|
|
リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 3
イコン部隊【タイム】に引き続き、次々とイコンたちがゴーストイコン、
そしてマンドレイクを目指して前進していく。
「くそっ! 一番槍は取られたかよ!」
【タイム】の面々よりもやや遅れてやってきたラ・イーナに乗った南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)が舌打ちをうつ。
荒ぶりそうになっている光一郎を落ち着かせようとオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)が口を開く。
「まあ落ち着くのだ。それがしたちもそう遅くはあるまいて。
イコンの背中にカスタマイズした「ろくりんぴっく開催中」の小さな旗も今なら注目の的だ」
「……まあいいか。このいかんともしがたい荒ぶり、全部あの幽霊どもにぶつけてやるぜ!
オットー! 気合入れて叫びやがれ!」
光一郎に名乗りを任されたオットーの目つきが変わる。
今まで認められないままで来た自分の何かを証明しようとする、強い思いを感じる。
「では――
それがし鯉さんではない、ドラゴニュートである!
それがし、鯉さんではない、ドラゴニュートである!」
魂の叫びが空を切り裂き、地平線のそのまた向こうまで、強く響いた気がする。
「ヒュ〜! あのドラゴニュートとイコン、やる気満々だな。
負けてらんねぇわ」
「……分かるぞ。誰にも理解されない心の痛み。
俺も第三の性別じゃないのに第三の性別とか言われるからな……」
三船 甲斐(みふね・かい)が笑い、猿渡 剛利(さわたり・たけとし)が共感する。
「っしゃー! あのイコンに続くぜ!
つっことで、ポチっとな!」
「ちょおま!!!!」
ラストスタンドの支援機から射出された、パワードスーツを着用した剛利が止める間もなく空へとダイビング。
多少の風圧を感じながら大空に羽ばたいた一人のパワードスーツは、どこか物悲しくもあった。
そのままゴーストイコンの頭部に衝突。
「あたたた……ん?
…………って敵じゃねぇかああああああ! ぶった斬るしかねぇ!」
PS用のカタナを抜き出して、頭部を貫く剛利。
しかしそれだけでゴーストイコンも墜落はせず、頭を振り剛利を弾き飛ばした。
「おわあ! くそ、敵陣ど真ん中じゃなぇか!
甲斐! 今すぐ回収してくれ」
「だが断るじぇ。三船ラボ3号棟は繊細だからな!」
「俺の方が繊細だわ! 人間だぞ!」
剛利と甲斐、二人の口論は激しいデッドヒートを繰り広げる。
敵陣の中でそれだけのことが出来る精神は大したものだが、状況は悪い。
「まあ、お前はマイスターの技術の粋を集めた俺様の魔改造品じゃ。安心しろよ
そんじゃ奥の手と行こうか、も一度ポチっとな」
「……ちょっと待て! 俺か!? 俺のことか魔改造品って!?
嘘だよな? とりあえず嘘って言え! 嘘でもいいから嘘って言ってくれ! お前が言うとシャレにならんからー!」
敵陣で激しく動揺する姿に、ゴーストイコンは何を思うか、それとも警戒しているだけか、
攻撃せずに様子を見ていた。
ザシュッ――
バチ、バチバチッ
剛利が作った?隙を利用して、ライネックスが敵の腹部にビームサーベルを突き立てる
「はあああああああ!!」
搭乗者である村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)はそのまま頭部へとサーベルを走らせ、半両断に成功する。
「よくやった。だが――」
「わかってる! 一番危ないのは、一機倒した直後! このまま油断なく、突っ走る!」
サブパイロット、アール・エンディミオン(あーる・えんでぃみおん)が忠告する前に、
蛇々は全て理解し、その上で突っ走る。
「今までそんなに役に立てなかった分も……
私が仲間の為の道とフィールドを作る!」
息巻く蛇々。アールは、これをあえて止めなかった。
普段の蛇々ならば止めるが今日ばかりは止めてやれなかった。
「……ワイヤーのタイミングだけは任せろ」
「任せた!」
今までの分を取り戻すため、蛇々が駆ける。
それを支援するかのように動くイコン、ルドュテ。
「北都、少し突出しすぎでは?」
クナイ・アヤシ(くない・あやし)の言葉に、清泉 北都(いずみ・ほくと)は「大丈夫だよ」と答える。
「他の人も結構前に出てるし集中砲火は受けないと思うし。
後ろから仲間の援護もあるしね」
北都が信頼する後方の仲間とはアルシェリアの搭乗者である佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)、アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)の二人。
遠距離攻撃が得意なルーシェリアと、中〜近距離が得意な北都。
更に前線には他にも、剛利や蛇々、イコン部隊【タイム】もいる。
「あらあら、今日は移動しなくても安心かもしれませんねぇ。
