空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】地下街を駆け抜けて 3

『こちら『前線統制本部』より、各方面へ通達。
 大型トロールの存在を確認。
 別ルートにて追ってくる模様、注意されたし』
 カナリーからの伝達が避難誘導にあたっていた契約者たちの元へと知らされる。
「別ルート、ですか。厄介ですわね」
「こっちにこなければいいけど……」
 市民の避難に従事していたエミリア・ヴィーナ(えみりあ・う゛ぃーな)五月葉 終夏(さつきば・おりが)
 緊急の報では大型トロールの存在に、別ルートからの進行が懸念される。
 一つのルートを封鎖するのも大変なのに、別方向から来られては難儀するのは必死。
「とにかく今は前へ進むしか」

……バグオォン!!

 突如地下街に響く轟音。それまで壁だった箇所に、ぽっかりと横穴が空いていた。
 その穴からは当然の如く、モンスター達がうじゃうじゃと湧き出し始め、こちらに向ってくる。
「もう、ここから先へは行かせないよっ」
 我先にと前へ出でるゴブリン達を掃討するべく、
 終夏は大気中の水蒸気を昇華、微細な氷晶を具現させゴブリンへぶつける。
 同時に散らばった氷晶による光の乱反射がゴブリン達を翻弄する。
「さて、こちらも行くとしよう」
 ダンシングエッジを構えたニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)が疾走。
 狙いは壁を破壊したと思われるトロール。
 鈍重な動きによる振りかぶりの攻撃をかがんで避け、そのまま脚を爆発させるように力強く踏み込む。
 そのまま、トロールの右脇部へと潜り込み、鋭い突きを脇へと見舞った。
 トロールは汚い悲鳴を上げると、持っていた棍棒を床に落とした。
「そんなものを地下街で振り回すのはナンセンスだ」
 しかし、この間にも小型のゴブリンたちは大挙して押し寄せ市民へと近づいていく。
「ここから先は通行禁止ですよ」
 エミリアのパートナーコンラート・シュタイン(こんらーと・しゅたいん)が魔力を解放。
 氷術で敵を凍らせ、火術で敵を焼き払い、雷術で敵を痺れ焦がしていく。
 ギャザリングヘクスで増大させた魔力は一味違う、といったところだ。
「皆さん、後ろはわたくし達にお任せくださいませ。今は前へ前へと走るのですわ!」
 市民に聞こえやすいように、よく通る声を意識して一際大きな声を出すエミリア。
 多少の不安は残るものの、エミリアたちを信じて市民は一心不乱に前へと駆ける。
「コンラート、それに終夏さん。わたくしは各情報統括部に連絡をいたします。
 少々お任せしてもよろしいでしょうか」
 エミリアの要求にコンラートは静かに頷き、終夏は任せて!と言わんばかりの笑顔で返した。


「モンスターが沸く地点、大方調べ終えたか?」
 小型飛空艇を駆使して各空京の地点を訪れては、
 モンスターが湧いているか湧いていないかを調べ、逐一報告していた並木 浪堵(なみき・ろうど)
 パートナーメグ・コリンズ(めぐ・こりんず)も一緒になって調査に乗り出していた。
「しかし、モンスターがいる地点は満遍なく、か。
 手回しがいいことだ。……奴等の姿も見当たらないしな」
「そうですね……影も形もないとは、余程うまく隠れているのでしょうか」
 浪堵たちはモンスターの湧く地点を調べると同時に、グランツ教の残党がどこにいるかを探していた。
 しかし、どこを見て回っても残党の姿はなく、拠点がどこにあるかは分からないまま。
 そして今、粗方モンスターの湧く地点を見終えてしまっていた。
「……芳しくない成果だが、仕方ない」
「これでアルティメットクイーンの場所がある程度絞れればいいのですが……」
 メグと浪堵が空京の空を見上げる。
 数十秒程見上げた後、浪堵は正面を向いた。
「やれることはやった。次は今もなお戦っている契約者達を援護していこう」
「はいです」
 自分達のできることを行うために、戦場へと向かう並木だった。

 浪堵が調べ上げたモンスターの湧く地点の情報はすぐにフィードバックが行われ、
 洗練されたデータへと変わり、契約者たちへ届けられる。
 その情報を元に、モンスターを叩きに出たのは大熊 丈二(おおぐま・じょうじ)ヒルダ・ノーライフ(ひるだ・のーらいふ)
「あれがモンスターが湧く地点でありますな」
「確かに。結構な数が湧いてきてるわね」
 小型のゴブリンが次から次へと湧いてきている地点を見て、
 武器を構える丈二とヒルダ。
「行くわよっ!」
「了解でありますっ」
 ヒルダが先駆け、丈二が後方支援が行える位置に移動する。
 二人に気付いたゴブリンが無用心に近づいてくるが、丈二の弾幕援護がそれをよしとしない。
 足を止められたゴブリンたちの所へ間髪要れずに高速ダッシュで間をつめたヒルダは、
 ゴブリン達を斬り付けて、突き刺しトドメを刺していく。
「大型トロールを確認したであります」
「ここまで死者は出ていない。
 避難誘導が優秀だからか分からないけど、
 それでも一人も出ていないっていうのは、そういうことよね!」
 一目散にトロールへと向うヒルダ。
 疾風の如きヒルダの後方周囲から、銃弾が飛翔しトロールの双眸を抉った。
 呻き声を上げるトロールに詰め寄ったヒルダは、
 思い切り剣を振りかぶりトロールの両足へ、刃を深く埋め込み切り裂く。
 激痛によろめいたトロールがモンスターが湧いている穴へとズボリと嵌る。
 その状態で急所を貫き、トロールの息の根を止めた。
「これで湧かなくなるでありましょう。では次にいくでありますよ」
 一仕事を終えた丈二はすぐさま次へと向った。