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リアクション
イコン・ザ・フィナーレバトル! 7
「……? 一瞬ゴーストイコンが止まったような……?」
フォルセティの持つ機晶ブレード搭載型ライフルでイーダフェルトを攻撃しつづけていたエールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)が一瞬の違和感に気付く。
「ねえ、アルフ。今ゴーストイコンが止まらなかった?」
エールヴァントはパートナであるアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)にそう尋ねるが、帰ってきた答えは予想通りのものだった。
「そんなことより、だ!!
こいつら全員倒してさっさと宴会としゃれこもうぜ!」
エールヴァントは「うん、知ってたよ。アルフがそう言うってことは」と苦笑しながら呟く。
しかし当のアルフは笑われたことにすら気付かない。
(ここでの戦果によっちゃきっと女の子達が、
『サービスサービス(はぁと』とかしてくれるに違いないんだぜ!
そのためになら、俺は――!
「全力で、頑張っちゃうぞ!」
心の中だけ止められなくなったアルフが突然叫ぶが、エールヴァントはまったく動じない。
「はいはい、それじゃ頑張って戦果あげようね。
……クローラもきたみたいだしね!」
遅れてやってきたクローラのミールを見てエールヴァントが改めて気合を入れなおす。
「さて、イーダフェルト2号には悪いけど、穴を開けさせてもらうよ」
一点に集中して攻撃を続けるエールヴァント。
その攻撃に合わせるのはVEXENとNachtigallの二機だ。
「手伝わせてもらうよ」
「動力部が正確には分からない以上、まずは出来る事からしましょうか」
夫婦であるルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)とナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)がエールヴァントのフォローにつく。
それぞれのサポートにはソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)、音羽 逢(おとわ・あい)がついている。のだが、
「もーマスター一人で戦闘してくださいよ!
働きたくないでござる! 絶対に働きたくないでござる!!」
「……これで最後だから、多分」
思い切りかんしゃくを起しているソフィアに、ルースは無表情だ。
というか、それすらもものともせず狙撃を続けているあたり、歴戦の風格が漂っている。
一方の逢も敵に対して怒りを露わにしていた
「ナナ様の幸せを妨害した罪は重いで御座るよ!」
そう言いながら20ミリレーザーバルカンを放つ逢。
ナナはそれを見て「私のために怒ってくれるなんて、ありがとうです」と丁寧に礼を述べていた。
ここまではまだよかった。だがしかし、ソフィアが言ってはならないことを口走ってしまう。
「マスター、後で絶対奢って下さいよ!
ナナさんに黙ってへそくりしてるの知ってるんですからね!!!」
「あ、ちょっと! それはダメ!」
慌ててソフィアの口を塞ぐルースだが、時既に遅し。
イコン越しからも伝わる、ナナからの熱い視線? オーラ?がルースの背中をとんとんと叩いた。(気がした)
「ナ、ナナ? これは何かの間違いで……」
恐る恐る口を開いたルースだったが、恐怖は更に続く。
完全に無防備なこの状況よりも、今はナナが恐ろしくてたまらない。何せ勝てない相手。
恐怖しないほうが難しいだろう。
「……ルースさん。説明、して下さるかしら?」
心なしかいつも以上に丁寧な口調にルースの生存本能が全力で謝れと告げていた。
と、その時だ。ダリルから通信が入ったのは。
「イーダフェルト2号の動力部、確実ではないが位置を予測した。
データを送るから参考にしてくれ」
この助け船にルースが即食いつく。
「ありがとうございますダリル! これはいいデータですねさすがダリルですさあ喋って下さいダリル!」
「? なんだルース、今日はやけに饒舌だな」
明らかに様子がおかしいルースを不審に思うダリル。
だが、そんな普通の返答をするダリルを見て、ルースはふと思ったことを口にした。
「――これまでいろんな戦闘に参加してきましたが……
ダリルも丸くなったというか変わりましたねぇ」
「何だそれは……」
「昔はもっと、機械的でしたよ」
「? 今の方が機械的だろう。何せ機械神だからな」
ほんわかしたダリルとのやりとりにルースがははっと笑った。
「本当に、いい意味で丸くなりましたね。ルカの影響でしょうかね?」
「……まあ、なくはないかも知れないな。なにせあれは太陽みたいに元気で熱く、そしてうるさい」
「うるさいは余計じゃない!?」
ダリルの言葉を聞いていたのだろう、ルカが横から口を出してきた。
「まあデータは送った。後は頼んだぞ、ルース」
「了解です。……終わったらもう少しゆっくり話でもしましょう」
「ああ」
そして通信が切れた。ルースの心に、懐かしさが去来し、そして今に眼を向ける。
「さて、ダリルとの約束もありますし、地球を救いましょうか! ねっ、みんな!」
ルースの非の打ち所のないドヤ笑顔に、ナナも笑っていた。
「では、私ともお話してくれますね?
先ほどの、へそくり、とやらについて、ね?」
「ルース殿! ちゃんと話し合うで御座るよ!」
「マスターのへっそくりでー! 食べ放題! 食べ放題!」
「……はぁ」
そしてルースの心に悲しみが去来した。
ちらりと、このまま戦闘が終わらないかな、と思ったりしたが、すぐさま考え直して、
敵と、そして未来と戦わなければならないと、ヤケクソ気味になりながらルースは狙撃を続けた。