こんなにたくさんの人たちが前にいるんですから」
「油断はなりませんよ。……と、油断してるはずはないと思いますけど」
常ににこにことした笑顔を浮かべるルーシェリアが、撃ち抜く敵を見定める。
ゆっくりと、歩くような速さでロングレンジライフルを構えて、照準をつける。
スコープ越しに、戦い続ける味方を見て、改めて思う。
「こうしていると、私はいつも皆さんと同じ場所で戦っていたのだと実感します」
「何言ってるんですか。当たり前ですよ」
「ふふ、そうですね。……それでは、まいりましょうか!」
刹那、一射。
ライフルから放たれた弾丸が、ゴーストイコンに着弾する。
がくんと沈むゴーストイコンを見たクナイが北都に通達。
「右です。ルーシェリアさんからエールが届いたみたいですよ」
「応援には答えないとだめだねぇ」
のんびりとした口調ながらもイコンの速さはそうではない。
見る見るうちにゴーストイコンへと近づき、ソウルブレードで一閃すれば、
ゴーストイコンの上半身と下半身がお別れすることになる。
「それじゃ続いて行こうかな」
これを機に敵陣に接近した北都は近くにいたゴーストイコンへナパームランチャーを射出。
着弾したイコンが炎に包まれる。
その炎の下を通り、次なる敵イコンへと接敵しようとするが、さすがに数が多くこれ以上は危険だと思われた。
その突破口を開くのがルーシェリアと、蛇々。
遠方からのライフルの攻撃にゴーストイコンは防戦一方。
その防御した敵に蛇々が飛びつき、ビームサーベルを全力で振りかぶる。
「今だ蛇々!」
「了解っ!」
アールの言葉に即応し、ワイヤーロープを使って複数のイコンをまとめて縛りあげる。
「今がチャンスよ!」
蛇々に言われるよりも早く北都も敵へと近づき、ソウルブレードでまとめて串刺しにした後、
ルーシェリアの射線を塞がないように下方へと移動。
瞬きする間もなくルーシェリアの次弾が次々とゴーストイコンに吸い込まれるように当たっていく。
最後の仕上げと言わんばかりに、下方から北都が、上方から蛇々がそれぞれの剣を振るい、ゴーストイコンを戦闘不能にする。
「ロープ、いい使い方だったね」
「お見事でしたわ」
北都とルーシェリアからの通信を受けた蛇々は、この戦場で始めての笑顔を零した。
「いやー助かった! 生きてるって最高ー!」
北都、蛇々、ルーシェリアの戦闘によりゴーストイコンがそちらに向かったおかげで、
危機を乗り越えた剛利が生きる喜びを叫んだ後、三人と共闘を申し出に行った。
更に堀河 一寿(ほりかわ・かずひさ)、ランダム・ビアンコ(らんだむ・びあんこ)の協力も加わる。
彼らもサージェント・ペパーを乗りこなしてゴーストイコンを各機撃破していく。
「心強い人たちとなら、僕だって戦えるよ。
ビアンコ、フォローを頼むよ」
味方と共に戦場を駆ける一寿、その横顔はひっそりと汗が流れている。
それを見たランダムは索敵をしながら、思ったのだ。
(一寿……かっこいい)
この戦場を駆け抜けきったら、改めて一寿に思いを伝えてみよう。
素直で飾らない、自分の気持ちを――そうランダムは思ったのだ。
同じく戦闘に参戦したメイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)、マイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)もダスティシンデレラver.2を操り、戦場を飛ぶ。
「イコンでも、もっとアクションを極められたらいいのに」
「今からでも遅くないんじゃない? ほら実戦あるのみ!」
メイの色濃い諦めが含まれた言葉に、マイが元気付けるかのように返す。
「ダスティだって廃材をふんだんに有効活用したイコン。
つまり、幾ら壊れても何も問題はないさ! だってゴミ溜めの灰被りだからね!」
「……そう言われるとなんだか出来るような気がしてきた! 私やってみるよ!」
やる気に満ち溢れてしまったマイがイコンの限界を超えようと無茶苦茶に動き回り始めた。
結果から言えばいつも以上に動きが鈍くなってしまったが、仲間の支援と合わせてゴーストイコンを倒すことはできた。彼女たちのイコンスタントは、ここから始まる。
一方その頃、強奪したトラックから降りたガルム・コンスタブル(がるむ・こんすたぶる)は声を大きく、周りに叫んでいた。
「シィット。あいつらの所為で相棒のアレックスは逝っちまったんだ。これは弔い合戦だぜ!」
「いやアレックスは行方は知れぬが死んではおらんだろう。リンカーンの奴ピンピンして呆れておったぞ」
等と軽快なジョークを言うのはガルムのパートナーザッカリー・テイラー(ざっかりー・ていらー)だ。
「フム、アメリカ飯のレベルも随分と上がった物だな。昔なぞブーツのゴム底の様な有様であった。そして酒だ、酒のレベルアップがグレイト!」
そう言いながらゆったりと料理の味を楽しんでいた。
「ハワイだ! ハワイを守るぞわしは!」
そういいながら双眼鏡で空の様子を窺うガルムだった。