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リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 6
ラグナロクの甲板の上では、セレス・クロフォード(せれす・くろふぉーど)がマンドレイクの“音”の解析を行っていた。
その隣ではシェザーレ・ブラウン(しぇざーれ・ぶらうん)がフォローをしながら、敵からの攻撃がこないかを警戒している。
フォーチュンはすぐそばにおいて何かあれば乗り込む手はずだ。
「……中々上手くいかないなー」
解析を進めるセレスだが、様子は芳しくはないようだ。
突貫作業でできるほど簡単ではない作業だった。セレスはそれを噛締めていた。
「……完璧じゃないけど、これで何とか低減までできれば」
「それじゃこれをラグナロクから流すのね」
「あとシャウラさんにも協力してもらうの。
……これで私も鋼鉄の獅子として役にたてたかな?」
「もちろんだ。君は立派な獅子部隊だと思うよ」
後ろから聞こえてきた声にセレスが振り向けば、そこにはミールの姿があった。
「クローラくん!」
「今し方、色々な確認が終わってな。
これで何の拘束もなく、合法的な活動ができる」
「ってことは許可が下りたんだね」
セレスの嬉しそうな声に、クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)も「ああ」、と言って返した。
〜〜〜全イコン部隊の戦闘前〜〜〜
「――はい、了解いたしました」
クローラが電話を切る。
壁によりかかっていたセリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)が、「どうだった?」と尋ねる。
「問題ないとのことだ。全て許諾済みのようだ」
「そうか。それじゃ気兼ねなく皆行動できるってわけだ」
「少し気を回しすぎたか」
「そんなことないよ。確認を取るのは大事なことさ」
セリオスの励ましに少し下降気味だったクローラがふっと笑った。
「そうだな。ともかく中佐に連絡しないと
……もしもし、クローラです。法的問題は既にクリア。問題ありません」
用件だけ言うと、クローラとセリオスは愛機ミールへと走った。
〜〜〜現在〜〜〜
「と、いうわけだ。実際は確認をとっただけだが、これで戦いにいける。
戦友も待ってることだし、早くいかなくては」
「あっそれじゃ私もいくっ!
シュザーレ、行こう!」
「いいわね。血の匂いでも嗅ぎにね、うふふ」
セレスとシュザーレの二人はすぐさまフォーチュンに乗り込み、
クローラと共に他の獅子隊のメンバーと合流しに向かった。
ピコンッ
「おっ、セレスから音声データが届いたぜ」
「よし、即行でそのデータを流すぜ! ノリノリで音量はマックスだ!
俺達は宇宙刑事。宇宙の平和を守る者だっ!」
「えっ?! 俺も入ってる?」
「とーぜんだろ」
金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)の爽やかな笑顔にナオキ・シュケディ(なおき・しゅけでぃ)はそれ以上何も言えなくなってしまった。
やれやれと言った顔のナオキだが、ややまんざらでもない顔なのは気のせいだろうか。
「……音声データ、外部音響で流すぜ」
「やってくれ!」
セレスからきた音声データを外部音響を通して外へと流すユングフラウ。
その音はどこか爽やかで、気持ちを楽しくさせてくれるような音楽に仕上がっている。
「くぅ、いいねぇ! いい曲だぜ! ……おっ?」
シャウラがよくあたりを見渡せば、変な動きをしているゴーストイコンがちらりほらりと見当たる。
全敵イコンとはいかなかったが、効果はあるようだ。
「宇宙刑事の初仕事だな」
「ま、地球を守るなんて胸が熱くなるよな」
やはりナオキもまんざらではないようだ。
「地球は俺達の星だ! だから――」
「「必ず守ってみせるぜ!」」
シャウラとナオキの声が完全に一致した後、繰り広げられるのはユングフラウのあらんかぎりの弾幕だった。
ユングフラウの攻撃だけではない。
アルテミスが迫り来るゴーストイコンを一機、また一機と倒していく。
「女王様の動向はわかりませんね……」
「今は迫り来る敵を倒すしかないな。特に、あの喚き散らす愚か者をな」
サイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)の言葉に、クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)がマンドレイクを見やる。その目は少しだけ悲しそうだった。
「でも、あの方も可哀想な方ですよね……」
「確かにな。だがやっていることは許されることではない。
……説得も難しいだろうな。あの手の輩は話しを聞かないというのが常だ」
数々の人間・生物を見てきたサイアスが言うことに恐らく間違いはない。
だからこそクエスティーナもイコンに乗り、武器を握っているのだ。
マンドレイクと戦い、彼を止める為に。
クエスティーナの目が、改めて決意に染まる。
「貴方達を…アメリカの海に行かせたりしない。
日本の海だって、素晴らしいんです! ハワイに負けてません!」
日本愛に満ち溢れた言葉と共に、ソニックブラスターでマンドレイクに攻撃をする。
その攻撃は避けられるかと思われた。だが、マンドレイクに被弾する。
「……日本は、素晴らしい? ううう……。
でも、やっぱり悲しいよお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛!」
「今一瞬、マンドレイクさんが止まったような……?
もしかして私の声に反応した?」
一瞬だけだが動きをぴたりと止めたマンドレイクを見てクエスティーナが不思議に思う。
それはサイアスも見抜いていた。
「まさかあいつ――まだ説得もできるかもしれないか……?」
けれどマンドレイクはまた暴れ始めてしまった。
可能性にかけたい気持ちに駆られる二人だが、それを押し殺してマンドレイクとゴーストイコンからの攻撃に冷静に対応していく。