空京

校長室

帰ってきた絆

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帰ってきた絆

リアクション


「はわい」についたのだー!

そのころ、日本の浦賀港にて。
「来ないな、イーダフェルト2号……」

天城 一輝(あまぎ・いっき)
パートナーのユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)と一緒に
空を見上げていた。

黒船の船団で、イーダフェルト2号を足止めする作戦だが、
黒船は浦賀から出られないため、ここで待っている。

「あっ、あれは流れ星!?」
「いや、違う!!」
弁天屋 菊(べんてんや・きく)
親魏倭王 卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)が、
空に光るものを発見し叫ぶ。

「もしかして、あれが……!?」
沙 鈴(しゃ・りん)
秦 良玉(しん・りょうぎょく)も顔を見合わせる。

「西に向かって落ちていくぞ!?」
一輝たちは、
西日本に向かって落ちていくものを見送ったのであった。



イーダフェルト2号はぐんぐん落下して、
ハワイを通り過ぎ、日本へと接近。

そして、ついに地球へ不時着した……。

「なんだあー?
ここは――日本海じゃねぇか!」
南 鮪(みなみ・まぐろ)が周囲を見渡し言う。

ここは、鳥取付近の海であった。

「ここの近くは、はわいでしかも温泉なのだー!」
「皆ではわいに行くのだー!」

ポムクルさんたちが喜んでいる。

鳥取には元々羽合と呼ばれていた場所がある。
様々な誘惑と思惑と結果と力が複雑に絡みあった末、
イーダフェルト2号は鳥取県は旧羽合の海に不時着したのだった。

一方、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は壮絶なバトルの末、
デヘペロと相打ちになっていた。

コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、
傷ついた美羽とデヘペロを手当てし、
優しく言う。
「これからは自分を大切にね。
デヘペロのパートナーもデヘペロのことが大事だから、ここまで来てくれたんだよ」

「ペロオオオオオオ!
デヘペロは愛を知ったぜええええ」

デヘペロは、今度は愛の力に目覚めていた。

「デヘペロの愛を受け取ってくれええええ!
抱きしめてやるぜええええ、ペロペロオオオオオオ!!」
「ぎゃああああ!?
前よりひどいことになったかもー!?」
デヘペロに追われ、パートナーは逃げ出した。

一方、エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)
クモワカサギは、
飲み込んでいた、国頭 武尊(くにがみ・たける)シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)を吐き出した。

「うっ……!?」
イーダフェルト2号の落下とクモワカサギの体内で操縦をしようとしたことによる、
激しい乗り物酔いで、
武尊はトリモチごと混合細胞を吐き出してしまう。

地面に落ちた混合細胞を
パートナーを追うデヘペロが踏んで、そのままドスドスと駆けていく。
混合細胞は、完全に消滅したのだった。
女王ポムクルさん、イーダフェルト2号から
切り離された時点で細胞は弱っていたのだろう。

一方、
「待ってくだされ、女王ポムクルさん!
拙者の子を産むでござるよ!」
「温泉で珍味として食べて差しあげますわ!」
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)が、
女王ポムクルさんを追いかけていく。
「助けてですぅなのだー!」
そして、他の契約者が、その後を追う。

かくして、ポムクルさんの反乱は終結し、
契約者たちは、「はわい」でバカンスを過ごすことができたのだった。

パラ実に校舎はできなかったが、
鮪は、契約者たちの戦いを映像として記録していた。

鮪は映像を映画にして、
『沫怒歩無狂惨(マッドポムクルさん)』というタイトルで公開した。

この映画はアクションシーンが大人気となり、
パラ実生やゴブリンたちに大ヒットした。

【有名な餌威我奸涜】の鮪や、主演(?)の武尊も、
パラ実で人気を博した。







墜落したイーダフェルト2号の天辺に上り、
黒崎 天音(くろさき・あまね)は、
日の光をさえぎりつつ、指の間から雲ひとつない空を見つめていた。

「エルピスが普通の女の子になれたって聞いて安心しているよ」
ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)に、
天音は空を見上げたまま言った。

希望の少女 エルピス(きぼうのしょうじょ・えるぴす)は、
治療を終えた身体を取り戻したので、“父”の死を改めて偲ぶため、
アテムとアウタナの力を借りてナラカに行った。

「しかし、あれは、『普通の女の子』というのか?」
今回の事件を記録するメモ帳のペンを止め、ブルーズが言った。

エルピスは、元は巨人族である。
遥か昔、病の影響で体は小さい状態にあったが、
今は、急速に体が大きくなっていっているという。

しかし、「大きい女の子もかわいいお洋服が着たい」という理由から、
超巨娘専用アパレルメーカーを立ち上げ、
ポムクルさんたちと一緒に運営したいと考えているようだ。

巨娘用に体を小さく見せるための
矯正下着を作るのにも尽力したいのだという。

ブルーズのツッコミに、天音が妖しい笑みを浮かべる。

「本人が幸せならなによりじゃないか。
そうそう、ドラゴンの女の子にも
けっこう需要があるんだってね」

ブルーズは天音の発言に裏を感じて眉間にしわを寄せる。
「我は女装などしないぞ」
「誰もそんなこと言ってないよ」
「……」

しばらくの沈黙の後。

ブルーズは問いかける。
「天音、何か見えるか?」
「そうだねぇ…………昔も、今も、未来も、変わらない蒼空かな?」


空は蒼く澄み渡り、どこまでも広がっている。
地球、パラミタ、ニルヴァーナ、生まれたばかりの新たな世界。
すべての世界の果てのそのずっと果てにも、
きっとこの蒼空は広がっているのだ。