空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】空京の空 1

 脅威はまだ終わっていない。今度は地下街ではなく、外だ。
 外にいた住人達は空京警察の先導の元、然るべき施設へと避難させられていた。
 その間もモンスターからの攻撃は苛烈さを増す。
 空を飛ぶヒュドラとワイバーンはまるで悪魔の様だった。
 その悪夢を切り裂くのは三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)の弓矢だ。
 飛翔するワイバーンやヒュドラに狙いを定めて、射る。
 狙いは翼。弓矢は鋭く風斬り音を鳴らし薄い翼膜を貫通する。
 刺さった弓により、うまく風を受けられなくなったワイバーンは地面へと落下。
 相当な高さからの落下、着地に失敗したモンスターたちにはそれだけでダメージとなる。
「すごいっ! 弓の名手みたい!」
「そっちもね! でもまだまだ、油断はしないでいきましょう!」
 佳奈子は二本の矢を同時に放つことでモンスターたちを威圧し、
 野生の勘全開ののぞみの矢は決して過たず、モンスターに必中する。
 頭上を押さえられている、という不利な状況にまったく臆せず、
 逆にそれを打破するため怯むことなく矢を天へと放つ二人。

グオオォンッ!!!

 地に落とされたヒュドラの一体が多頭を揺らして、
 のぞみと佳奈子の柔肌を噛み裂かんと無茶苦茶な軌道で低空飛行してくる。
「そうはいかないわよ!」
 二人の護衛、エレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)がヒュドラと同じように、
 高速で低空を飛び、ウイングソードの柄を強く握る。

ガキンッ!!

 ヒュドラの牙とエレノアのウイングソードが衝突する。
 と、ヒュドラの多頭が一斉にエレノアを喰らい殺そうと四方から襲う。
 その全てを、素早い剣捌きでいなしたエレノアは、
 胴体へ愛剣を突き立て心の臓をとらえると、
 ヒュドラの多頭は地面に伏してそのまま動かなくなった。

「きゃあああっ!」
 途端、絹を裂くような悲鳴があたりに響く。
 逃げ遅れた市民が不用意に外へと飛び出していた。
 その頭上にはワイバーン。急降下するように市民へと襲い掛かる。
 牙をむき出して、涎を垂らしながら。
「それ以上、近づくのはやめてもらえるかな」
 急降下するワイバーンより遥かに速いスピードで、
 その横合いからワイベーンへと前足の爪を突き立てるのは魂の双龍、グラーヴェ。
 グラーヴェに乗っていたセルマ・アリス(せるま・ありす)は、ガルモニに乗り移る。
 首と横っ腹を抉られたワイバーンは制御能力を失い、
 鈍い音を立てて地面へと墜落、為す術もなく絶命した。
 市民は恐怖でしゃがみこんで、いや腰を抜かしているのだろう。
 とてもではないけれどこの場を走り抜けることは無理だ。
「すまない、彼女をお願いできるだろうか」
 二人の護衛についていたエレノアに声をかけるセルマ。
 エレノアは頷き、一緒に護衛についていたミカ・ヴォルテール(みか・う゛ぉるてーる)に、
 へたり込んでいる市民を連れてくるようにお願いした。
 市民がミカに連れられるのを見届けたセルマは再度上昇。
 少し上ではレッサーフォトンドラゴンに騎乗したミリィ・アメアラ(みりぃ・あめあら)が奮戦している。
 小型の狙撃用スコープ越しに空を見渡し、
 縦横無尽、我が物顔で空を行き来するワイバーンにショック銃を打ち出す。
 一発、もう一発と打ち出された弾丸はワイバーンの翼へと命中し、
 その数秒後には痺れをもたらして、飛行能力を奪っていった。
「負けてはいられないね」
 ミリィの奮闘にセルマも負けじと飛行モンスターの攻撃をかわしながら、
 すれ違いざまに槍でもってその翼を切りつけ、地面へと落としていく。
「全部のワイバーンを落とすまで、諦めないんだから!」
 ミリィが魂の叫びを弾丸に込めながら、射出していく。
 そんなセルマたちの攻撃に合わせて、何本もの矢が飛来する。
 矢の雨にドラグーンと空中スナイパーの合わせ技。
「のぞみ、一発どかんと打たせてもらうぜ」
 機会を窺っていたミカがのぞみに、落ちついた声色で話しかける。
 その声を聞いたのぞみの心も少し冷静になり、こくりと頷かせた。
「おいっ、空飛んでるあんたら!
 今から綺麗な花火を咲かせるぜ! あんたらは腰抜かすなよ!」
 声を張り上げてセルマたちに警告を出すと、セルマは「わかったよ」と返事をしてモンスターから距離をとった。
 一箇所に集まっていたモンスターたちの視界に入るよう、ミカが特大魔力の花火を打ち上げる。
 色鮮やかな花火はワイバーンとヒュドラをしこたま驚かせ、墜落させた。
 六人の協力もあり、空を跋扈していた多くのモンスターたちが地面へ不時着させられた。