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リアクション
ネフェルティティ女王、つかのまの安らぎ 3
【シニフィアン・メイデン】こと綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)と、
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)も、
ネフェルティティに優しく話しかける。
「ネフェルティティちゃん、いい子ね。
お姉さんたちと一緒にお歌でも歌おっか?」
「では、明るく優しい感じのあの歌を……」
さゆみとアデリーヌが、歌声を響かせる。
また、さゆみは、シュトゥルム・ウント・ドラングで、
ネフェルティティの心に響く歌とパフォーマンスで、楽しませる。
「きゃっきゃ。あう。あー」
「ふふ、かわいいわね」
そう言って、さゆみが優しく微笑む。
(長い時を生きてきても、
子どもを生んだことはありませんが……。
親になるって、案外、こういうことなのかもしれませんわね)
さゆみの表情を見て、アデリーヌは思った。
こうして、ご機嫌になっているネフェルティティだったが。
(女王の様子はどうだ?
結界もだいぶ落ち着いているようだが)
嵐を起こすもの ティフォン(あらしをおこすもの・てぃふぉん)が、大きな顔をぬっと近づけてくる。
「う、う、うああああああああああああああああああああああああん!!」
いきなりティフォンの顔を見て、
ネフェルティティが泣きだす。
「ふむ、やはり、ティフォン学長のことは恐いようだね」
「落ち着いてる場合じゃないでしょう。ルドルフ校長」
ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)に、
ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)がツッコミを入れる。
公の場なので、敬語を使っている。
ウィリアム・セシル(うぃりあむ・せしる)は、
ネフェルティティの命を狙う者など、不審者に警戒して、
警護に当たっていたのだが。
(ティフォン学長は頼りになりますが、
実は、一番の脅威なのではないでしょうか……?)
ふと、そのことに思い至った。
「よしよし、いい子だね。女王様。
ほら、泣かない、泣かない」
ヴィナが、抱っこして、ネフェルティティを優しくゆする。
「うああああああああああああああん!」
ネフェルティティが、ヴィナにしがみついてくる。
「あの、ティフォン学長。恐れ入りますが、
もう少し離れていただけますでしょうか」
(う、うむ……わかった)
ウィリアムに言われ、引き下がろうとするティフォンだが。
「うあああああああああああああああああん!」
ティフォンの声を聞き、さらに泣くネフェルティティであった。
「落ち着いて。いい子だから」
「あ、う、うっく、う……」
ヴィナに優しく抱きしめられ、
ティフォンの顔を見ないようにしっかり保護されて、
ネフェルティティはようやく落ち着いてきたようであった。
「どうした!
オレたちがついてるから安心しろ」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が、
ネフェルティティのところへと
駆け寄ってくる。
そして、ソウルヴィジュアライズで、ネフェルティティの感情を読み取る。
「なに? ティフォン学長のお顔が恐いだと?」
(……)
皆、わかっていたことだが、
改めてはっきり言われて、ちょっとショックを受けた様子のティフォンであった。
「よし、じゃあ、楽しいものをいっぱい見ような。
ほら!」
クリエイト・ザ・ワールドで、シリウスが、
キラキラした流れ星や、楽しい音が鳴るおもちゃなどを、
たくさん出現させ、ネフェルティティの気を引く。
その間に、シャンバラ宮殿の侍女である、
リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)が、
ミルクを持ってくる。
「シリウス、もし、お腹がすいたらこれをあげていただけますか」
「ああ、お腹がすくと不安になるからな」
シリウスが、歌を口ずさみつつ、ミルクをネフェルティティにあげる。
ネフェルティティは、気がまぎれ、
お腹もいっぱいになり、落ち着いてきたようだった。
そこに、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)が現れる。
パートナーのノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)に、
生まれたばかりの子どものパパの経験を買われ、連れて来られたのだ。
「お餅は餅屋さんだよね!」
「ふつつかですが、よろしくお願いします。
他人様の赤ちゃんをお世話したことはありませんが、
自分の娘なら毎日頑張ってお世話していますので」
陽太はネフェルティティに優しく視線を合わせ、話しかける。
「ネフェルティティちゃん。
どうしたんですか?」
「あ、あーうー」
そんな中、ノーンが、ネフェルティティを抱き上げると、
氷雪比翼で飛び、ティフォンの顔の近くに行く。
「「「ちょっ!?」」」
一同はどよめくが。
「ティフォン学長さんも優しくて暖かいよ!」
ノーンがニコニコして、ネフェルティティとティフォンに話しかける。
「まっすぐな気持ちは、
ちゃんと赤ちゃんに伝わります。
どうか暖かく微笑みかけてあげてください」
ノーンと陽太に言われ、ティフォンは微笑を浮かべようとする。
(こ、こうか?)
しかし、かえって牙がむき出しになり、
恐い感じになってしまった。
「違うよ、ティフォン学長さん、もっとかわいく!」
(む、無茶なことを)
ノーンの発言にティフォンが困ったように言う。
「うっうっうっ……」
またもぐずつき始める、ネフェルティティだったが。
「待って、ネフェル様が不安なのは、
ティフォン先生も不安そうに見えるからだよ!」
ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が、
ソウルヴィジュアライズで、ネフェルティティの気持ちを読み取り、指摘する。
「こどもの家『こかげ』のせんせいの、水穂さんといっしょにお歌を歌おう!
ティフォン先生だって、子どもの頃があったはずだよね。
その時の気持ちを思い出して!」
ネージュが、パートナーの高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)とともに、訴える。
「一緒に、子守歌を歌いましょう。ティフォン先生」
(う、うむ……)
水穂に言われ、ティフォンはうなずく。
「では、さんはい」
水穂やネージュと一緒に、ティフォンも子守歌を歌い始める。
「よし、じゃあ、オレたちも」
シリウスやヴィナたちも加わり、皆で子守歌を歌い始めると。
ノーンや陽太が言った通り、
ネフェルティティも、ティフォンが恐くないことを理解し、
笑顔を向ける。
「あー。あうー」
(そうか、もう恐くないか……)
ティフォンが、浮かべた笑みは、先ほどと違い、優しいものであった。