)
マンドレイクの不用意な特攻を好機と判断し、真司が覚醒を行い通常以上のスピードでマンドレイクに接近する。
機体が変わったかのようなスピートの違いに、本能的に危機を感じたマンドレイクがゴーストイコンを自分の周りへと呼び寄せる。
「あくびがでるな」
当然、駆けつける前に真司がマンドレイクに肉薄し神武刀・布都御霊を超大型剣へと変形、
時間を一切かけずにマンドレイクへと斬り下ろす。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
マンドレイクが悲鳴を上げる。
「まだ生きてますね、あの方」
「咄嗟に避けて直撃を免れたのか……根性だけではないようだな」
ゴーストイコンに囲まれながらも表情を崩さない真司。
崩したのは相手の陣形だけだ。
イコンの修理や補給は戦艦内だけで行われていたわけではない。
ポムクルさんスーパーDXに乗った牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)とブラヌ・ラスダー(ぶらぬ・らすだー)もND粒子を振りまくため、あちこちを駆け回っていた。
76.6メートルも愛らしいイコンは見るだけで癒される気もする。
ただ牡丹の本当の狙いはそれだけではなかった。
ND粒子を使えば混合細胞を消滅できないだろうか、と考え行動していたが、
ゴーストイコンとマンドレイクに阻まれてイーダフェルト2号にまで近づけないでいた。
「何とか近づきたいですが……そのためにはマンドレイクを倒してから、ですね」
「だな。今の所、混合細胞が外で悪さはしてないみたいだし、このまま味方のフォローに徹したほうがいいだろう」
ブラヌに言われた牡丹もそれを承知していた。
牡丹たちのおかげで、戦艦に戻ることなく攻撃を続ける機体もいた。
それだけタイムロスなく敵に圧力をかけられていたこと、これは戦力として非常に重要なことだった。
「……イーダフェルト2号……また、色々とヤバそうな物体をコアに使っていますね。
止めない訳には、いきませんか」
「先ほど、ダリルちゃんからもらったデータも活用して、更に攻撃を続けましょう」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が細い目でイーダフェルト2号を見やり、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が攻撃を続けていく。
無論、他のイコンもイーダフェルト2号へと攻撃を続けている。
E.L.A.E.N.A.I.も負けじと火力を集中させ、動力部や推進機関部分を狙い続ける。
ここまでイーダフェルト2号への攻撃に集中できるのも、
真司や佐奈がマンドレイクを引き付けているからだ。
「スピードも、半分以下までになりましたが……気のせいでしょうか。
また速くなっているような」
「……気のせいじゃないですわ! イーダフェルト2号のスピードが上がっています!」
「……底力、という奴ですね。ですがこちらもかなり弾薬やエネルギーを消費しています。
ここでの底力は、やられましたね」
下手をすれば押し切られる――とそう感じるほどにスピードを増している。
攻撃を一切省みず、愚直に進む、特攻隊のようだ。
それに共鳴するかのように、マンドレイクも最後の力を振り絞り始めた。